台湾の情報ならお任せ RTIブログ

台湾の情報満載!RTIのホームページでは見られない情報をご紹介。

少年ジャンプ初の海外作家、台湾漫画界の新星・彭傑さん

2010年07月17日 08時35分52秒 | 文化

 (台湾漫画界の新星、彭傑さんのデビュー作『STORY-童話書の中の童話』)

週刊少年ジャンプと言えば1968年創刊で、日本で最高発行部数を誇った名門の漫画週刊誌。これに載るのは日本で漫画家を目指す人たちの夢であろう。しかし競争のきわめて激しい日本の漫画界、掲載されるのはほんの一握りの人たちの作品のみ。当然海外の漫画家にとってのチャンスはより小さくなる。実際、少年ジャンプでは創刊以来、海外の作家の作品が載ったことがなかった。そして6月28日発売の今年30号で、台湾の漫画家がその歴史に風穴を空けたのだ。

今年の週刊少年ジャンプ第30号には、読みきり作品『KIBA&KIBA』が掲載された。この作品は、アメリカンフットボールを題材にしたスポーツ漫画、『アイシールド21』で知られる稲垣理一郎さんが原作を担当、作画はコンペティションで選んだらしく、複数の漫画家の中から台湾の彭傑さんのものが載ったのだ。

(少年ジャンプの30号表紙。左の中心に『KIBA&KIBA』が紹介されている)

彭傑さんは台中に住む28歳。国立成功大学で建築を学び、大学院で修士も取得。一級建築士の免許も持ちながら、子供のときからの夢をあきらめずに漫画家の道を歩んでいる。小学生のときから一日十時間の執筆を続けながら、学業も怠らず、今では野菜を植えたり料理に熱中したりもするという「健康な」青年だ。
同人誌などを描いていた彭傑さんは今年1月、台湾角川書店発行のオリジナル作品、『STORY-童話書の中の童話』でデビュー。この作品は行政院新聞局のストーリー漫画賞一般部門で優勝している。ふとしたことから、不思議な童話全集から逃げ出した童話のキャラクターを捕まえる役目を強いられるホテルのマネージャーの冒険をコメディタッチで描いた作品。誰もが知っている童話を物語に盛り込んだのがミソのなかなか面白い一冊だ。

『STORY-童話書の中の童話』における著者紹介の欄には、「中間テストで失敗した人、恋人に二股をかけられていた人、リストラされてしまった人たちが読んだ後で大笑いし、不愉快なことを忘れられる漫画を描きたい。集中して漫画を描き続けられることは本当に本当に気持ちいいぜ!」と書かれている。稲垣さんと合作できたことをとても光栄だと話す彭傑さんは当然、日本の漫画雑誌での連載を目指している。新作も日本との合作とのことであながち夢ではないようだ。台湾では世界で活躍するスポーツ選手や世界で高く評価される商品などを「台湾之光(台湾の誇りという意味)」と呼ぶが、漫画界での「台湾之光」が生まれたのだ。彭傑さんの今後の活躍に期待したい。

(韋宗成さんの『馬皇降臨』。2008年3月の総統選挙で馬英九・総統が誕生するまでの台湾の政治闘争を近未来スペクタクルとして描いたナンセンスギャグ漫画。政治に関心が無いとたぶん理解不能。登場人物はみな政治家のパロディだ)

(同じく韋宗成さんの『AV端指』。アダルトビデオをめぐるギャグ漫画。屋台でイカスープを売りながら台湾のAV産業発展を夢見るおじさんなど、かなりアブノーマルなキャラクターが続出する)

台湾の子供たちは日本の漫画を読みあさっている。正式に版権を取った中国語版が出版されていて、日本の人気漫画はほぼすべて読める状態だ。日本の漫画は世界が認める最先端のものであり、それによって目の肥えた読者ばかりの台湾は、台湾独自の漫画家が育ちにくい環境となっている。彭傑さんはそんな中で生まれた貴重な「新星」だ。
また、最近では、韋宗成さんの『馬皇降臨』や『AV端指』、洪育府さん・洪培恩さんコンビの『極楽八仙』なども単行本となって人気を呼んでいるという。あくまで素人目だが、いずれもなかなかの画力だ。また、台湾のオリジナル漫画のファンにはうれしいニュースも。1990年にスタートし、第10巻が出た1999年に突然ストップ、多くのファンにショックを与えた歴史的名作『YOUNG GUN』の最後の二冊が今月28日に発売されることになり期待が高まっているのだ。今年が台湾の漫画界、台湾の漫画家たちにとっての一つの転機になるよう祈りたい。(U)

(洪育府さん・洪培恩さんコンビの『極楽八仙』。修行のために人間界に落とされた「八仙中人」を追い求めてやってきた「何仙姑」が人間の不良少年たちと出会って始まる珍道中。表紙の「何仙姑」が可愛らしい)



最新の画像もっと見る

コメントを投稿