「中学二年生の一年間で、あたし、大西葵十三歳は、人をふたり殺した。」
と、え~!な衝撃的な告白で始まるお話。これで「あ~『少女に向かない職業』というのは殺し屋か」と分かります。
「少女の殺し屋」・・・なんて魅惑的な設定!
しかしその後に
「それであたしが思ったのは、殺人者というのはつくづく、少女に向かない職業ということだ。(中略)少女の魂は殺人には向かない。誰か最初にそう教えてくれたらよかったのに。」と続きます。
「少女の魂」、読み終わったあとこの一言が、胸に響きます。
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さらにこう続きます。
「だけどあの夏はたまたま、あたしの近くにいたのは、あいつだけ。宮乃下静香だけだったから。」
「宮乃下静香」に「さつじんしゃ」とルビがふってあります。
実はGYAOでドラマ化されたものを見ていたので、静香が同級生の友達と知っていたのです。映画では二人は共感できる友達として描かれていたので、「あいつ」「殺人者」となっているのは大きな違いです。
ドラマでは
「だけどあの夏、あたしたちの近くには誰もいなかった。」
と、二人の結びつきが強かったことが強調されています。友情以上のね。
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葵は天然の茶髪であることもあり、お調子者で明るいキャラクターです。でも家には怪我をしてから無気力になり、暴力的になってしまった義父がいて、クラスでの明るい「あたし」とは想像できない暗い一面を持っているのです。
ところで舞台は下関の島。
あたしはマックで友達たちと陽気におしゃべりする反面、関門海峡に面した、廃材なんかが置いてあるところで黄昏たりしています。DS片手に。
「あたしがこんなだなんて、サチ(友達)たちは思いもしないんだろうな。」
そんな心を休める場所で、おかっぱでメガネを掛けていて本ばかり読んでいるクラスで目立たない感じの宮乃下静香に出会います。