冷艶素香

現ES21がいろんな人達から愛されていたり、割れ顎の堅物侍を巡って、藤と金の人外魔境神未満ズが火花を散らしたりしてます。

金鶏再び晨す(きんけいふたたびあしたす)

2008年06月01日 | もう一つの大奥(瀬那総受/読切り)
思いめぐらすのはお前のためだけ。
迷うこと無く言い切れる。
俺のすべてはお前のもの。
だから
お前のすべても俺のもの。
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そういえば、この人のこんな無防備な姿に接するのは初めてであったと、
今更ながらに気付くと同時に、訳も無く顔が赤らんだ。

「絡まってる所は切っちまっていい、そこに鋏あんだろ」
「あ、はい……」

彫りも何の飾りも無い、その権勢から考えれば随分と質素に感じられる、
ただの花梨の鏡台に向かう仏頂面の御取締は、目線で銀の鋏を指し示
した。

垂らしたままの金髪、白小袖一枚を身にまとったきりの姿は、決して弱々
しい訳ではないが、いつものあの威圧感とはまるで繋がらない。

シャ……シャ……

今日この日、飴色つややかな※散斑鼈甲(ばらふべっこう)の櫛に流るる
豊かな黄金の流れを一心に梳いているのは、専属の侍女でも小姓でも
ない。

他ならぬその持ち主の、主君だった。

(いい匂い……)

今日はまだ何も髪に付けていない筈だが、特別調合の※銀出しの匂い
は長年の使用により、既に頭皮に完全に染み付いてしまっているのか、
少年の目の前にある金色の滝からは強い芳香が漂ってきて、彼の鼻腔
をからかうようにくすぐる。

(どんな感じがするんだろう?)

綺麗な水場を見つけたら、危ないからとどんなに注意されても、その中へ
分け入ってしまうのが子ども、踏み止まるのが大人。

蛭魔に、「絡まっている部分は切ってしまって構わない」と言われた先刻、
自分の手の動きが止まっていたのは、この黄金の滝に顔を埋めてみたい
という、命知らずの危険な好奇心に駆られたから。

(でも実は後頭部にもう一つ口があって、そこからガブッて食べられちゃう
かも……それとも顔が金になっちゃうとかさ)

若将軍の読書傾向はどうもおかしな方向に偏っているようである。

「にしても本気なのかよ、ったく……」
「……っと、な、何がですか?」
「テメーがさっき江戸城の中心で叫んじまったこ・と・だ・よ!」
「ああ……いいんじゃないですか、たまには?」

別に表に出御しないって訳じゃないし、どうせ蛭魔さんこんな状態なんで
すから、政務に多少の滞りが出るのは絶対に免れないんですし……それ
に何より、僕の気が済みませんから……と、潜りの部屋子(?)はクスリ
と笑った。
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気晴らしにと、城の天守閣に上ったある日のこと。限られた時間ではあっ
たが青い空と己の膝元にある都の繁栄振りを満喫した後、御座所に戻ろ
うと階段を下りようとして──若将軍は見事、足を滑らせた。

「っの馬鹿……!」

お供の内で、真っ先にそれに気付いたのは、奥勤めながら破格の待遇で
その日の供を許されていた、蛭魔局だった。局が咄嗟に幼君の小柄な身
体に両手を伸ばし、抱き締め、己が細身で覆うようにしながら諸共に落下
し、将軍の頭があわや板敷きの床と衝突しそうになったところで、局は瞬
時に半身を捻って自らを緩衝材とした。御蔭で幸いなことに、将軍の方は
大事に到らなかったものの──

「蛭魔さん、蛭魔さん!!!」
「………」


危険を顧みず命懸けで自分のことを守ってくれた御取締の、沈香芳しく染
み込んだ亀甲文様のお掻取に包まれた、細くしなやかな身体に取り縋れ
ば、声音の出ぬ※血珠色(ちだまいろ)の唇に代わり、眇められた金眼が
何よりもまず先に、己の安否を問うてきてくれた。

