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りとるぱいんわーるど

ミュージカル人形劇団“リトルパイン”の脚本の数々です。

“アル・ロー” ―全16場― 6

2013年03月01日 20時45分29秒 | 未発表脚本

 

  ダンドラ「まぁ、そう驚くな。どうでもいいじゃないか、そんなこと

       。この一座の中にいるのか?写真はどうした?」

  アル「(溜め息を吐いて。)そこまで知られてちゃ、仕方ないな。

     ガキの頃・・・俺達に写真を教えてくれた人を、覚えている

     か?」

  ダンドラ「ああ・・・あの人がいなけりゃ、今の俺達はいなかった

       ・・・」

  アル「おまえも知ってる通り、カメラを捨てて踊り子と一緒になっ

     た人だ・・・」

  ダンドラ「写真を教えてもらってた時は、あの人が有名なカメラ

       マンだなんて思いもしなかったけどな。あの時の騒ぎ

       は今でも覚えている。(不思議そうに。)それと何の関

       係があるのさ・・・」

  アル「その人の娘だ・・・」

  ダンドラ「え?」

  アル「あの人と一緒になった踊り子との間の・・・」

  ダンドラ「本当に・・・?」

  アル「・・・俺が・・・心奪われたのは・・・」

  ダンドラ「アル・・・」

  アル「初めは林の中で楽しそうに踊っている彼女に偶然出会

     ったんだ。そして・・・ただ訳もなく惹かれた・・・その踊りの

     素晴らしさに心を奪われたんだ。後でヨーロッパ中を騒が

     せた名踊り子の娘だと分かって・・・“成程”と納得したよ

     ・・・。それで父親が誰なのかが分かった・・・。この偶然に

     俺は感動してしまったんだ。もう俺は彼女を手放したくな

     い・・・そう思ったよ・・・」

  ダンドラ「(困惑したように。)おまえ・・・愛しているのか・・・?」

  アル「・・・ああ・・・」

  ダンドラ「写真はどうするんだ!!おまえまで、あの人のように

       カメラを捨てるのか!?」

  アル「捨ててもいい・・・と思ったのは事実だ・・・」

  ダンドラ「(心配そうに。)アル・・・俺は反対だ!!おまえが写真

       を捨てるなんて・・・俺には我慢できない!!」

  アル「落ち着けよ!!思ったと言っただけだ。やめるとは言って

     ないぜ。あの人とは違う・・・。俺は彼女を撮り続けたいん

     だ。」

  ダンドラ「(安心したように溜め息を吐く。)なんだ・・・安心したよ

       ・・・。それで・・・?いつまでここにいるつもりだ?撮り続

       けると言ったところで、おまえの生活の場はここではな

       い筈だ。彼女も一緒に連れて行けるのか?」

  アル「え・・・?」

  ダンドラ「おまえ・・・今日が何月何日か分かっているか?個展

       の開催日まで後、どれだけあると思ってるんだ。」

  アル「あ・・・」

  ダンドラ「おまえが決めた展覧会だろ?」

  アル「俺が決めた訳じゃ・・・あの糞親父が・・・」

  ダンドラ「だけど、それにおまえも乗ったんだろ?なら、ちゃんと

       責任は果たせ。それに市長から園遊会の誘いがある

       んだ。」

  アル「(溜め息を吐いて。)・・・そうか・・・いつだ?」

  ダンドラ「今月の終わりさ。」

  アル「おまえも・・・?」

  ダンドラ「ああ・・・声は掛かっているが・・・俺はそんなものに興

       味はないんだ。だが、おまえはそう言う訳にいかないだ

       ろ?」

  アル「糞う・・・誰の差金か一目瞭然だ。」

  ダンドラ「まぁ、そう言うな。有名人故・・・ってことだ。(アルの肩

       に手を掛ける。)兎に角、オフィスに連絡くらい入れて

       やれよ。おまえから電話の1本もなくて、スポンサー親

       父にはせっつかれるわで、レイモン達にはいい迷惑だ

       ぜ。」

  アル「ああ・・・分かってるよ・・・。それで?おまえはいつまでい

     るんだ?」

  ダンドラ「レイモン達におまえを連れて帰ると約束したんだ。お

       まえが帰るまで、一緒にいるつもりだ。」

  アル「そうか・・・。では一先ずこの村唯一の宿屋に戻るとする

     か。」

  ダンドラ「それは有り難い。こんな何もない村に、宿屋があると

       はね。ずっと歩き続けで、足が棒みたいなんだ。(笑う

       。)」

 

