ベストシーン
「静かな激怒が、ひたひたと心を満たしていく。
それは、今までの、真っ赤な炎のような怒りとは、異なっていた。
秀一の脳裏で輝いていたのは、鮮やかなブルーの炎だった。
最も深い思索を表す色。
だが、その冷たい色相とは裏腹に、
青の炎は、赤い炎以上の高温で燃焼する。」(第3章末)
動物に比して人間の行動は意識的といえます。
それを賢いと言い換えることもできます。
しかしすべての人間が、
そして同一の人間がいつでも
意識的であるわけではありません。
考えて行動することは非常に疲れます。
だからなのでしょうか、大抵のことは習慣で、
意識的でなくでなくともやり過ごすことができます。
この点から言うと、
この作品の主人公、秀一はとても「賢い」少年です。
「賢い」をこの意味としますと、
それは
大人や子供
知識の多寡
で左右されるわけではありません。
この作品は離婚した横暴な元父を
家族から守るため、秀一が彼を殺害する事件を描いています。
その過程で秀一は、完全犯罪を行うため、
法医学などの専門書を読み、知識を得ます。
しかしそれによって知識を得たから、
あるいはそれを理解できる能力があったから
秀一が「賢い」のではなく、
どうしようもない状況を、
あきらめるのではなく、
思考することを止めず、
自分で人生を切り拓いたから
そういえるのであり、
また魅力的なのである。
その評価は善悪の彼岸にあります。
そのイメージを具体的に付加している小道具が
ロードバイク(自転車)です。
私もこれを読み、ロードバイクを買いました。
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