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推理小説読後感その3(ネタバレなし)〜クリスチアナ・ブランド「ジェミニ−・クリケット事件」

2021年08月08日 | ミステリー小説

 「密室大図鑑」で紹介されている作品の中には既読のものもいくつかある。例えばルルーの「黄色い部屋の謎」、カー「三つの棺」「妖魔の森の家」、横溝正史「本陣殺人事件」、高木彬光「刺青殺人事件」など。推理ものが好きな人にはおなじみだ。だが、大方は全く未知の作品である。それらの密室状況を知ると、そんな状況はありえない!と思わせる内容が多い。まるで良質のマジックを見るのと同じ気持ちになる。ただ、マジックではネタばらしはないが、小説の世界では必ず解明される。密室ものの醍醐味はまさにそこにあると思う。

 今回はそうした新たに知った未知の作者の海外作品から一冊。クリスチアナ・ブランドの「ジェミニ−・クリケット事件」。これは短編集「招かれざる客たちのビュッフェ」(創元推理文庫)の中の一編で、有栖川氏によると「密室ものの傑作である」。

    

 建物4階の一室に被害者は椅子に縛り付けられ刺されている。警察が内側からかんぬきがかかった部屋に入った時にはその傷は新しかったにもかかわらず被害者以外誰も人はいなかった、という謎が提示されるが、その解明は見事であった。さらにブランドの作品には、言うならば「怪異」の雰囲気が盛り込まれる特徴があるそうだが、この作品にも不可解な状況が別途加味されている。短編で読み切ってしまうのがもったいないと思わせる作品であった。

  新たに知ったクリスチアナ・ブランド。「招かれざる客たちのビュッフェ」はフルコースの食事をするようにたくさんの短編が構成されている。今のところ読了していないので、それらを食するのが楽しみである。



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