         2人、足早に出る。暗転。

 

      ――――― 第 12 場 ―――――

 

         カーテン前。

         下手よりレイモン、フーケ、ロベール、アナベル

         登場。

 

  ロベール「よかったですね!先生から連絡が入って!」

  レイモン「ああ、一安心だよ、本当。」

  フーケ「で、先生はいつ戻って来るんだ?」

  レイモン「来週には帰って来るみたいだ。全く今まで何処ほっつ

       き歩いてたんだか・・・。」

  アナベル「あら、いつものことじゃない。」

  レイモン「まぁ・・・。だけどこれでオットーさんにも連絡が出来る

       よ。」

  フーケ「よかったじゃないか。」

  レイモン「(思い出したように。)あ、ロベール!先生が部屋を

       用意しとけってさ。」

  ロベール「へや・・・ですか・・・?」

  レイモン「ああ。」

  フーケ「誰か連れて来るのかな?」

  レイモン「さぁ・・・」

  ロベール「ひょっとしてあれじゃないですか?ダンドラさんが言

        ってた、先生が夢中になってるとかって娘・・・」

  アナベル「成程・・・有り得るわね・・・。」

  レイモン「誰と一緒でも、俺は先生さえ戻って来てくれれば、そ

       れでいいよ。」

  フーケ「そうそう!」

 

         4人、話しながら上手へ出て行く。

 

      ――――― 第 13 場 ―――――

 

         カーテン開く。と、芝居一座の小屋。

         上手よりミシェル、座員達と談笑

         しながら出る。

 

 

 

  レニエ「じゃあ、あんたもカメラマンなんだ。」

  ミシェル「いやぁ、俺はまだカメラマンと言ったって卵さ。専ら今

       は、先生の助手・・・だけど数年後には個展の一つや

       二つ開いて・・・」

  ルイーゼ「じゃあ、あんたもここへは写真を撮りに来たの?」

  ミシェル「違うよ。俺達はアルさんを連れ戻しに来たんだ。」

  ガロ「連れ戻す・・・?」

  ミシェル「ああ。あの人も、うちの先生と一緒で、結構有名な

       カメラマンなんだぜ。それでもう直ぐ、個展やら市長

       主催の会があるから、それに出席する為に帰らなき

       ゃいけないんだ。長いこと帰ってこないから、アルさ

       んの部下から連れ帰ってくれって頼まれたんだ・・・」

  エレーナ「市長・・・?」

  

  エヴァ「部下・・・?」

  ミシェル「ああ、アルさんの会社の・・・」

  エレーナ「アルの会社・・・?」

  マックス「あの人・・・ひょっとして偉い人・・・?」

  ミシェル「まぁ・・・そうだな・・・うちの先生と同じ位かな。本来な

       らこんなところでのんびり写真撮ってる暇なんかない

       人だろうな。」

  ルイーゼ「じゃあ・・・いくらリリが想いを寄せたって無理じゃな

        い・・・」

  ミシェル「リリ?ああ、アルさんが今、夢中になってるって言う

       ダンサー娘かい?」

  エヴァ「アル・・・帰っちゃうんでしょう・・・?」

  ミシェル「アルさんがどう言う考えか知らないけど、アルさんの

       居場所はここじゃないからな。」

  

       

 

         下手よりリリ、聞いていたように出る。

         

  

  

 

  ガロ「リリ・・・」

 