あの時に思わず零れた、温かな涙の感触──

「本当に……有難う御座いました……」

掠り傷一つすら付けさせるものかと、小さな身体を力一杯抱き締めていた
局の利き腕の骨折は、全治までにはかなりの時間がかかろうとの、御匙
の診断であった。

「誰が何と言っても、たとえ蛭魔さん自身が嫌がっても、今回だけは僕の
したいようにさせてもらいますから!」
「何アホなこと抜かしてやがる、この糞チビ!」


局の怪我が完治するまで、自分がその身の回りの世話をすると言って譲
らぬ、これまでに無く勇気有る発言で、これまた初めて己の意志を押し通
そうとする若将軍に対し、周囲は呆れ果て、最初は勿論、誰一人としてま
ともに取り合おうとはしなかったのだが──

「命令です! 僕のこの命令に逆らう人は、永の暇を取らせます! それ
とも八丈島に流されたいですか!? 残りの人生全部、※一室に籠もらせ
たまま終わらせてあげてもいいんですよ!?」
(((((!?)))))


特に激しかった、側室たちの珍しく一致団結した反対にも、事の次第を耳
にして、自分専属の御匙を差し向ける故、思い止まれと、配下の者を通じ
て伝えてきた最愛の正室の言葉にも決して耳を貸さず、「一遍死んでこね
ーと治んねえのかテメーのその馬鹿さ加減は!?(≠蝙蝠の御紋の御威
光を一体何とお心得あそばしますか!? 苟しくも天下を統べる御方が一
僕(いちしもべ)の看護をされるなどと……!)」と、本音と建前が逆転して
しまうほどに激怒した蛭魔局自身をも

「怪我人は黙って大人しくしてて下さい!」

と、一喝して黙らせてしまった小さな天下人はそれからというもの、覚束無
い手付きで本当に、看護師と部屋子の真似事を始めたのだった。
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「え~っと、どんな形に結いましょうか……」

畳の上に乱雑に広げられた髪型の図案集を見比べながら、小首を傾げて
訊ねてくる少年。この自分ともあろう者が、呆れを通り越して脱力感すら感
じているのは、あながち怪我のせいばかりではあるまい。

「テメーのぶきっちょな腕じゃ無理だ」
「……!」(←両頬を膨らませている)
「……だぁぁー! ったく、栗鼠(りす)みてーに膨れんな!」
「だって……」

一旦臍を曲げた子どもというのは、早く機嫌を直させないといつまでもイジ
イジとしていて、煩わしいことこの上無い。次の間からビクビクと様子を窺っ
ている侍女・小姓たちの目さえ無くば、問答無用で一発殴るか蹴るかして
黙らせてやるのに……!と、白い額と幾筋かの金のほつれ毛が揺れる顳
顬に於いてピクピクしている青筋を押さえながら、軽い溜息を一つ。

「……油適当に塗って、元結で一つに束ねるだけでいい」

仕方無い、※御年寄詰所へ出るのはもう、諦めることにしよう。実際、平時
であれば、自分が厳しく仕込んだ部下たちに口頭で指示をするだけで、大
抵の執務は事足りるのだから。

決定と同時に局は頭の力を抜き、小さな両手にもたれかからせた。いつも
と同じ整髪料である筈なのに、今日は常日頃よりももっと、ずっと心地良く、
頭皮に馴染んでゆく。

(……子ども体温だとやっぱ、満遍無く綺麗に溶けんだな)

独特の香りと心地良い静謐で満たされた、ふんわりと優しく穏やかな時間
と空間──自分には似つかわしくなく、また許されるようなものでもないと
いうことは、自身が一番よく知っている。

だが。

「俺は、テメーと、いつも一緒だ」
「蛭魔さん?」

何があっても、誰が相手でも、必ず、どんなことをしてでも、お前を守る。
この両手は愛も慈しみも知らないけれど、未来永劫、お前を独りぼっちにだ
けは、決してさせない。

「蛭魔さん? 何か言いましたか?」
「……」

訝しく思いながらも、とりあえず作業を始めようとしていた、頼りなげな二の
腕を強く掴み、どうやったものやら、小柄な身体をクルリと反転させ、トスン
と畳の上に押し付けて、上から見下ろす。

