11月27日に行われる行政院直轄5都市選挙の高雄市長選挙の様子が、混迷を深めてきた。
(5都選挙の与野党公認はこちら国民党・民進党)
与党・国民党の公認、黄昭順・立法委員(上の写真右)、野党・民進党の公認、陳菊・高雄市長(上の写真左)の与野党女性対決となっていたところに、先日9日、民進党の公認争いに敗れた楊秋興・高雄県長(上の写真中)が、離党し無所属で参選する事を正式に発表したのだ。
5都市のうち、現行の直轄市である南部の高雄市は今回、お隣の高雄県を合併する事になっている(関係過去記事)。
高雄市も高雄県も、野党・民進党が「比較的」強い事で知られており、民進党にとっては、合併はこれまで二議席確保していた地方自治体の首長ポストが一つ減るという事にもなる。
(日本では「圧倒的」に強いと思われているフシもあるが、数字上は「比較的」と言った方が適切)
民進党の党内予備選挙となった民意調査では、陳菊・高雄市長(一期目)が平均58.9%と、楊秋興・県長(二期目)の平均41.0%を大きく引き離し、党の公認を獲得している。
2009年の高雄ワールドゲームズ開幕式で挨拶する陳菊・市長
陳菊・市長は中央(当時)からの落下傘で、前回の2006年選挙では国民党候補に僅か0.14ポイント差で競り勝つというきわどい選挙だった。
しかし、その後の市政の評判は悪くなく、1980年代に民主化運動で6年間投獄されたという一定以上の世代には印象深いバックグラウンドに加え、インパクトあるキャラクター(「あたしンち」の母に似ていると言われている)が若者に受け、更には、2009年には台湾で過去最高規模の国際スポーツ大会となったワールドゲームズを成功させ、知名度と人気を不動のものとした。
大手ケーブルテレビ局・TVBSが5月下旬に行った民意調査でも、陳菊・市長は国民党候補の黄昭順・立法委員に対し、62ポイント対26ポイントとダブルスコア以上の差を見せ付けていた。
国民党候補の黄昭順・立法委員(中央)
7月初旬の選挙事務所オープンセレモニーで
「失業問題、経済発展、高雄の問題は全部任せて!」と
国民党側の黄昭順・立法委員は、党内のベテラン議員で、特に退役軍人など国民党のコア支持層の強い支持を受けている。
「鉄の女」と言われるほど実行力に定評があり、選挙区での信頼は厚い一方、県側での知名度は低く、またコワモテタイプであるためか庶民的な人気が高いとは言い難い。
黄・陣営は、「困難な任務である事は承知している」と劣勢を認めつつ、経済政策を中心に支持を広げようとの選挙戦略を展開していた。
そこに降ってわいたのが、楊秋興・高雄県長の無所属参選。この「秋変数」が今、高雄を震撼させている。
8月5日、高雄県内の88水災犠牲者追悼行事に現れた楊秋興・県長
前日4日には非公式ながら離党参選の意向を明言し時の人に
88水災一周年となった8月8日から一夜明けた9日午後2時半、楊秋興・県長は県政府で記者会見を開き、民進党を離党し無所属で11月の高雄市長選挙に出馬すると正式表明した。
楊・県長はその理由として、「党内予備選挙の不公平性」「与野党以外の選択肢の必要性」「高雄のために身を捧げたい」などと説明。今後は中道路線を歩むとして、中国大陸との関係強化など国民党よりの主張も展開していくとしている。
また楊氏は「今後、いかなる政党にも入らない」と、一部にある国民党との結託などを否定、一兵卒で支持者の期待に応えていくと宣言した。
9日午後3時半には民進党本部で蔡英文・主席が記者会見し、「誠に遺憾」と述べた上で、楊・県長の行為は党の規則に背くものだと批判。これで「復縁」の望みはほぼ断たれたものと思われる。
TVBSは7月下旬に、仮に楊秋興・県長が無所属参選した場合の民意調査を実施している。結果は、
陳・市長:62(前回)→43ポイント
黄・議員:26(前回)→16ポイント
楊・県長: →26ポイント
陳菊・市長、黄昭順・立法委員のいずれからも、楊秋興・県長に票が流れている。また落ち込み幅は、なんと国民党の黄・議員の方が大きい。
「民主化運動の闘士」というイメージの強い陳菊・市長に対し、高雄県で約20年間地方政治に携わってきた楊・県長は、地元では党派を超えた支持者を持っている。
台湾第二の都市である高雄市と比べ、農業県である高雄県では、貧農からたたき上げた楊・県長の人気は高い。
民意調査では陳・市長の優勢は変わっていないとは言え、黄・議員と楊・県長の支持を合わせると陳・市長とは互角になる。
楊秋興・県長の参選には様々な要素が複雑に絡み合っており、今後もどんな番狂わせがあるか分からない。
いずれにしても、「秋変数」は、「陳菊のブッチギリで決まり」と思われていた高雄市長選挙に、大きな爆弾を落とした。(華)
2009年に高雄市内で行われた民進党のイベント
謝長廷・元行政院長(中央)と、謝氏に近い管碧玲・立法委員(左)、葉菊蘭・元総統府秘書長(右2)は党公認の陳菊・市長(左2)を支持
陳菊陣営の政策広報官となった陳其邁・元総統府副秘書長(右)の妹(高雄県政府文化局長)と、かつて高雄の実力者であった父は楊秋興側につくと表明している
黄昭順・議員は「自分たちの選挙を戦うだけ」と
高雄県出身の王金平・立法院長(左)は黄・陣営の「総ディレクター」に就任。高雄県における王・院長の影響力は非常に強いが、王氏は応援にあまり積極的でないとも伝えられている。
陳田錨・元高雄市議会議長(右)は、知る人ぞ知る高雄市の実力者。黄・議員の支持を表明したが、「引退しており影響力は未知数」との見方も。
王氏と陳氏の関係も微妙なようで、各党それぞれ、台所事情は色々大変なようだ。
5日、88水災犠牲者追悼大会でお線香を上げる楊秋興・県長
願っているのは、選挙のことか犠牲者の冥福か・・・
楊・県長が仏教や道教に深く傾倒しているというのは自他共に認めるところ。
今回の参選決意にも、高雄県に本拠を置く台湾四大仏教のひとつ「佛光山」創建者の強い勧めがあったと話している。
ちなみに佛光山創建者は国民党の強力な支持者であるが、楊・県長とは信仰に加え土地提供などで結びつきも深い。
地方政治は複雑である。
>そこに降ってわいたのが、楊秋興・高雄県長の無所属参選。
>非公式ながら離党参選の意向を明言し時の人に
>仮に楊秋興・県長が無所属参選した場合
>今回の参選決意にも、高雄県に本拠を置く台湾四大仏教のひとつ
「参戦」?
>楊秋興・県長の参戦には様々な要素が複雑に絡み合っており
ここは「参戦」。
>中国大陸との関係強化など国民党よりの首長も展開していくとしている。
「主張」?
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