Une petite esquisse

日々の雑事の中で考えたこと、感じたことを徒然に書き綴ります。

イギリス観光案内ー英国の至宝(10)

2021年03月18日 | 旅の情報
ラファエル前派


G・E ミレイ《両親の家のキリスト》 1850年 (テート・ブリテン蔵)


部分拡大図


部分拡大図

 描かれているのはヨゼフの大工の仕事場で当時、伝統的なキリスト教絵画の理想的な
表現に反していると酷評を受けて展示から外された。
 社会への影響力、発言力を持っていたチャールズ・ディケンスは「まったくアマチュ
アの作品」、「神に対する冒読だ」と批難した。
後ほど、この発言によってディケンスの美術史的、宗教史的な無知を曝けだすことになる。
カンナくずはキリストの払った犠牲、右端の少年はヨハネ、両親の家は教会を象徴して
いる。ラファエル前派の主義、主張をもっとも代表する作品と言われている。


 イギリスは「クニ」の成り立ちが大陸ヨーロッパとは異なっている。
それがイギリスの魅力でもあるが、大陸ヨーロッパとは違った形で芸術・文化が発展した。
同時代の大陸ヨーロッパの印象派とイギリスのラファエル前派とは表現するものが本質的
に異なっており、芸術の概念が全く違っている。
 ラファエル前派は文学や伝承を素材に写実をもとに不可視の深遠な思想を表現しようと
したものであった。
 ラファエル前派の作品を見ていると、極めて美しい女性が描かれ官能的で、甘々しく華美
な雰囲気が漂っている。個人的には、とても好きになれないがイギリスの時代的、社会的な
背景を知ると、イギリス史において非常に価値あるものと認識させられる。
 イギリス文学を題材に宗教的なエピソードや伝承、文学的逸話を通して、社会の深層を掘
り起こしている。

イギリス観光案内ー英国の至宝(9)

2021年03月08日 | 旅の情報
ウイリアム・モリスとケルトの美(ロンドン)

 ロンドンの中心地から地下鉄ビクトリア線で北東に約20分。
終点ウォルサム・ストー・セントラル駅で下車。閑静な住宅地をしばらく歩くと、
ロイド公園の中にウイリアム・モリス・ギャラリーがある。


ウイリアム・モリス・ギャラリー外観


庭園から見たギャラリー外観


左側の椅子はビクトリア時代のもので、右側の椅子がモリスがデザインしたもの


ステンドグラス

 モリスが少年時代に過ごした家をギャラリーとして公開。モリスがデザインした壁紙、タペ
ストリー、椅子や家具などを展示していて、モリスの活動の全貌を知ることができる。
 モリスは産業革命によって、大量生産、効率主義が優先され、手仕事や労働の喜びが失われ
ていく危惧から、手間隙をかけていいものを作る、職人が労働の喜びや美しいモノづくりが出
来る環境を復活させようとした。
 20世紀のモダンデザイン、生活と芸術を一致させようとする、アーツ&クラフツ運動へと
繋がり、アールヌーボーの先駆として、ビアズリーやミューシャ(ムハ)、レーニー・マッキ
ントッシュなどに影響を与えた。


ミュージアムショップ


館内レストラン


館内デッサン風景


展示風景


子ども向けワークショップコーナー

 ウイリアム・モリスの有機的なデザインには「生は永遠である」といった、ケルトの思想を
読み取ることができる。先史時代のケルト文化がウイリアム・モリスによって19世紀に蘇っ
たものと言える。

データ:
ウイリアム・モリス・ギャラリー
住所:Lloyd Park、Forest Rd,
交通 :地下鉄ビクトリア線、終点Waltham stow Central駅下車
開館 :水~日 休 月火祝 10:00~17:00
入館料:無料

イギリス観光案内ー英国の至宝(8)

2021年03月06日 | 旅の情報
大英博物館の「ケルトの美」(ロンドン)



 イギリスの歴史はミステリーに満ちている。
いろいろな民族の興亡、衝突の中で異質のものを排除せず融合して来た、この多文化共存、
寛容の精神こそがイギリスの魅力である。
 大英博物館の「ロゼッタ・ストーン」はナポレオンがエジプトから持ち帰ろうとして、ア
レクサンドリア条約によって、勝利軍のイギリス側に引き渡されたものだし、「パルテノン
・マーブル」は当時オスマン・トルコの大使だったトマス・ブルース・エルギン卿が莫大な
私財を投じてギリシャからイギリスに持ち帰ったもので、どちらもイギリスの歴史的文化財
ではない。大英博物館の収集、展示物に自国イギリスのモノはきわめて少ない。


バターシの盾


部分拡大図


金製の腕輪(イギリスでは金は採掘できない)


フィブラ(留め針)

 2階展示室に「先史時代からローマ時代を経て、ルネッサンスまで」のイギリスの歴史、
文化財が展示されている。とりわけ展示:50室「鉄器時代とケルトのヨーロッパ」では
ケルトの鉄器、銅器、青銅器などの装飾品を見ることができる。
 ケルトの金属加工技術の水準の高さ、高度な芸術性を伴った独特なケルト文様は斬新で
現代にも通用するデザインである。
切れ目のない有機的な連続模様のデザインに「生命は永遠である」と言ったケルトの生命
観を感じる事ができる。
 イギリス人の精神性の根底にローマ文化があり、さらにその基底にケルト文化が生きづい
ていると思われる。


データ:
大英博物館
   グレート・ラッセル 通り
   10:00~17:00
   無料(寄付歓迎)
   地下鉄 ホルボーン駅
       トッテナムコートロード駅
       ラッセルスクエア駅

       

イギリス観光案内ー英国の至宝(7)

2021年03月01日 | 旅の情報
シュルーズベリー博物館&美術館(シュルーズベリー)

 シュルーズベリーはセヴァーン川が馬蹄形に曲がった半島の中にあり、三方が川に囲まれ
た自然の防壁として、ウエールズとのたびたびの抗争の時に戦略上の拠点としての役割を果
たしてきた。
 1403年のシュルーズベリーの戦いが記憶に残るが、古戦場だった戦跡は街のどこにも
見当たらない。




チューダー朝期の建築物


街の中心のオールド・マーケット・ホール

 シュルーズベリー駅から緩やかな坂道を10分ばかり歩くと、15世紀、チューダー様式
の建築物が多く残る街の中心に至る。白壁と黒い梁をもつ古風な街並みは落ち着いた雰囲気
で徒歩圏内に見どころは集中しており、散歩気分でゆったりと観光ができる。
 シュルーズベリー博物館&美術館はミュージツクホールの建物の中にあり、先史時代から
のシュルーズベリーの歴史を紹介している。
 ローマ時代の集落「ロクスタ遺跡」の発掘品を展示しており、当時の人々の生活の様子を
伺うことができる。特に「鏡」は美しく必見である。
チューダー朝以降の絵画や装飾品も見応えがある。




ローマ侵攻以前のケルト族の集落


ローマ時代の「鏡」


モザイク


鏡を見る石彫レリーフ


ローマ時代の装飾品


データ:
ロンドン、ユーストン駅からバーミンガム駅で乗り換えシュルーズベリー駅まで、約2時間20分~50分。
(1時間に3~4本)
ロンドン、ヴィクトリアコーチステーション~シュルーズベリー、4時間50分。(1日3本)

カーディフ中央駅~シュルーズベリー駅 約2時間