「ひ、蛭魔、さ……?」

こんなにも早く好奇心が満たされるなんて、と、眩い金色の滝の内部で少
年は、真ん丸に見開いた目をパチクリさせながらも、ふっと口元が柔らかく
緩んでゆくのを抑えることが出来なかった。

「ふふ……」
「何笑ってやがる」

世界で一番、安全で待遇の良い牢獄。昔はこの静けさが、ただただ怖く寂
しく、どれほどの有形無形の想いが自分を抱き締めてくれているのかにもま
ったく思い到らずに、独り泣いてばかりいたけれど。

「だって……蛭魔さんの髪の毛、頬に当たってくすぐったいんですもん」

いつからか見せるようになった、屈託の無い、心から愉快でたまらないとい
った感じの、朗らかな笑い。

そうだ、お前はいつもそんな風に、花が咲くみてーに笑ってろ。

欲しかったのは至高の権力だったのか、それとも別の何かだったのか、今
となってはもう、思い出す術も無い。

分かっているのは唯一つ。

かつて花盗人だった己が今では、花守人としての職務に命を賭けていると
いうことだけ。

たとえいつか、この肉体が朽ち果てたとしても、あの誓いとこの思念だけは
決して、褪せない、枯れない、滅えたり(きえたり)しない。

「クク……」
「ひ、る、ま、さ……?」

ケーッケケケケケケケケケケケケケケ…………!!!

(ひぃぃぃ……や、やっぱ怖いぃぃぃ……!)

バサァッ!

蛭魔局のほっそりとした首が──首だけが反り返ると同時に響き渡る、高
らかな哄笑。と、同時に何本もの金の格子が、妖しく煌めきながら、一挙に
引き上げられた。

拘束が解かれた花は大樹公という名の“小”樹公に戻り、それを解いたかつ
ての盗人にして現在の守人は、※公(こう)の奥御殿を差配する、鬼神も恐れ
をなして逃げ出すどころか鬼神そのものと評判の、恐るべき辣腕家の大奥総
取締に戻った。

「……政務もテメーの勉強も、しばらくは全部ここで俺が見る。いいな?」
「え、あ……はい」
「野外の鍛練はしばらく休みにしてやっけど、その分このスカスカ頭にみっち
り帝王学仕込むからな、覚悟しとけ」
「はぁ……」
「ま、俺は優しいからな。たまには息抜きの時間も作ってやる」
「じゃ、じゃあ、蛭魔さんって確か、大奥では※連珠(れんじゅ)一番強いんで
すよね?」
「大奥に限んねえぜ、俺の前じゃどいつもこいつも最弱だ」
「あの……教えて、もらえます……か?」
「は? いい年こいて五目並べかよ?」
「だって僕、誰とやっても実力で勝てたこと、一度も無いんですもん……皆い
っつも手加減してくれる上にわざと負けて……」

彼なりに、悔しかったようである。

「は~……ったく、そんなことでしょげんな、この糞チビ!」
「うぅ……」
「俺の教え方は進より厳しいからな、腹括っとけよ? これから俺以外の奴
との勝負で負けたら切腹だかんな!!!」

んでもって上さまが真剣勝負をご所望であらせられるにも拘らず手ぇ抜くよう
な奴は、今後は打首獄門だぜYa-Ha-!と、無事であった方の手で主を抱き
起こし、息がかかるほど近くにまで顔を寄せて、ニッと笑いかけてきたかと思
うと──局は、その※弥勒菩薩半跏思惟像(みろくぼさつはんかしいぞう)の
それにも例えたくなるような美しい指で、ビシッと将軍の額を強く弾いた。

「っ! 何すんですかぁ!?」
「弾き甲斐の有りそうなデコが目の前にあったから弾いただけだ」

ケケケっとふてぶてしく笑う姿に無駄な抗議をしつつ、いつもの調子を取り戻
してくれた彼を見るにつけ、若将軍は堪らなく嬉しいと思ったのだった。
                       ・
                       ・
                       ・
本当に盗まれたのは、誰の心?
本当に守られているのは
本当に救われているのは
だーれだ?
                                         <終>

