9月8日(日)午後1時から4時半まで愛知民主会館で第32回ロシア語特別講座が
開催されました。
参加者は13名(うち会員8名)でした。この講座は「とにかくたくさんロシア語を
聞く、朗読する、話す」を目標にしています。
まず最初に今回のゲストスピーカー、内山エレーナさんの講演がありました。彼女は
ベルガラド出身のロシア人で昨年来日、今は日本語猛勉強中です。ヴォロネジ
大学のジャーナリズム学部を卒業されたということで今回は彼女の大学受験に
ついてお話をしていただきました。
彼女が受験した1995年はソ連崩壊のすぐ後で、ロシアの人たちはまだ新しい国の
体制に慣れず、呆然としていた時期です。またソ連崩壊後はかつてのソ連の共和国
からロシアに戻ってきたロシア人もたくさんいた上に子どもに高等教育を受け
させたいという人も多く、つまり、大学に行きたい人がとても多かったのでした。
当時はまだ国立大学ばかりで 小さな町には大学の数も少なかったのです。
10年制の学校を卒業したエレーナさんは大変な優等生だったようですが、文章を
書くことが好きでジャーリストになることを夢見ていました。彼女が目指したのは
ヴォロネジ大学のジャーナリズム学部でした。ここではジャーナリスト、作家、
俳優、演出家、映画監督などを目指す人たちが勉強します。
こうした学部では独特の入学試験がありました。まず作文試験があり、その
結果を見て二日後に面接試験がありました。作文試験では最初に3つのテーマが
提示され、それぞれその一つを選んでエッセイを書かなければなりませんでした。
エレーナさんはこの学部に憧れて受験に来たものの、自分に自信がありません
でした。でもエッセイを書いているうちに、「どうしても合格したい、ここで
勉強したい」という気持ちが燃え上がり、一生懸命に書いたそうです。次の
試験までの二日間、興奮と緊張とで彼女は眠ることも食べることもできませ
んでした。
面接では二人の教師から書いたエッセイについて質問され、更に今どんな
本を読んでいるか、どんな映画が好きか、興味のあることはなにか、などの
質問がありました。
そして重要な質問「なぜここで勉強したいのか、ジャーナリズムでなにを
成し遂げたいのか?」には彼女は「文章を書くことが好きです。プロとして
書くことを学びたいのです。そして有名になりたいです」 と答えました。
面接が終わって、付き添ってきたお母さんと廊下でしばらく待っていると
先ほど面接した先生がやってきて「おめでとうございます!成績は5です。
おうちに帰ってもいいですよ」と言いました。
あんまりあっけなくて、彼女とお母さんは訳が分らずその場に立ったまま
でした。そしてお母さんは「これで全部ですか?この先はどうなりますか?」
と聞いてしまいました。先生の答えは「ええ、これで全部です。お嬢さんは
合格です。もうお帰りになっていいですよ。新学年の始まる前にまた来て
ください。」でした!
合格と聞いてうれしかったそうですが、、それでも新学期にヴォロネジ大学に
行って事務所に貼り出された合格者のリストに自分の名前を確認するまで
エレーナさんは「ひょっとして なにかの間違いだったら?」と不安でたまら
なかったのでした。
参加者の皆さんには事前にロシア語の原稿とその和訳を配布してありました
ので結末は分っていたはずですが、エレーナさんはとても生き生きと上手に
お話されるのでみなさん、ドキドキしながら聞いておられたようです。