9月17日(土)、尾道市農協本所において第34回定期大会を開催し、代議員やオブザーバー、執行部あわせて約100名が参加した。議事では05春闘総括、04年度運動総括、05年度運動方針、05秋期闘争方針を決定。さらに新役員を選任し、新たな年のスタートをきった。
■共闘の強化
総括論議では、執行部より農協革新や農業再建の要求、また、対角線交渉やワッペン着用などの方針が単組の取り組みとして徹底できていない現状を踏まえ、改めて共闘の意義を考え直す必要があることが提起された。さらに、「干渉しない代わりに干渉されたくない」といった組織の殻に閉じこもっていては運動は前進しないとし、労働組合は無論のこと、農協も連合会も、組織の枠を超えて互いの教訓に学びあい、ともに発展する運動を構築しようと、共闘強化を訴えた。
■女性自ら女性の働きやすい職場づくりを
質疑討論では、まず、女性部長を務める品川代議員(三次)が「職場では女性はまだ数が少ない。法的には育児や介護について整備されつつあるが、現状は農協は女性にとっては働きやすい職場とはいえない。このような情勢のもと、女性の問題を解決することや、女性の労組活動への参画を目的として、この4月に女性部を立ち上げた。これまで労連や全国農団労の活動へ積極的に参加してきた。10月1日には女性部の第2回定期大会を開催するが、単組からは現行の役員を引き続き選出していただくことをお願いする」と発言した。
■政治への関心をもとう
下岡代議員(三次)は「新年度でのことだが、三次は連合地協と連携して先の衆議院議員選挙を闘ったが残念な結果に終わった。労連や他単組はどう取り組んだのか」と発言し、萩原委員長は「選挙に関する取り組みは弱いというのが労連の実態だ。この2年間では、労働学校の講師として佐藤前衆議員を招いたり、和田前衆議院と執行部との意見交換を行うなど、政治的な関心を高めるための取り組みを進めてきた。しかし、運動は前進していない。今後の課題だ」と答弁した。
■合併を改革のチャンスに
また、多田代議員(庄原)は来年4月の甲奴郡との合併について「合併対策として庄原、三次、甲奴郡とで北部地区組織検討委員会を組織し取り組みを進めている。今後、合併までに月1回のペースで全国農団労・岡田委員長を招いて学習会を開催し、合併時に提出する農協革新要求づくりに取り組む予定だ」と報告した。
■未加盟対策への支援を
奥田代議員(広島千代田)は今年4月の旧高田郡農協との合併について「労連未加盟労組との組織統一に取り組んでいるが困難が多く実現できていない。労連の力を借りながら引き続き取り組みを進めたい」と、労連や加盟単組への支援を要請した。
■収穫の多かった海外農業視察
小林代議員(尾道市)は、今年2月の全国農団労海外農業視察(欧州)へ参加し学んだことについて報告した。 (報告へリンク「労連ニュース4月号」)
■記念講演 「『命の海を守る』上関原発建設阻止の闘い」
今大会では、「『命の海を守る』上関原発建設阻止の闘い」と題して山口県・祝島漁協山戸貞夫組合長より記念講演を受けた。山戸組合長は、分野は違うものの協同組合の大先輩だ。また、漁協に入る前には、勤めていた会社で労働組合を結成し、全国一般島根地本の役員も務めた労働運動の大先輩でもある。
大会の前日の16日、おりしも中国電力が進めている上関原発のボーリング調査が、自ら届け出た環境保全計画を逸脱していることが明らかになり、山口県は調査の全面中止するよう中電に要請した(祝島漁協の上関反対運動へリンク)。山戸組合長は、「われわれが取り組んだ阻止行動では調査を阻止できなかったが、この不祥事で調査が全面中止となった。廃水を出さないという約束は反故にされた。このため県は『県民との信頼関係を損なった』としており、当分調査はできなくなった。国からも呼び出しがかかっているようだ。建設予定地は屈指の漁場だが調査の影響で漁獲量が減っていた。これで、また魚がとれるようになるだろう」と、金を使った地元の有力者への懐柔工作や、地域の漁民への無配慮、環境保全への意識の低さなど、中国電力の体質を厳しく批判した。
さらに、「祝島は離島で高齢者が多い。事故により放射能漏れがあっても避難することは容易ではない。このことを町にいえば県が対応策を検討するといい、県は国がすると、無責任な回答しか返ってこない」と、島民の安全性に対する不安を述べるとともに、町や県の無責任な姿勢も指摘した。