         座員達、ミシェル、リリを認める。

 

  ミシェル「君がリリ・・・?」

  リリ「今の話し・・・本当ですか・・・?」

  ミシェル「え・・・?ああ・・・」

  ガロ「・・・仕方ないよ・・・アルさんとは住む世界が違い過ぎる

     んだ・・・」

  エレーナ「いつかは別れなきゃいけないのよ・・・」

  エヴァ「そう言えば、ロバンさんがそろそろ次の場所へ向かう

      ・・・って・・・」

  レニエ「本当か?」

  サミー「この村ともおさらばか。」

 

         座員達、ミシェル下手へ出て行く。

         (ガロ、一寸残って。)

 

  ガロ「リリ・・・元気だせよ。」

 

       

         ガロ、リリを気にしながら下手へ出て行く。

         マハル、下手より出、リリの様子を見詰める。

 

  リリ「あなたに会えて・・・あなたを愛して・・・私の世界が変わっ

     たと・・・アル・・・」

 

         リリ、上手へ走り去る。

         マハル、ゆっくり舞台中央へ。

         (音楽、静かに流れる。)

         アル、下手より出る。

 

  アル「マハル!リリを見なかったかい?」

  マハル「(振り返りアルを認める。)・・・部屋じゃない?」

  アル「ありがとう。(思い出したように。)あ・・・もう足は大丈夫

     なのか?」

  マハル「ええ・・・殆ど平気・・・」

  アル「(嬉しそうに。)それはよかった。じゃあ!(手を上げて走

     り出ようとする。)」

  マハル「アル!!」

  アル「(振り返り。)何だい?」

  マハル「・・・リリのこと・・・好き・・・?」

  アル「・・・ああ・・・」

  マハル「(溜め息を吐いて。)そう・・・よかった・・・あの子・・・幸

      せになるわね?」

  アル「マハル・・・幸せにするさ・・・」

  マハル「全く・・・あの子って馬鹿だから・・・(涙声になる。)皆か

      ら食み出し者になってる私のことにも一生懸命で・・・参

      っちゃう・・・。あなたの相手が他の女じゃ許さないけど・・・

      リリなら・・・」

  アル「・・・マハル・・・」

  マハル「早く行ってあげて・・・きっと今頃沈んでると思うわ・・・」

  アル「え・・・?」

  マハル「あなたの友達と一緒に来た人・・・色々あなたのこと言っ

      てたから・・・。」

  アル「ミシェル・・・分かった!直ぐ行ってみるよ!」

 

         アル、走り出て行く。

         マハル、その方を見詰めている。

 

  マハル「・・・さよなら・・・」

 

         音楽でフェード・アウト。

 

      ――――― 第 14 場 ―――――

 

         絵紗前。リリの部屋。

         リリ、沈んだ面持ちでソファーに座って

         いると、ティボー、お茶を持って入って

         来る。

 

  ティボー「(リリの様子に気付いて。)どうされました?お嬢様。

       また何かお辛いことでも・・・?」

  リリ「ティボー・・・どうして私は・・・ただの踊り子なのかしら・・・」

  ティボー「とんでもない!ただの踊り子などではございませんぞ

       。リリお嬢様はマルティーヌ様の血を継いでおいでなの

       ですから。」

  リリ「そうね・・・ありがとう・・・少し一人にして頂戴・・・」

  ティボー「そんな暗いお顔をなさっていると、アル殿にご心配を

       おかけしますぞ。リリお嬢様は、笑顔が一番お似合い

       なのですから・・・。」

 

         ティボー、出て行く。

 

  リリ「・・・母さん・・・(胸元のネックレスをそっと握る。)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

      ――――― “アル・ロー”7へつづく ―――――

 

 

 

 

 

 

    

 

 

 

