Une petite esquisse

日々の雑事の中で考えたこと、感じたことを徒然に書き綴ります。

伊集院公威

2011年08月21日 | アート全般
 1982年、銀座『和光』で個展を開き、他人の作品を自作と偽って
販売し、一億円の荒稼ぎをした。
 唐津などで購入した作品、瀬戸、美濃の陶芸家に「お前の個展を銀座
で開いてやる」と言って持ち出した作品、芸大の陶芸工房の裏に捨てて
ある、いずれ壊す出来損ないの作品など。
およそ、単価5、000円のモノを平均60万円で売っていた。
 当時の読売新聞に「銀座ド真ん中、インチキ個展―陶芸品」、「他人
の作品も並べて荒稼ぎ」、「和光が80点、1500万円を回収」と
三本の縦見出しで報じられている。
 数学者の矢野健太郎や彫刻家の堀内正和も推薦文を寄せ、哲学者の
谷川徹三は「・・・秩序の感覚が爽やかで風のように吹き通して快い」
などと、作品をべた誉めする推薦文を書いている。
 それにしても伊集院公威は華麗な経歴の持ち主である。
米国籍で、米空軍パイロット、京都大学を卒業、プリンストン大学高等
数理研究所を修了。京大、プリンストン大学から、それぞれ博士号が
授与されている。数学博士、陶芸家、エッセイスト、評論家と輝かしい
才能の持ち主である。広中平祐や池田満寿夫が親友で、中山千夏、
左幸子、辻清明などとも交流がある。勿論、これらの経歴はすべてが
詐称である。
 ここで問題になるのは、他人の作品を自作として売れば詐欺になるの
か、経歴を詐称して作品を売れば詐欺になるのか、文化人?のデタラメ
な推薦文を添えると詐欺になるのか。
 もし他人の作品を自作として売ることが詐欺になるなら、陶芸の世界
は詐欺師のオンパレードである。高名な陶芸家で、実際に自分で作品を
作っている人は少ない。弟子の作品をちょっといじくっただけ、最後に
ちょっと形を崩すだけで自作として売る。弟子の作品をそのまま自作と
して売る。まるで天皇陛下の田植えのようなことがまかり通っている。
 何より、作品を見て良いと思って購入したのだから。本人の鑑定眼の
問題である。偽作であろうが、経歴に偽りがあろうが、文化人の推薦文
がデタラメだろうが、何の責任もない、という考え方もできる。
 医師や弁護士の世界はニセモノと本物を仕分けるルールがはっきりし
ている。
陶芸の世界も自分で粘土を捏ね、自分で成形し、自分で釉掛けし、
自分で焼成した作品のみが「自作である」と最低限のルールが欲しい。

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