硯水亭歳時記

千年前の日本 千年後の日本 つなぐのはあなた

    櫻かざしつ花の折枝

2012年04月29日 | 

 

三春の瀧櫻 雨にうたれて泣いておりました (パソコン画)

瀧櫻 裏正面から描いたもの

 

 

 

櫻かざしつ花の折枝

 

 

瀧櫻は一日中、雨にうたれて泣いておりました。

去年は他県から殆ど観る客もなく、今年も例年通りではありません。

朝昼晩と、一日中花を見詰めていましたが、傘をさした人もまばら。

広大な駐車場はガラガラ、櫻狂いの私にとっては幸いで、

夜、ライトアップの中、私は櫻の詩の中で最も美しい詩を、

何遍も何遍も、真言のように繰り返し唱えておりました。

 

   「さくら」

   ことしも生きて
   さくらを見ています
   ひとは生涯に
   何回ぐらいさくらをみるのかしら
   ものごころつくのが十歳ぐらいなら
   どんなに多くても七十回ぐらい
   三十回 四十回のひともざら
   なんという少なさだろう
   もっともっと多く見るような気がするのは
   祖先の視覚も
   まぎれこみ重なりあい霞(かすみ)立つせいでしょう
   あでやかとも妖しとも不気味とも
   捉えかねる花のいろ
   さくらふぶきの下を ふららと歩けば
   一瞬
   名僧のごとくにわかるのです
   死こそ常態
   生はいとしき蜃気楼と

 

            茨木のり子の詩 60歳代の作品)

 

茨木のり子は生涯清冽な人生をおくりました。

15歳で戦争にまきこまれ、19歳で敗戦の屈辱をうけます。

彼女の詩「わたしが一番きれいだったとき」が出発点だったかも。

2006年、ご自宅で脳動脈瘤破裂で孤独死。

すっぱりと生きることだけ心掛けていた彼女らしく、

「私の意志で、葬儀・お別れ会は何もいたしません。

この家も当分の間、無人となりますゆえ、

弔慰の品はお花を含め、一切お送り下さいませんように。

返送の無礼を重ねるだけと存じますので。

“あの人も逝ったかと”一瞬、たったの一瞬思い出して下されば

それで十分でございます」との遺書。享年79歳の大往生でした。

 

この詩の最後の五行が、私の胸をいつも強かにうつのです。

茨木のり子の真実観(シンシビリティ)の凄さ。

 

三春は5,000余の世帯数なれど、櫻の多いこと、圧倒される。

柳沼ハナさんと言うお婆ちゃん、全国に瀧櫻の子を三万本贈ったという。

種から産んだピンピンの実生の瀧櫻を。本当に優しい人。

どんなに古樹の櫻の花びらも、真新しく生まれた花と全く変りなし、

その嬉しさと、古樹の凛々しさと、強さと新鮮さ。

 

保科正之を慕って、今日は会津。会津五櫻を観んと。

石部櫻の見事さ、薄墨櫻や、会津・坂下(ばんげ)の杉の糸櫻を見学。

会津の奥座敷・芦ノ牧温泉に投宿す。連休なのに満室ではなく、

風評被害の深刻さと酷さ。されど会津・鶴ヶ城の櫻はほぼ満開。

まこと北国の櫻は開花してから満開になるまでの早さ、驚くべき。

会津の放射能は0.11μSv/h。三春は0.22μSv/h の低さ。

 

宿の櫻の一枝を取り、トックリに入れ観つつ、真夜中、未だ飲酒中。

 

岩彩にて悪戯描きす「石部櫻」 田の中、一つの根から8本の幹 堂々の江戸彼岸

 

 三春在住・玄宥宗久住職の「三春の櫻」のお話!

 


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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ご無沙汰を恥じています! (硯水亭歳時記)
2012-12-31 21:05:28
  木村草弥先生

 長らくご無沙汰いたしております。我が財団の林業、とりわけ櫻の仕事が本格化し、東奔西走しています。国土の七割が森林である我が国の林業は今やらなければならないことが多すぎて、義塾をつくり若者を育て、山林を購入し伐採を徹底し、あらゆる森人と連絡を蜜にして、仲間と奮闘しています。
 先生におかれましては益々お元気のこととご拝察申し上げます。偶然先生の詩集『昭和』を見つけ、愛読させて戴いております。是非ご感想など、先生のコメント欄にでも書かせていただきたく。『愛の寓意』のご出版もおめでとうございます。何だか先生らしい素敵な表題ですね。近々購入し鑑賞させて戴きます。

 先生のご訪問を心から嬉しく思いました。有難う御座いました!
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ここに居られましたか (sohya)
2012-12-19 10:58:49
■硯水亭さま。
偶然、木村草弥の検索サイトに引っ掛かりました。
ここに居られましたか。
最新の記事が、これですから、ブログには興味を失われたようですが。。。。。
前のサイトはコメント拒否のようでしたので、寄り付く島もありませんでした。
「お声」などお聞かせください。
あれから私は詩集『愛の寓意』、歌集『昭和』など出しました。
貴サイトは「リンク」に貼りました。
では、また。
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