りとるぱいんわーるど

ミュージカル人形劇団“リトルパイン”の脚本の数々です。

“クッキー” ―全5場― 完結編

2011年08月22日 22時30分02秒 | 未発表脚本


      ――――― 第 5 場 ―――――

          音楽流れ、そこへ上手より、元気よく足踏み
          しながら、クッキー登場。歌う。

          “確かめなくちゃ 本当のこと
           僕は信じてるよ 君のこと
           真実は一つ 答えは君だけが知ってる
           悩んだって仕方ない
           彼女に会って 答えを聞かなきゃ!”

          (少ししんみりして。)

          “だけど・・・ちょっと聞くのが怖い・・・”

          (首を振って、気弱を振り切るように。)

          “ううん!!僕は信じてるよ 君のこと!!
           だからちっとも怖くない!
           愚図愚図考えてないで行動するんだ
           僕に出来る時間は今夜だけ!!”

  クッキー「色々考えてるうちに、すっかり遅くなっちゃった・・・。
        けど、いくら考えても、どうして僕がおもちゃ工場にいた
        のか分からない・・・全然・・・。やっぱり、ベティに会って、
        本当のことを聞くしかないんだ・・・!怖くても勇気を持っ
        て、知ることが僕の為なんだ!!(上手方を見て。)
        あ・・・見えてきた・・・!懐かしい赤い屋根のお家だ・・・
        !あの2階の一番端っこの部屋が、僕とベティのお城
        だ・・・!もう少しで会えるんだね・・・。やっぱり嬉しいな
        ・・・。僕一人の力で、ここまで来たんだ・・・。僕の足で
        歩いて、僕の心で考えて・・・ベティの側に・・・!(その
        時、首を傾げて、不審な顔をする。)・・・あれ・・・?
        どうしたんだろう・・・。なんだか体が・・・。(突然、跪く。)
        足が・・・動かない・・・なんで急に・・・?あ・・・もう陽が
        昇るんだ・・・。時間切れだ・・・。僕が愚図愚図してたか
        ら・・・こんな所まで来といて・・・もうこれ以上、君の側
        に行けないなんて・・・(最後の力を振り絞るように。)
        ベティ!!ベティ!!・・・僕はここだよ!!君に会う為
        に、ここまで来たんだ!!ベティ・・・ベティ・・・!!気付
        いておくれよ・・・!!ベティ・・・僕だよ・・・クッキーだよ
        ・・・!!(倒れこむ。)」    ※

          クッキー、フェード・アウト。

  クッキー心の声「あの楽しかった日々は、もう二度と戻らないんだ
            ね・・・。君にとって僕は、大勢のおもちゃたちの
            1つだったかも知れない・・・。だけど、僕にとって
            君は、僕の唯一の友達だったんだよ・・・。」

          舞台明るくなる。と、中央、くまのぬいぐるみ
          (クッキー)が1つ、転がっている。
          一時置いて、下手より1人の少女(ベティ)、
          走りながら登場。何かを探すように、回りを
          キョロキョロ見回す。

  ベティ「(クッキーを認め。)クッキー!!(駆け寄り、クッキーを
      抱き上げる。)夢の中で、誰かに呼ばれたと思ったの!!
      あなただったのね・・・。随分捜したのよ・・・。もう会えない
      かと思ったわ・・・。コンサートの帰りに、あなたをどこかへ
      置き忘れたことに気が付いて・・・。パパやママは“どこへ
      でも持って行くから、こんなことになるんだ、諦めなさい”
      と、言ったけど、私は諦めきれなかった・・・。だって、
      あなたは私の大切なお友達だもの・・・!!本当によかっ
      た・・・!!(クッキーを抱き締め泣く。)」

