rock_et_nothing

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旧市街の延命方法の考察

2012-06-22 16:13:06 | 旅先から
震災後、せっかく近くに来たのだからと、以前お世話になったギャラリーの様子を伺いに、初めてそこに足を向ける。
聞いたうわさでは、蔵を利用したその建物がかなりの損傷を受け、ギャラリーを閉鎖したとあった。
今日は、思い切ってその前を車で通りかかると、修復済みなのか、外観に変化はなく、おそらくそこのオーナーと思われる夫妻が、玄関先を掃除していた。
これで、ひとまず安心。

その街は、奈良時代に国府がおかれた、歴史ある街。
今から30年位前は、小規模ながら、活気ある街であった。
しかし、バブル崩壊後、街の空洞化が進む。
地方では、女性の自動車運転率が飛躍的に高くなり、郊外型店舗が普及すると、道路が狭く、駐車場の確保が難しい旧市街は、商業地として魅力が薄れることになる。
シャッターを下ろした空き店舗が、軒を連ね、寂れる傾向は止まらない。
それでも、どうにか中心地であった面目を取り戻すために、歩道と道路を整備し、街の美観を整えようとしている。
そして、古い街の利点を生かし、時代を感じさせる建物と新しい建物、昔からの商店と今風のショップをうまく共存させる街づくりを目指す姿勢が、そここにうかがえた。

古い街には、入り組んだ細い道と年月を経た味わいのある建物がある。
これは、一朝一夕でできるものではないのだ。
しかも、歩いて1時間もあれば、街を一巡りできるくらいの大きさが、かつての街の広さ。
そのなかに、さまざまな種類の商店などが立ち並び、ところどころに憩えるスペースがあったなら、申し分ない。
この魅力ある財産を、簡単に手放すのはもったいないだろう。

”そぞろ歩き”は、楽しいものだ。
目的地に、自動車でさっと行くだけでは、発見も楽しみもない。
空の下、光や風を感じながら自分の足で歩き、目で見て何かを感じることが、どんなにすばらしいことか。

ひとつの目的でデザインされた大型ショッピングモールは、多少の地域色はつけられていても、画一化されている。
一方、旧市街をベースにした新しい街づくりは、地域密着型であるとともに固有色を打ち出すために観光資源ともなりうる。

30キロ離れれば、同一県でも地域差はかなりある。
今日行った街は、かなり興味深いところ。
街には、古い土蔵や酒蔵なども残り、昭和を感じさせる紳士服テーラー、呉服店、はんこ店、佃煮屋など、長く商いをしているところもあれば、今はやっているものを扱うショップも共存している。
自動車は、旧市街に隣接して設けた旧市街商店共同駐車場でもあれば、便利にそこを訪れることができるだろう。

古くなった、手狭になったという理由で、むやみに街を造成すれば良いわけではない。
既存のものを大切に取り入れながら、新しいものを積み重ねていくべきではないだろうか。
そうなるには、国や県、町などの行政に頼るばかりではなく、そこの地域の住民が、真剣に自分たちの生き方を模索しなければならない。
利益をむさぼり要求ばかりし、責任の擦り付け合いをしていては、最近よく見かけるあれやこれやを批判などできはしない。

”今”ばかりが一番ではない。
過去があって、今があり、その上に未来があるのだから。
古い街をうち捨てては、何の上に今と未来を築いていくのだろう。
今一度振り返って、街の未来を考えてみるのはいかがだろうか。