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語釈

金鶏再び晨す…
正しくは「牝鶏晨す」(ひんけいあしたす)。手元の電子辞書では出典が『書
経』の(牧誓)となっております。要するに、今回も捩りタイトル(笑)。
朝を告げるのは雄鶏というのが、日本や中国に於ける一般的なイメージです
が、雄鶏ではなく、牝鶏が朝一番にコケコッコーと鳴いたら……? 香夜さん
が現在住んでいる辺りでは、どちらも時と所を構わずコケコケ仲良く鳴いてい
るので、香夜さんを含め、誰もそんな事気にしてはいませんが、どうやら昔の
人達はそれをあまり好ましく思っていなかったのでしょうか、この言葉は女性
が男性を押さえ付け、家庭の内外を問わず権力を振るうことの例えとされて
います。そんな事態になれば一族や国家が破滅してしまうYo……!と。お馬
鹿さんがトップになっちゃったら、その人が男だとか女だとか関係無く、物事
って結局駄目になっちゃうと思うんですけど……と、率直に言えるこの時代に
生まれてこれて、香夜さんは幸せ者。
金鶏は『祖庭事苑』という禅宗の辞典に載っている、天界の鶏。この鶏が夜
明けに最初に鳴き、続いて他の(人界のって事か?)鶏達もコケコッコーと鳴
くらしいです。『錦鶏』とも書き、中国語では金も錦も同じ鳥を指すようですが、
日本語では金が伝説の鳥、錦は実在するキジ科の鳥を意味するのだそうな。
錦の雄は金色の飾り羽が頭頂部にあり、首から下も大変カラフルとの事。
蛭魔×瀬那は瀬那受けの原点ですから!(←先日の絵茶で再確認) 貴方
がお元気でないと他の瀬那受けも活きてこないのですよ!という思いを込め
て、拙ブログ大奥では速攻でお元気になって頂きました。とりあえず、うちの
蛭魔さんは、国破れても瀬那が元気ならそれでいいよいいよいいんだぜYa-
Ha-!みたいな(←蝶・意味不明)。え、『春望』? それってなぁに、美味しい
の(´・ω・`)?(笑)

散斑鼈甲…黒い斑紋がまばらに散っている鼈甲。

銀出し…
銀出し油。鬢付け油よりももっと固形然とした整髪油。真葛(さねかずら)の
蔓の粘液を始めとした諸々の材料から作られており、とても良い香りがする
らしい(実物の匂いを嗅いだ事が無いので、本当かどうかは知りませんが)。

血珠…赤い珊瑚を研磨して、宝石として通用するようにしたもの。

一室に~…
押込め即ち禁固刑の事。閉じ込められるのは牢でなく、城や武家屋敷、或
いは寺のどこか一室。

御年寄詰所…
御取締や複数の御年寄たちの執務室。当番交代制で詰めていた。

公…代名詞的敬称。notおおやけ。

連珠…
基本は二人で碁石を交互に打ってゆき、先に自分の色を五個連続で並べた
方が勝ちとなる(縦でも横でも斜めでもいい)五目並べだが、多くのルールが
有り、五目並べよりはもう少し複雑な遊び。

弥勒菩薩半跏思惟像…
この単語を検索サイトに入力して、画像を見るのが最も分かりやすいのでは
ないかと。日本では広隆寺と中宮寺のが有名ですよね。韓国のもなかなか
素敵だと思います(ってかあっちが本家本元?)。


VS白秋戦で蛭魔さんが、ガオたんにズン!ドドドドドド!!!と、右腕を折ら
れてしまったという衝撃のニュースを知った時に「おおおぉぉ……orz!」と殴
り書きしたSS。今回の再UPに当たっては、リンク(?)してたっぽい現代の方
での場面を、完全に削りました(よく“アレ”をUPしてたもんだ、当時の香夜さ
ん/苦笑/覚えていらっしゃる御方はどうか生温く笑ってやって下さいませ)。

