東海大相模(神奈川) 10-6 仙台育英(宮城)
第97回全国高等学校野球選手権大会決勝は、東海大相模に軍配があがりました(昨日同様、見ていませんが)。昼食の時に、最初のところだけ見ましたが、準決勝同様、いきなり東海大相模が先制する展開で、これはワンサイドゲームかと思いきや、仙台育英が粘りを見せて、決勝らしい白熱した試合になったようです。
昨日、決勝についてこう書きました。
「最後の一戦であり、両チームの全選手が全力を尽くすでしょうから、単純な比較はできないでしょうが、仙台育英は佐藤世投手にすべてを託し、東海大相模は3人の投手をフル稼働させる戦い方になるのではないでしょうか。そうなると、逆説的に聞こえるかもしれませんが、ひょっとすると、逆に仙台育英に勝機が生まれるのではないかと思います。逆に、東海大相模が小笠原にすべてを託し、両投手の一騎打ちになると、東海大相模に軍配があがるかもしれません。いずれにせよ、そんなに大差がつかない、しびれる試合になるのではないと思います。」
東海大相模は継投策という下手な小細工をせず小笠原にすべてを託し、仙台育英佐藤とのがっぷり四つのエース対決になり、思っていたより点数は多かったですが、予想通り9回まで同点という僅差の戦いになり、結果的に下手な策を労さなかった東海大相模が勝利しました(その小笠原が決勝点となる本塁打を放ったのは出来すぎでしょうけど)。
春に故障し、予選も満足に投げられなかった佐藤投手は連戦の疲れあったでしょうね。対する今大会No. 1の呼び声高い小笠原は、昨日は短いイニングしか投げておらず、有利だったはずですが、今大会はベストの状態ではなかったのでこれだけ僅差の戦いになったのでしょうね。それでも、東海大相模が、豊富な投手陣を背景に継投策などの戦術をとったら、勝利がするりと逃げていったのではないかという気がします。
最高レベルでの戦いを気持ちだけで勝てるはずはありませんが、実力が拮抗したギリギリの戦いでは、勝利までの最後の一歩を決めるのが「気持ち」であることはよくあることだと思います。
佐藤世投手にすべてを託す仙台育英はもともと背水の陣。対して、豊富な投手陣を持つ東海大相模が自らの戦力に自信を持ちすぎると、油断とまでは言いませんが、最後の強い気持ちを切らすのではないかと思っていました。
それに対して、今大会No.1と言われながら、6回6失点で追い付かれたものの、エース小笠原を代えなかったことで、東海大相模も退路を断っての背水の陣の気持ちを維持できたのではないかと思います。
こうしたギリギリの戦いを終えて、敗れた仙台育英の佐藤投手のインタビューを読むと、本当にこの技術を越えたところにある、ギリギリの「何か」を感じます。やり切り成長できたという気持ちと、それでもこのギリギリの勝負を勝ち切れなかった悔しさが入り混じり、「本当に一言では表現できない場所」と甲子園の決勝の舞台を表現しました。序盤に6失点をしながらも、支えてくれる声援や監督の言葉で、切り替えられたという「気持ち」と、優勝旗に本当にあと少しのところまで手が届きながら逃した一言で言い表せない「気持ち」。
100年の節目の大会で、東北悲願の優勝を勝ち取ることは出来ませんでしたが、観る側は十分にたくさんのものをもらったと思いますし、勝者と同じくらい敗者も得たものは大きかったと思います。そして、勝者となった東海大相模も優勝候補と言われた昨夏から二年ごしの優勝です。やはり、昨年の敗北で得たものを形にしたのだと思います。
精神面に目を向けすぎて、合理的な大会運営や選手の故障予防をないがしろにしてはいけませんが、それでも、高校球児たちをして、すべてを犠牲にしても今この瞬間にすべてを賭けたいと思わせる「何か」が聖地甲子園には宿っているのでしょうね。私もいつかは訪れてみたいと思います(もちろん高校野球観戦で)。