また、23年間もの長い年月、くじけることなく反対運動を継続できた理由について「毎週島の中で続けている900回のデモは、島民以外の人にアピールするためのものではなく、島民の団結を強化するためのものだ。また、運動は強制せず手弁当での自主的な参加を原則としている。あきらめず、人を裏切らないことを大切にしてきた」と述べた。
さらに、「日本は大変な時代になった。農業や漁業が底辺になっているが、ともに頑張ろう」と、大会の参加者へ呼びかけて講演を締めくくった。
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講演について参加者は次のような感想を述べている。
原発は人の心も奪う
「『原発によって失われるものは自然だけでなく、人の心のほうだ』という言葉が印象的でした」(三原)
生活や生命を脅かす原発
「これまで、記事やその他の文章で状況を知る程度でしたが、分かり易く生の声で説明して頂いた事で、よく理解することができました。23年もの間、反対運動をされて、継続して行動することの意義を痛感しました。原発が建設されるという事は、これまで高速道路ができる為土地を売ったりする様に、お金が手に入るのに、なぜこんなにまで反対されるのかなど、非常に安易な考えでいましたが、生活や生命まで脅かされるという大変大きな問題であるということに気付かされました。これからは、この問題を意識していく事で自分の中でもしっかり勉強していきたいと思います」(庄原)
行動力と団結力に農協も学びたい
「感想として一番最初に思ったことは、農家や漁協の行動力と団結力、とてもすごいなと思いました。組合員一人ひとりのまとまりで原発建設に反対されていることで、海を守り、地域の生活を守っていることが、とても良くわかりました。また、このことは農協にも今必要になっている状況にあります。労組としては、いかに団結を深め、行動に移していくか、真剣に考え、農家組合員のためになる行動をしていかなくてはいけないと思いました」(庄原)
事故にあった時に見捨てられるということが胸に迫った
「まず23年間も反対行動を続けているというということに驚きました。他の国々は原発を止めていっている情勢と聞いているのに、いくら資源に乏しいからといって、日本だけが原発建設に積極的なことに疑問を感じると同時に、何かウラがあるのかとも勘ぐってしまいます。手弁当で反対運動をするといわれましたが、本来は労働組合もこうあるべきなのかもしれないなと思いました。講演の中でいわれたように離島であるということが事故にあった時に見捨てられるということが胸に迫ってきました。これからどうなってくるのかわかりませんが『頑張ったけど駄目だった』ということにならないようにして欲しいし、そのために私たち労働組合も支援していかなければと思いました」(三次)
継続は力なりの見本のような闘い
「まさに継続は力なりの見本のような闘いである。今、権力に迎合する風潮の中で社会的弱者、勤労者に勇気を与えてくれる話(報告)であった」(尾道市)
農協労連として継続的に反原発の活動に取り組んで欲しい
「長期的な闘争を続ける気力と体力には年齢は関係ないとの思いを強く感じました。生活を守る、将来の地域を守る、安全・安心な社会をつくる取り組みには、今後も頑張って欲しいと思います。日本のエネルギー政策の現状を考えてみると、地下資源のない国の今後をどのようにすればいいのか?エネルギーを使う側の相互理解がまだまだ十分ではない。他人事の取り組みでは、今後、第2、第3の祝島で出て来るように思う。農協労連としても、今後も継続的に、この活動に取り組んで欲しいと思います」(福山市)
個々が同じレベルでの考え方を持って努力し継続している事に感心
「団結の大事さや、その方法、個々が同じレベルでの考え方を持って努力し、継続している事に感心した。やはり、継続は意識統一をはかる上でも大切だと改めて考えさせられた」(三原)
先祖より受け継いでいる土地や農産物を守るために反対されるという姿勢に共感
「身近な場所で起こっている出来事にもかかわらず、ほとんど興味を持たずにいましたが、やはり、農業を守るという農協の立場から、環境を守るという観点から、自分たちの問題として考えていかなければならないと思う。実際に原発事故が発生した例もあり、当地では大変なさわぎとなり後々まで影響が及ぶという事態になり、人事ではないと思う。原発ができる分、補償金を払うという形であるが、やはり、『金』に替え難いものがたくさんあると思います。先祖より受け継いでいる土地や農産物を守るために反対されるという姿勢に共感を覚えました」(庄原)