あの時はこんな↓感じでした。

例によって例の如く、実物は未だ目にしておりませんけれど、白秋と戦った
チームのQBの悲劇にして悪夢、再びだそうで…蛭魔さん……orz
キッドさんの時同様、激情迸るままにブン殴り書きで御座います。それでも
ショックが大き過ぎて、語釈や更新報告までする気力は……無くなりかけ
の絵具チューブか歯磨き粉を搾り出すが如く、本文を捻り出すだけで精一
杯でありいした……(パタリ/倒)。

夢見たっていいじゃない、人間だもの。


現在は完全復活だの何だのと仰っているようですが、本当に大丈夫なのか
なぁ? 相手はあの大和だし……大和以外の帝黒メンバーも色々と凄いの
でしょうが、悪意の有無に関係無く、やばい事仕掛けてきそうなのはやっぱ
り大和しか思い付きません。“史上最悪の敵”って絶対マルコじゃなくて大和
だと思う。ってかアイシーの“最”ってあんまり信用出来ません。多過ぎたり
コロコロ変わったりで価値が大暴落(?)。

零れ話。本文に上手く組み込めなかったので断念した、大奥の主な皆さん
から蛭魔局へのお見舞いの品々一覧。

赤御台…
実家から持参の蝶・克明な六道絵の模写を、療養中はさぞ退屈であろうか
ら暇潰しにでもせよと、被下(くだされ)。単に「死ね」では生温い上に芸が
無いので、「堕ちろ。そして廻れ」みたいな? クフフのフー……(類似点:
美形だけどキモくて変態、所により冷酷無慈悲。←全世界のナッポー愛好
家の皆さんに謝れ)

進典侍&水町…
水町が実家(魚河岸の大店か廻船問屋。未決定)からお取り寄せした各種
の鮪を進が“素手”で解体し、捌いた刺身盛り合わせ(え)。江戸時代の後
期ぐらい(?)までは、鮪はあまり人々に好まれる魚ではなかったらしいです。
他の魚に比べ、江戸に届くまでに鮮度引いては味が落ちてしまうのが速か
ったのと、「しび」という古名が「死日」に通じて、不吉な感じがするからという
のが主な理由だったそうな。特に武家社会ではかなり忌み嫌われていたよ
うなので、こいつらの場合は直球で「死ね」。
点々と血とか色々な物が飛び散った白帷子着用の進の姿は、その後も長き
に渡り、大奥御膳所の怪談として語り継がれてゆく事になります。ちなみに
盛り付けは水町が担当。江戸っ子二人の斬新な趣向の共同作品は、ドス黒
く変色した血とてんこ盛りの切り身with御頭・臓物・骨がとっても小粋☆ 精が
付いて怪我の治りも速まります★

キッド&筧…
海の御部屋の御庭(室内同様、住人たちに配慮されているので他の御部屋
のものよりも格段に広い)で丹精されている花々の数種類を、ちょっと趣向を
変えて、活け花というよりも、西洋のフラワー・アレンジメントに加工。
お手本とした洋書の植物学の本の翻訳は筧担当、実際の作業はキッド担当。
綺麗には違い無いのだが、白・黄色・紫を中心とした過剰な程の小菊と輪菊、
そして香りのアクセントを添えている大輪の鉄砲百合が挿された青磁の壺と
いうのは……明らかに供花(くげ)、要するに仏花を意識しているものと思われ
ます(笑)。御台さまから頂戴した六道絵の中から、蛭魔さんが一番気に入っ
たものを床の間の壁に掛け、床板の上にこのフラワー・アレンジメントを飾ると、
素晴らしくカオスな空間が出来上がります。そこで食べる御飯(主菜:鮪刺身)
はきっと、格別のお味に違いニャイ(うわ)。

ちなみに強制的にお相伴に与らされた上さまより贈り主さんたちへ、漏れ無く
しばらく口利きませんてか利きたくありません目と目が合ったら光速で視線逸
らさせてもらいます皆酷いよウルウルの涙目で馬鹿馬鹿馬鹿ぁー(;´Д⊂)!!!
の刑を、お返しプレゼント。面と向かって「嫌い」と言われるよりも、或いは走っ
て逃げられてしまうよりも、遥かにこたえるであろう恐ろしい刑罰です(-ー-)b