硯水亭歳時記

千年前の日本 千年後の日本 つなぐのはあなた

 祇園の夜

2007年04月14日 | 

 

 

 

祇園の夜

 

 

去年の夏のアノことをご報告しなければならない方がいた

あの哀しい知らせを 何処から漏れたか 弔電を戴いた御礼もあった

その祇園・甲部にあるさるお茶屋さんに出向いた 

独りだと何かと心細い オフィスの女性陣を三人ほど同行願って 

予約を入れると 慌ただしい最中 漸くひと部屋を用意して戴いた

 

三人の女性達は皆生粋の京都人ばかりだが 

お茶屋遊びの経験がまったくないと言う

男性陣は今後何時でも行けるからと言い訳し 

今夜は女性陣だけを連れて行くと宣言し オフィスを出た

 

日本一美しい常照皇寺の九重櫻が満開で 

御室のお多福櫻も漸く花時であったから 

私は今日一日は上気しっ放しで 頗る上機嫌であったかも知れない

京都の春を満喫させて戴いた心地よさ 堪らなかった

 

嘗て主人と共に何度もお邪魔しているお茶屋さんだが

私とのお付き合いは 私から新たに始まるわけで 畏まっていた

芸妓さんが来られる前に ひと通り女将にご挨拶申し上げた

「私一代で 大切な親子のお客様を 二人共に亡くした喪失感」と

女将がポツリと洩らす 

 

櫻行脚も一応の区切りをつけたいので 今夜は騒ぎましょうと

敢えて申し上げ 芸妓さん三人 舞妓さん一人 地方さん二人が来て

連れて行った女性達は 何の遠慮もなくキャ~キャ~と騒いでいる

失敗したかなと思われた瞬間 芸妓さん達も次第に盛り上がって来て

私はほっとして静かに 女将の進められるまま酒をあおり見ていた

 

こんな風にして女の子達を大勢連れて来て済みませんと言ったら

言え言え 逆に芸妓の子達もいい息抜き出来てますねんと仰る

私は内心 主人には追いつけないなぁと実感しながら

それでも実に楽しいひと時を過ごせた

 

帰りがけ ふと床の間を見ると 

亡き主人が大好きだった鬱金(うこん)の櫻花が

さりげなく備前の花器に ひと枝挿してあった

 

 

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櫻灯路より 『京都のお茶屋さんで』

 



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