ヒロヒコの "My Treasure Box"

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ジョン・ディクスン・カー「曲がった蝶番」「テニスコートの殺人」読後感

2017年08月07日 | ミステリー小説
 先日購入したカーの作品のうち2冊を読了。読後感をつれづれになるままに。

●「曲がった蝶番」:自分が子どもの頃読んだのが偕成社の「踊る人形の謎(世界科学・探偵小説全集)」だということを後ろの解説を見て思い出した。だがその内容は全く覚えていなかったので、今回本文庫新訳版にて初めて読んだに等しい。自殺のようにしか見えない殺人のトリックについては確かに伏線や手がかりとなる表現が事前に示されているのだが、かなり想像力がないとわからないだろうという気がした。どちらの人物が本物かというサスペンス、自動人形のおぞましさ、そして若干のラブロマンス。ストーリーとしても一気に読ませる面白さが十分にあった。こなれた新訳の効果もあると思う。ただ、現場の状況が、外国の家ということでわかりづらかった。推理小説特有の見取り図があれば助かったのだが(単に想像力が不足しているだけか!)。

●「テニスコートの殺人」:これは完全に初読作品だが、大矢博子氏の解説ではこの作品を「現代的でテンポのいいサスペンス」と表現していて、実は私も全く同じ感想を持った。前半はサスペンス小説である。実際にはやっていない殺人の嫌疑を逃れるため主人公の男女が画策する。二人は愛し合っているし、殺された人物がイヤな奴なので必然的に読者は主人公の立場になって手に汗を握る、そんな流れである。カーってこんな小説も書いていたのか、と思ったのは大矢氏と同じ。そうした行動に出ざるを得ない理由は、犯人と思われる者の現場への足跡がないというテニスコートの密室化があるためだ。後半はその謎の解明に焦点が当たる。作者カーの「読ませる」筆力の高さを改めて知った作品だが、新訳の力も大きいと思う。そして、この作品には推理小説特有の見取り図が載っている。こうした図の有無で購入意欲が沸く私である。(それにしても「四阿」は推理小説でよく見る漢字だが「あずまや」と読ませるのが難しいといつも思う。)