  クッキー心の声「ありがとう、ベティ・・・君のお陰だよ・・・。」

          クッキー、突然光り出す。

  ベティ「(驚いて、クッキーを見つめる。)・・・クッキー・・・?」

          一時置いて、クッキー元に戻る。

  ベティ「・・・なんだったのかしら、今の・・・。」

          その時、上手より1人の少年、登場。
          ゆっくりベティの側へ。

  少年「・・・その人形・・・好き?」
  ベティ「・・・え?」
  少年「・・・初めまして・・・。(微笑む。)」
  ベティ「・・・誰・・・?」
  少年「僕、ずっと君と友達になりたいと思ってたんだ・・・。」
  ベティ「・・・私のこと・・・知ってるの?」
  少年「うん・・・。昔からね。」
  ベティ「・・・私、あなたのことなんて知らないわ・・・。」
  少年「だって今までは、僕は君に声を掛けることが出来なかった
      んだもの・・・。動くことが出来なかったからね・・・。」
  ベティ「・・・どうして?病気だったの・・・?」
  少年「・・・う・・・ん・・・そんなとこ・・・。そのぬいぐるみ・・・とっても
      大事そうに抱いてるね・・・。」
  ベティ「この子はね・・・パパが私のお誕生日プレゼントに買って
      くれたの。私の一番のお友達よ・・・。どこへ行くのも一緒
      ・・・。私、小さい頃、とても泣き虫だったの・・・。でも、
      クッキーが家に来てからは、メソメソしなくなったわ。だって
      悲しいことがあっても、クッキーがいつも笑顔で聞いてくれ
      たから・・・。もう、中学へ上がるんだから、いい加減クッキー
      は卒業しなさいって、パパやママは言うけど、私は今まで
      ずっと側にいたクッキーと離れるなんて絶対出来ない・・・。」
  少年「・・・ベティ・・・。(呟く。)」
  ベティ「あなた・・・優しい目をしてるのね・・・。なんだか、クッキー
      に似てる・・・。(クスッと笑う。)」
  少年「そ・・・そうかな・・・。僕と・・・友達になってくれる・・・?」
  ベティ「ええ、いいわ!これから家へ来ない?」
  少年「・・・本当に?」
  ベティ「ママが焼いてくれたマフィンがあるの!朝ご飯まだでしょ
      ?」
  少年「・・・うん!」
  ベティ「早くいらっしゃいよ!(下手方へ走りながら。)ママ!!ママ
      !!お客様よ!!」

          ベティ、下手へ走り去る。

  少年「(嬉しそうに呟く。)・・・ベティ・・・君のお陰で、僕の心が人間
      になれたんだよ・・・。」

          少年、下手方へ行きかける。
          いつの間にか、上手より妖精登場し、クッキーの
          様子を嬉しそうに見ている。

  妖精「クッキー!」
  クッキー「(振り返って、妖精を認める。)あ!妖精さん!」
  妖精「よかったわね。」
  少年「はい!・・・僕もどうして心と体がバラバラになったのか
      わからないけど・・・。でも・・・あなたが僕に、一晩の命
      をくれたから!!あなたのお陰です!!・・・それに、
      ベティの優しい思いが、僕を人間にしてくれたんですよ
      ね?」

          そこへ、他のおもちゃ達(ロボット、
          犬のぬいぐるみ、バービィ人形)、
          人間になって上手より登場。

  ロボット「よかったな!」
  バービィ人形「おめでとう!」
  少年「(みんなを認め。)みんな!!一体どうして・・・!?」
  ロボット「(妖精を見て。)彼女はみんなに平等だ・・・ってことさ!
       な!?」
  妖精「ま・・・まぁね・・・。」
  犬のぬいぐるみ「(ボソッと。)本当は、魔法のかけ間違いだ・・・
             って、僕たち口が裂けても言わないワン!」
  バービィ人形「もう!“ワン”はやめてよね!あなたは人間なの
           よ!」
  犬のぬいぐるみ「(頭を掻きながら。)つい癖で・・・ワン・・・。」

          みんな、声を上げて嬉しそうに笑う。
          音楽大きくなり、みんなで歌う。

          “自由だ!!自分で動ける不思議な感じ
           僕らが歩けば風が頬に当たる
           叶わないことに思いを馳せることもないんだ
           だって自分で叶えることができるんだから!
           なんて不思議で楽しくて
           夢見てるみたいだ 
           これから続く自由な未来!

           自由になれた!!今まで味わったことない
           驚くような発見に出会えるかも知れない
           なんて不思議でワクワクする
           やっと手に入れた未来へ続く夢の時!!”



           音楽盛り上がり、其々彼方に思いを馳せ
           見遣る。



           ――――― 幕 ―――――

        



     







    ※ 人形劇では考えられない“長セリフ”・・・^^;
      一杯並ぶ字数に、ビックリでした~(>_<)

 ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪


  それでは、いつものように・・・ここで次回作品のご案内を(^^♪
  次回は、たまたま今回の作品と、同じノートに仕上げを書いて
  いた、少し頭を使う作品・・・と言うか、大好きな“辻褄合わせ”
  を最後に行った作品・・・とでも言いましょうか・・・^^;
  実は、来年の7周年公演作品が、内容は全然違うのですが、
  お話しに対するアプローチの仕方が同じだな・・・と、感じた、
  作品です(^^)・・・こんなお話し・・・好きなんでしょうね~^^;
  


                                 どら。










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