rock_et_nothing

アートやねこ、本に映画に星と花たち、気の赴くままに日々書き連ねていきます。

27年ぶりの銀座ライオン、一杯のビール

2013-03-20 22:09:40 | 旅先から
エル・グレコとフランシス・ベーコンの絵を観たあと、東京にいる友人と待ち合わせた。
彼女と会うのは、5年ぶりか。
銀座の三越の前で落ち合ったのだが、展覧会を観たあとの高揚感と気温が上がってきて冬の様相では汗ばむくらいになっていたので、咽喉がカラカラに渇いていた。
東京の彼女と連れの友人ともども、アルコールはいける口。
それで、一杯のビールを飲みながら話をしようということになり、近くの銀座5丁目にあるライオンに入った。

むかし、とても若かった頃、銀座にある展覧会を見に来たときのことだ。
お目当ての展覧会の絵は、自分の絵画感を大きく方向付けるきっかけとなるくらい、素晴しいものだった。
感動で頭の芯から興奮し、胸は高鳴り、咽喉はカラカラ、なにものも入る余裕が無いほどだった。
一緒に行った年長の画家の人が、何か食べたりしてクールダウンしようと促してくれて、この時始めて銀座にあるライオンにいったのだ。
そこは、レンガか石造りの重厚で天井が高く、夏でもひんやりとしていた。
平日の昼下がりでは、さすがにお客もまばらで、落ち着いた雰囲気。
画家の人は、生ビールとスペアリブがいいだろうと注文する。
田舎の子供のようだった私は、スペアリブすら聞いたことも食べたこともなく、本格的ビヤホールで注がれたキメの細かい泡のビールと共に、絵の感動を胃の腑に収めていった。

今回行ったライオンは、重厚なビヤホールではなく、ドイツ風の木の温もりのあるところ。
飲んだビールは、エビスのスタウト。
サーバーから注がれたスタウトは、雪のように白く滑らかな泡の冠を頂いて、豊潤なアロマを優しく放っていた。
口から咽喉へと泡と共に流れ込む豊かで深い味わいの黒い液体は、咽喉の渇きを癒すと共に友人達との再会に沸く心をそっと落ち着かせてくれる。

いつかまた、銀座のライオンでビールを味わうことがあるだろうか。
素晴しい絵を観たあとに、気の置けない友人達との再会に、心に刻まれる時を共にする一杯のビールを。