冷艶素香

現ES21がいろんな人達から愛されていたり、割れ顎の堅物侍を巡って、藤と金の人外魔境神未満ズが火花を散らしたりしてます。

甘美な白

2008年08月15日 | 進×瀬那
「小早川、休憩にしよう」
「あ、ハイ……」

親の許可を得て一人暮らし中の進のマンションにお邪魔中の瀬那。所謂、
“お付き合い”というものを始めて既に半年以上経つが、本日の目的はい
ちゃつくことに非ず、学生の本文即ち勉強と、至って真面目なものである。

その真摯な人柄と如何にも実直そうな外見を裏切らず、とても丁寧な教え
方で根気良く、己の分からない箇所を解説してくれ、尚且つ自分自身の勉
強もサラサラと淀み無く進める進の様子に、瀬那はまた一段と彼に対する
憧憬の念を深めていた。

「麦茶で良いか?」
「いえっ、どうぞお構い無く……」

とは言っても、結局は形式上の遠慮になるとは双方、目に見えていた(形
式美、とでも言おうか)。幾ら進とて、瀬那の遠慮の言葉を額面通りに受け
取るほど、気の利かぬ男ではない。

「遠慮は無用だ。それに俺自身、喉が渇いた」

端正な所作で立ち上がった進がキッチンに姿を消した後、カチャカチャと食
器同士の触れ合う軽やかな音が聞こえたかと思うと、程無くして彼は盆を
両手に、再びリビングへと戻ってきた。

「口に合うかどうか分からないが……」

見れば盆の上には、冷たい麦茶で満たされた涼しげなガラスのコップの他、
小さく切ったマンゴーやキウイ、スイカなど、季節の果物で小奇麗に彩られ
た淡雪羹が載っていた。

「ああああの、スミマセン僕なんかのために、あの……進さんのお母さんの
手まで煩わせちゃったみたいで……!」
「?」
「あの……お菓子……」
「ああ、淡雪羹のことか。これは俺が自分で作ったものだ」
「え……えぇぇぇぇ!?」
「味なら心配無い。以前桜庭にも食べさせたことがあるのだが、奴も“美味
い”と言っていた」
「進さんが……お菓子を……」
「何だ、意外か?」
「いえ、甘いもの自体お嫌いなのかと思ってたので……コーヒーなんかもい
つもブラックだし……」
「確かに、好むと言うほどのものではないが、適度な糖分の摂取は疲労回
復と脳細胞の活性化に効果があるから、俺とて時折は甘味を口にする。手
作りならば体に有害な食品添加物など入れようが無いし、栄養素も好きに
調整出来るからな。特にこの淡雪羹の場合は、果物を添えることでビタミン
などもバランス良く取ることが出来る上、口当たりも良いから、とりわけ食欲
が減退しがちな夏場は、よく食べている」
「そうなんですか……」

おやつにまでこんな真面目な認識を持って厳しく自己管理してるからこそ、
あの強さなんだなぁと、内心しきりと感心する瀬那に皿とコップを勧めなが
ら、進はやはりそれまでと同様、淡々とした口調で続けた。

「今日のはいつもよりも若干、甘めに作ってみたつもりだ。果物も……ここ
最近、うちでの食事の後に出すと、小早川が特に嬉しそうな顔をするもの
にしてみた。気に入ってもらえると良いのだが……」
「……!!!」

(ああ、この人はいつもこう)
(何気無い仕種や言葉で)
(一体どれだけ僕の心を掻き乱せば気が済むの?)

一匙掬って口に運べば、素朴だけれど、体の隅々にまで染み渡る優しい
甘さ。

「美味しいです……凄く……」
「そうか、それは良かった」
「大好き……」
「? そんなに気に入ったのか?」
「進さんが……」

途端、むせた貴方の広く逞しく、優しい背中をさすってあげられるこの幸せ
が、願わくば次の夏にもその次の夏にも、また訪れてくれますように!

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ゼラチンより寒天の方が好きです。日本の夏の冷菓万歳。食いてぇ~……。
題名をフランス語にしたのは、最初はブランマンジェで話を進めていたから
です。でも途中で、「進さんはやっぱり(?)、敢えて甘味を食べるなら、どっ
ちかっつーと和菓子派なのではなかろうか?」と、気が変わり、淡雪羹に変
更。が、書き上がって後、適当な題名が思いつかなかったので、無料のオン
ライン自動翻訳サイトを使い、造語。それでも合っているのかどうかは謎だっ
たり……orz

↑リサイクルUPに当たり、仏語の題名はやめました。元ネタがブラン
マンジェであっても、今ではもう、題名がフランス語である必要は特に
感じなくなりましたので(もし無料翻訳サイトの翻訳が間違っていた場
合は今後、拍手返礼に使っていた期間とは比べ物にならない程の長
きに渡り、赤っ恥をかき続ける事になる訳ですしね←タダで使っておき
ながら物凄い暴言)。
そして今も寒天系のちょいと固めのプリプリ食感がだ~い好きな香夜
さんです。テングサの活用法を考え出した人って蝶・ネ申だと思う。そ
んな香夜さんがかーなーり、許せないのは、タピオカをデロンデロンに
柔らかく加工してしまう人達です。全世界のキャッサバの木に土下座
して謝罪しやがれコノヤロォォォ!(←貴様にタピオカの何が分かると
言うのか、アンタ一体タピオカの何なのさ!♪?)