俳優の香川照之さん(45)が、歌舞伎界入りを表明した。映画などで活躍中の実力派俳優の突然の転身。決意の裏に何があったのか。
歌舞伎公演への外部俳優の出演は、中村勘三郎さんの舞台に出た笹野高史さんらの例があるが、香川さんの場合、関係者の合意を得て九代目市川中車を襲名する点で異なる。「歌舞伎界の人になる」との強い意志の表れだ。
香川さんは、歌舞伎俳優の市川猿之助さん(71)と元妻で女優の浜木綿子さん(75)の長男。父母の離婚後は母と暮らし、東大卒業後に芸能界入りした。
父とは長く絶縁状態で、歌舞伎とも無縁だったが、「一貫して歌舞伎にあこがれ、父を慕っていた」と松竹幹部。近年父との距離が縮まり、脳梗塞の後遺症で体が不自由な猿之助さんと、今春から同居している。
長男の政明さん(7)が歌舞伎俳優になることを望んでいた香川さん。27日の記者会見で「140年続く猿之助の名があり、その舟に僕が、長男が乗らなくていいのか」と思いを語った。
政明さんが団子になることも発表された。この名は猿之助さんの前名で、政明さんの将来の猿之助襲名への道筋をつけたことを意味する。四代目猿之助を襲名する市川亀治郎さんも「次世代に渡すべく(名前を)預かる」と記者会見で語っている。香川さん自身も襲名して歌舞伎界入りすることで、息子の後ろ盾となる決意を示したのだ。
ある演劇評論家は「築き上げた俳優の実績を犠牲にしても、父の名を息子につなぎ、団子を澤瀉屋(猿之助家の屋号)の後継者に定めた。香川の父への思いの強さが表れた。自分は二の次だったろう」と語る。
歌舞伎評論家の犬丸治さんは「猿之助ら澤瀉屋一門は、歌舞伎史に刺激を与えてきた。新・猿之助と新・中車が手を組み、一門を盛り上げれば、観客の応援を受けられるはず。歌舞伎界の壮大な実験が始まる」と期待を寄せる。来年6月、襲名披露興行が始まる。(文化部・塩崎淳一郎)
(2011年9月29日23時00分
読売新聞)
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