アジア輸出減響く
財務省が20日発表した1月の貿易統計で、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支が1兆4750億円と過去最大の赤字額を記録した。(戸塚光彦)
1月の経常収支が赤字となる見方も広がっている。今後も輸入は高止まりするとみられ、輸出の回復が遅れれば貿易赤字が続く恐れもある。
1月の貿易赤字が膨らんだのは、原子力発電所の停止が長引き、火力発電の燃料となる液化天然ガス(LNG)の輸入が増え続けているからだ。加えて、欧州危機をきっかけとする世界的な景気減速で輸出が低迷していることが響いた。
特に、アジア向けの輸出が前年同月比13・7%減と4か月連続で減り、下落率も2009年10月(15・0%減)以来の大きさとなった。鉄鋼や半導体、プラスチックなどの落ち込みが目立った。欧州の景気後退でアジアから欧州への輸出が停滞し、日本からアジアへの部品や素材などの輸出も減ったとみられる。
アジア向けのうち中国への輸出は20・1%減と大幅に縮小した。中国の春節(旧正月)が前年の2月から1月にずれ、工場などが休みとなって輸出が減ったという特殊要因もある。
1月が大幅な貿易赤字となったことで、財務省が3月8日に発表する1月の経常収支は、リーマン・ショック後の09年1月の赤字額(1327億円)を上回り、過去最大の赤字になる可能性がある。クレディ・スイス証券の白川浩道氏は、1月の経常収支を2500億円程度の赤字と推計する。
経常収支は、モノの取引を示す貿易収支と、企業の海外子会社からの配当などによる所得収支などで構成される。
今後は、世界経済の減速が続いて輸出回復が遅れる恐れがあるうえ、価格が高止まりしている原油やLNGの輸入増も続くとみられる。所得収支の状況によっては、経常収支は小幅黒字で推移する可能性もある。
米大手格付け会社のムーディーズ・インベスターズ・サービスは「輸出の減少を要因とする経常黒字の減少は、日本の信用力にとってマイナスだ」と警告する。
日本国債の信認は、経常収支が黒字で、国債の大半を国内で売りさばけるということに支えられていた。貿易で稼ぎ続ける見通しが立たない中、消費税率引き上げなどで財政再建の歩を進める必要性が一段と高まっている。
(2012年2月21日
読売新聞)
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