母は既に飲んで酔っていましたが、
それでも馴染みの店に行きたいというので二人で飲みに行きました。
居酒屋のような小料理屋のような、
お母さんのようなおばあちゃんのようなママが料理を出すお店です。
ママと母はそれなりに付き合いがあるようで、もう病気の事は知っていました。
まったく、どっちが先なんだか。
いやいや家族になんて、家族だからこそ、すぐには話せないものだ。
「孫がね、誕生日プレゼントを持ってきてくれたのよ」
そんなママの自慢から、ママと私は誕生日が同じであることを知り
母は病院に行った日が私の誕生日だったことに気付きました。
その後も二人で話を続けていると
お店の雑音の中で、母が小さな声で言いました。
お母さん、死ぬのかなぁ
顔は少し笑っていましたが、すぐに涙がこぼれました。
死ぬ死なないは置いておいて、
とうとう母からこんな言葉を聞く日が来た事が
槍のように私の胸を貫きました。
死なないよ、
と一度言葉にして
何の根拠もないと思い直し
同じ病気になった私だから言える事があるはずだ
と探して、
後に続けました。
たとえ乳癌だとしても
少なくてもすぐに死ぬ事はない。
とんでもない事を言った自覚はありますが
母は真顔になって軽く頷きました。
手術で全部取れれば大丈夫。
乳癌だけなら、戻りたければ仕事にも戻れるよ。
‥ただ転移が怖いから、しっかり手術してもらおう。
乳癌は進行は遅いけど、転移は早いところが怖い。
だから転移の検査はちゃんとしよう。
転移が早いのに、お母さんは何年も抱えていたのに他に症状が出ていないんだから
何かがおかしい。
検査結果を貰ったら計画を建てよう。
事実でしかありません。
何の脚色もできません。
「死」と向き合っている人にごまかしの言葉は通用しない。
ごまかしたかったのは本人の方で、それが効かないから怯えているのだ。
母の友達の看護婦さんが言うらしいのです。
「やめなよ院長なんか!お姉ちゃん(私)の行った病院に行きなよ!」
母を診てくださっているのは勤め先の病院の院長で、執刀もしてくださるようです。
胸の手術の経験もあります。
病院にはリハビリ科だってあります。
ですが、誤診やら手術の上手い下手やら、設備の少なさやら
そりゃイチイチ私の病院の方がいいに決まっています。
がんセンターとかではないけど大学病院で設備は豊富、
乳腺外科専門の先生に診ていただけるんですから。
でも母が長年放ったらかした胸を診てもらう気になったのは
気心の知れた院長だったからこそ。
いつでもデカイ顔して言いたいこと言えて
誰よりも大先輩で居られる自分の病院でないと
母だって絶対やり切れないはずです。
しかも、母には入院費など出せないし(さすがにイザとなれば私が出しますが)
何より、母の為に先生が撮ってくださったCTの枚数!
前代未聞の量だったそうなんです。。
先生にしてみればきっと他の患者さんと区別があった訳ではなく
実際に必要だったのだろうとは思いますが
これほど念入りにしてくださることはなかなかないと思います。
かかる病院が勤め先なら、休職の相談もしやすいのではないでしょうか。
しかしやり辛い事もたーっくさんあるとは思います。
特に尿の管を入れられるなんて最悪でしょう。
選ぶのは母ですから、お母さんが病院変えたいならいいと話すと
母も思ったようでした。
「くだらない看護婦に指図されるのは嫌だし、ここなら自分に文句言える奴はそう居ない」
たぶんね。
それでも馴染みの店に行きたいというので二人で飲みに行きました。
居酒屋のような小料理屋のような、
お母さんのようなおばあちゃんのようなママが料理を出すお店です。
ママと母はそれなりに付き合いがあるようで、もう病気の事は知っていました。
まったく、どっちが先なんだか。
いやいや家族になんて、家族だからこそ、すぐには話せないものだ。
「孫がね、誕生日プレゼントを持ってきてくれたのよ」
そんなママの自慢から、ママと私は誕生日が同じであることを知り
母は病院に行った日が私の誕生日だったことに気付きました。
その後も二人で話を続けていると
お店の雑音の中で、母が小さな声で言いました。
お母さん、死ぬのかなぁ
顔は少し笑っていましたが、すぐに涙がこぼれました。
死ぬ死なないは置いておいて、
とうとう母からこんな言葉を聞く日が来た事が
槍のように私の胸を貫きました。
死なないよ、
と一度言葉にして
何の根拠もないと思い直し
同じ病気になった私だから言える事があるはずだ
と探して、
後に続けました。
たとえ乳癌だとしても
少なくてもすぐに死ぬ事はない。
とんでもない事を言った自覚はありますが
母は真顔になって軽く頷きました。
手術で全部取れれば大丈夫。
乳癌だけなら、戻りたければ仕事にも戻れるよ。
‥ただ転移が怖いから、しっかり手術してもらおう。
乳癌は進行は遅いけど、転移は早いところが怖い。
だから転移の検査はちゃんとしよう。
転移が早いのに、お母さんは何年も抱えていたのに他に症状が出ていないんだから
何かがおかしい。
検査結果を貰ったら計画を建てよう。
事実でしかありません。
何の脚色もできません。
「死」と向き合っている人にごまかしの言葉は通用しない。
ごまかしたかったのは本人の方で、それが効かないから怯えているのだ。
母の友達の看護婦さんが言うらしいのです。
「やめなよ院長なんか!お姉ちゃん(私)の行った病院に行きなよ!」
母を診てくださっているのは勤め先の病院の院長で、執刀もしてくださるようです。
胸の手術の経験もあります。
病院にはリハビリ科だってあります。
ですが、誤診やら手術の上手い下手やら、設備の少なさやら
そりゃイチイチ私の病院の方がいいに決まっています。
がんセンターとかではないけど大学病院で設備は豊富、
乳腺外科専門の先生に診ていただけるんですから。
でも母が長年放ったらかした胸を診てもらう気になったのは
気心の知れた院長だったからこそ。
いつでもデカイ顔して言いたいこと言えて
誰よりも大先輩で居られる自分の病院でないと
母だって絶対やり切れないはずです。
しかも、母には入院費など出せないし(さすがにイザとなれば私が出しますが)
何より、母の為に先生が撮ってくださったCTの枚数!
前代未聞の量だったそうなんです。。
先生にしてみればきっと他の患者さんと区別があった訳ではなく
実際に必要だったのだろうとは思いますが
これほど念入りにしてくださることはなかなかないと思います。
かかる病院が勤め先なら、休職の相談もしやすいのではないでしょうか。
しかしやり辛い事もたーっくさんあるとは思います。
特に尿の管を入れられるなんて最悪でしょう。
選ぶのは母ですから、お母さんが病院変えたいならいいと話すと
母も思ったようでした。
「くだらない看護婦に指図されるのは嫌だし、ここなら自分に文句言える奴はそう居ない」
たぶんね。