ファイアやVJといった当時の黒人音楽業界の最先端とも言うべきレーベルにも録音してきたライトニンですが、同時に当時(60年代前半)はまさにフォーク・ブームの渦中。ライトニンはそういった、主に白人の若者層にあったフォーク・ブルース・ファンの求めに応じるように、すでに紹介したフォークウェイズ FOLKWAYS、トラディッション TRADITIONのほかに様々なコレクター・レーベルにも録音を残しています。
今回はその中で60年から64年にわたってもっとも大量に録音を残したプレスティッジ/ブルースヴィル PRESTIGE/BLUESVILLのものから2枚のCDを紹介します。
Lightnin' Hopkins ; How Many More Years I Got (FANTASY 00025218242523)
- How Many More Years I Got
- Walkin' This Road by Myself
- Devil Jumped the Black Man
- My Babe Don't Stand No Cheatin'
- Black Cadillac
- You Is One Black Rat
- The Fox Chase
- Mojo Hand
- Mama Blues
- My Black Name
- Prison Farm Blues
- Ida Mae
- I Got a Leak in This Old Building
- Happy Blues for John Glenn
- Worried Life Blues
- Sinner's Prayer
- Angel Child
- Pneumonia Blues
- Have You Ever Been Mistreated
☆1962年2月17日録音分(1-10)と同年2月20日録音分(11-19)をまとめたブルース・ヴィル・レーベル録音集。元はLPとして『Walkin' This Road By Myself』『Lightnin' and Co.』『Smokes Like Lightnin'』の3枚で発表されていたもの。CD発売年・・・1989年
★試聴 → http://www.allmusic.com/cg/amg.dll?p=amg&sql=10:dnftxqu5ldse
プレスティッジ/ブルースヴィル Prestige/Bluesvill に最初に録音したのは1960年にハーピストのサニー・テリー Sonny Terry との『Last Night Blues』、続いて同じ1961年の『Lightnin'』となるワケですが、このあたりは実はまだ未聴です。プレスティッジ系には合計11枚のLPを残したというくらいで、その集大成としてファンタジー・レコード Fantasy Records からは7枚組BOXセットなんてのも出ている("Complete Prestige/Bluesvill Recordings")。その勘定からいくと僕はまだそのうちの半分弱ほどしか聞けていないことになる。
まぁ試聴程度でなら他のCDも聴きはしたけど、正直言って金銭的な問題もあるけど今のところはパスさせてもらっている。いまいちパッとしない印象だからだ。そんな中でこの1962年録音のセッションはなかなか聴かせてくれる内容だと思う。
1-10の10曲は1962年の2月17日にヒューストンのACAスタジオで録音。残りの11-19の9曲は同年2月20日に同じACAスタジオで録音。このACAスタジオはライトニンはしょっちゅう使っているスタジオで、よくクレジットで見かけます。
1961年のセッションがサニー・テリーなどがゲストで付く以外はアコースティック・ギターの弾き語りだったのに対し、この62年のセッションではエレキ・ギターにベース&ドラムのバック付き。時にピアノやライトニンのいとこでもありこの後の録音でもたびたび顔を出すビリー・バイザー Billy Bizor のハープがつく。ドラム&ベースもスパイダー・キルパトリック Spider Kilpatrick (アーフリーの諸作でも叩いている)とドナルド・クック Donald Cook (SIW録音やヘラルド録音にも参加)というおなじみの連中を引き連れ、リラックスした様子で演奏している。
1-10の2月17日のセッションは、少々緊張感が足りないというかリラックスしすぎというか、たとえば"Mojo Hand"のような曲でもサラッとやりすぎだ。ビリー・バイザーのハープはテクニックはないが、"Walkin' This Road By Myself"などでのハープはなかなかダウンホームでよい雰囲気だ。
11-19の2月20日のセッションはBuster Pickensというピアニストが入っているが、これが幸をそうしたのか、なかなかのこ好セッションとなっている。"Pneumonia Blues"や"Have You Ever Been Mistreated"のようなスロー・ブルースはさすがの出来。ただ、録音が全体的にクリアーなので、ドロッとしたエグさのようなものはあまり感じられない。
Lightnin' Hopkins ; Double Blues (ACE RECORDS CDCH 354)
- Let's Go Sit on the Lawn
- I'm Taking a Devil of a Chance
- I Got Tired
- I Asked the Bossman
- Just a Wristwatch on My Arm
- I Woke Up This Morning
- I Was Standing on 75 Highway
- I'm Going to Build Me a Heaven of My Own
- My Babe
- Too Many Drivers
- I'm a Crawling Black Snake
- Rocky Mountain Blues
- I Mean Goodbye
- The Howling Wolf
- Black Ghost Blues
- Darling, Do You Remember Me?
- Lonesome Graveyard
☆1964年5月4,5日に録音。のちに『Down Home Blues(1-7)』と『Soul Blues(8-17)』の2枚のアルバムで出されたものの2 in 1。CD発売年・・・1989年
★試聴 → http://www.allmusic.com/cg/amg.dll?p=amg&sql=10:fnfrxqu5ldse
先のCDが身内連中で固めて作られたものに対し、こちらの64年録音の方は久しぶりのニュー・ヨーク録音。ライトニン自身はエレクトリック・ギターであるのは同じだが、バックは元ジョニー・ムーア&スリー・ブレイザーズのドラマーのHerbie Lovelleとジャズ系セッション・ベーシストのLeonard Gaskinという布陣でかなり環境は違う。
特にドラマーの差は歴然で、スパイダー・キルパトリックは完全にフィーリングというかライトニンの一挙手一投足に合わせてドラムを叩く、つまりおそらくライトニンのいつものスタイルに最適のドラマーなのに対し、ハービー・ラベルの方は全編ブラシでステディなビートを刻み続けるという、ライトニンの相手にしては少々地味にも思えるドラムだ。
聴き始めた時はそのバックのおとなしさにつまらなさも感じたが、でも先の62年セッションなどと聴き比べると感じるのだが、こちらの方はお互い手の探り合いというか、適度な緊張があるようで、浮ついたところがないところが良い。これには全17曲中アップ・テンポの曲は"My Babe "と"I Mean Goodbye"の2曲だけで、残りはスロー・ブルースということもそう感じさせる原因かもしれない。
ところでLPでは1-7は『Down Home Blues』、8-17は『Soul Blues』として出されているのだが、この2枚ではライトニンのギターの音色がかなり違う。『Down...』のほうがギターの音が歪んでギラついており、エレキギターだとわかるのだが、『Soul,,,』のほうはアコースティック・ギターか、それにピック・アップをつけているものなのかわからないが、もっとナチュラルな音色になっている。もっともライトニン自身は変わらず力は入った演奏だ。"The Howling Wolf "ではお得意のギターでの遠吠えを披露している。残念ながら音量がいまいち小さかったか、エレキではないからかちょっとわかりにくいかもしれないが。
この2枚のCDも発売以来だいぶん年数が経ってしまっているが、入手自体は容易のはず(ただし『Double Blues』はAce盤はすでに廃盤。入手は『How Many Years I Got』同様Fantasy盤しかない)。僕が思うに、プレスティッジ録音に関してはこの2枚だけで十分だと思う。もし全部揃えたいと思うのであれば、先にあげたCD7枚組の全録音集を買う方がいいですね。