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あれから一年…88水災被災現場のその後

2010年08月10日 17時02分36秒 | 台湾ニュース

 昨年2009年8月に台湾を襲った台風8号による被害発生から、8日でちょうど一年を迎えました。
 台風8号によって、北部を除く台湾本島のほとんど全域が、事前の予想をはるかに上回る激しい降水量に見舞われ、各地で土砂崩れや河川の氾濫などが相次ぎました。
 死者・行方不明者数は700人を超え、経済的な被害総額は算出不能とまで言われています。
(88水災関係過去記事台東高雄追悼式

 台風上陸は8月7日であり、また中央気象局や行政側がこの台風について正式に使用している名称は「モーラコット台風災害」なのですが、一般には、メディアなどを通して「88水災(8月8日の水災害という意味)」という呼称がすっかり定着しています。
 先日8月8日には「88水災から一周年」として、各地で記念行事や追悼式などが行われ、馬英九・総統も参加しました。

 88水災による被害の象徴となっているのが、高雄県甲仙郷にある小林村です。
 深い山あいに広がる、人口800人ほどの小林村では、村のおよそ半分が集落群ごと一瞬にして土石流に埋まり、500人近くが亡くなったとされています(遺体の多くは見つかっていません)。
 小林村だけで、88水災による犠牲者のおよそ2/3を占めている事になります。

上の写真:
小林村の現状(2010年8月5日撮影)
10メートルほどにも堆積した土砂の除去は困難で、無理な掘り起こしを望まない遺族の意向もありそのままとなっている


河のように見える部分の向こう側が元の村
右隅に見える道路と河の高低差は以前は数メートルあった


これが元々の姿
周辺環境が変化しすぎていて想像もつかない

 難を逃れた村民たちも、ほとんどは家や田畑を失っており、小林村は今では、すっかり変わり果てた姿のまま、ほとんと無人の状態となっています。


小林村にぽつんと残る無人となった住宅

 住宅の手前に見えるのは、小林村の犠牲者を追悼する記念碑。
 台湾の芸術家・許亦成の作品で、88水災で流れ出した流木を使い、太い流木を幾つもの支柱が支え合い、希望を表しているんだそうです。
 小林村の住民のほとんどは、平埔族と呼ばれる原住民族の人たちでした。平埔族はその昔「太陽の民族」と言われたそうで、中心となっている流木は、彼らの魂のよりどころである太陽の方向を向いています。

 行政院文化建設委員会の主導で、今年10月以降、小林村の一部に「小林和平記念公園」が建設される予定となっています。
 被災現場に静かに佇んでいるこの記念碑は、完成後には公園内に移される予定です。


この道路を隔てた山の上の方が記念公園の予定地
土砂に埋まったままの集落群を見下ろせる位置
昨年8月末にダライ・ラマ14世が小林村を見舞った時もここで祈りを捧げた


 小林村出身者を含め大部分の被災者は、すでに政府の用意した新住宅に転居しています。
 今でも避難所暮らしを続けている被災者およそ1500人も、来年の旧正月までにはみな新住宅に入居できる見通しとなっており、避難生活者が一時は2万5000人以上に上った事を考えると、非常に早いペースでの生活再建がなされていると言ってよいでしょう。

 しかし一方で、親戚や知人宅に身を寄せており、新住宅の入居申請もしていないケースなど、統計に出てこない被災者も少なくないと言われています。
 現在も仮設住宅暮らしの小林村再建発展協会・常務理事の徐報寅さん(下の写真)は、「新住宅は立派だが、画一的でみんなバラバラ。ハードだけでは、私たち平埔族が山の上で守ってきた文化、本当の意味での『小林村』は本当になくなってしまう」と、危機感を募らせています。
 


着ていた服以外全てを失ったという小林村出身の徐報寅さん


徐さんの暮らす赤十字の仮設住宅
「辛いが、ここならまだふるさとに近く安心できる」と

 88水災で被害を受けた道路・鉄道などの交通インフラは昨年中に全て復旧し、また河川については、堤防の修復などに加え、大規模な安全強化策が進められています。被災者の生活支援も基本的には順調だと言ってよいでしょう。
 88水災のもたらした爪あとは非常に大きなものでしたが、台湾は僅か一年で、大きな復興を遂げて来ました。

 しかし、徐さんの言葉にもあったように、ハード面での復興だけでは、真の意味での再建とは言えないのも事実です。
 政府は被災者の生活支援に力を尽くしていますが、「復興予算は空前」「再建ペースは1999年の台湾中部大地震の時よりも速い」といった成果の強調が目立つ一方、被災者の側からは「もっと私たちの意見を聞いて欲しかった」という声も上がっています。

 また、6月27日のNHKスペシャルで、小林村の災害事例が科学的に検証され話題となりましたが、当の台湾では、復興作業の進展や責任論ばかりに関心が集まり、災害の実態を科学的に解明しようという動きはあまり見られませんでした。
 先日8月8日には同番組が台湾でも放送され、新聞各紙には「外国である日本がここまで徹底的に88水災の原因を究明しようとしているのに、台湾は何をしているのか」という記事や投書が踊りました。

 88水災は、100年に一度と言われる規模の自然災害でした。台湾中が悲しみに包まれた昨年8月のあの雰囲気はもう過去のものとなりましたが、台湾はこれからも長い時間をかけて、多くの課題に向き合わなければならないでしょう。
 私たちも、共に手を携えて協力し合い、見守り続けたいと思います。(華)


小林村の住民だったという61歳の潘さん(右)
たまたま外出中で難を逃れたが、家族も家も失った
潘さんの底抜けに明るく見える笑顔と、
「平埔族は悲しみを表に出さない」という徐さんの言葉が心に残る

8/9の「数字の台湾」では、小林村関係者などの声を交え88水災発生からの一年間を振り返っています。
↓8/9の日付からどうぞ!
 



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1 コメント

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八八水災の復興 (万太郎)
2010-08-12 10:01:16
被害規模が大きかっただけに復興は困難なものがありますね。
南部が元気になれば台湾はもっと成長・繁栄出来る潜在力は有ると思いますよ。
義捐金や支援物資の話も余り出なくなってきました、政府の援助も充分なんでしょうか。
遠く日本から心配しています。
忘れ去られない為に、何か復興イベント・キャンペーンを起こしてはどうでしょうか?
ではまた
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