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“アル・ロー” ―全16場― 5

2013年02月27日 19時11分55秒 | 未発表脚本

  アル「マハルが怪我をして、舞台に立てなくなったんだ。その代

     わりに君が踊るんだよ!!分かるかい?あの素晴らしい

     踊りを、皆の前で踊るんだ!!」

  リリ「・・・私・・・できない・・・」

  アル「え?」

  リリ「・・・私、踊れないわ!!(アルの手を解いて、背を向ける。

    )」

  アル「そんなことないさ!!君は踊れるよ!!必ず!!(リリの

     肩に手を掛ける。)」

  リリ「(首を振る。)踊れない・・・」

  アル「どうして?」

  リリ「(振り向いて、アルを見る。)今まで人前で踊ったことなん

    て、一度もないんです!!習ったことだって・・・。ただ母さん

    の踊りを見よう見真似で踊ってただけで・・・私・・・」

  アル「大丈夫!!君なら絶対に!!」

  リリ「駄目よ・・・踊れない!!」

  アル「(上着の内ポケットから1枚の写真を取り出し、リリに手渡

     す。)・・・見てごらん・・・」

  リリ「(写真を見て驚く。)・・・これは・・・」

  アル「(微笑んで。)君だ・・・。あの雑木林の中で、楽しそうに踊

     っている君を初めて見た時・・・俺は自分の目を疑ったよ

     ・・・この世の中に、こんな素晴らしい踊りを踊る人のいる

     ことに・・・。思わずカメラのシャッターを押し続けたんだ・・・。

     あの時の君は・・・本当に美しかった・・・何よりも・・・誰より

     も輝いていたんだ・・・。」

  リリ「・・・私が・・・?」

  アル「(頷く。)そう、君だ・・・。他の誰でもない・・・リリ・・・君が輝

     いていたんだ・・・。君は他の誰よりも一番美しく・・・素晴ら

     しく踊ることができるんだ・・・!!君の母さんと同じように

     ・・・。」

  リリ「(胸元を見詰め、ネックレスをそっと手に握る。)母さんと・・・

     おなじように・・・」

  アル「・・・君なら踊れる・・・」

  リリ「・・・(ゆっくり頷く。)」

  アル「(思わず、リリの両腕を掴む。)じゃあ出るんだね・・・!」

  リリ「・・・私は・・・小さい時から母さんの踊りはいつも見てきた

    わ・・・。母さんの踊りは・・・子どもの私が見ても、身震いす

    る程素晴らしかった・・・。私もあんな風に踊りたいと・・・思

    っていたの・・・いつも・・・」

  アル「俺は君の母さんの踊りを、実際に見た訳じゃないから、

     何とも言えないが・・・君の踊りに俺は・・・心から感動した

     んだ・・・。」

  リリ「(不思議そうにアルを見詰める。)・・・どうしてそんなに

    熱心に踊ることをすすめるの・・・?」

  アル「(リリの手を取って。)君はもっと自信を持っていいんだ

     ・・・。踊ることによって・・・皆に認めてもらうことによって

     君はもっと輝くことができると信じている・・・。」

  リリ「アル・・・」

 

         見詰め合う2人で、暗転。

         

         

      

 

      ――――― 第 10 場 ―――――

 

         カーテン前。

         座員達、賑やかに歌い踊る。

         音楽のまま、カーテン開く。と、

         一座の舞台の様子。

         客達、騒々しく歓声を上げたり、口笛を

         吹いたりして座っている。

         座員達の歌が終わり、司会をしている

         ルダリ、進み出る。

 

     

  ルダリ「続きましては、当一座のスター、リリ!!」

  客1「リリ・・・?」

  客2「マハルじゃねぇのかよ!!」

  客3「マハルを出せ!!」

 

         客達、口々に不満の声を上げて

         いる。

         下手方から舞台に上がろうとして

         いたリリ、この声に後退りする。

 

  ルダリ「(焦った様子でリリを見て。)リリ!!」

 

         リリの後ろからアル登場し、

         その肩にそっと手を掛ける。

 

  アル「(優しく。)君なら必ず踊れる・・・」

  リリ「・・・アル・・・私・・・」

  アル「俺がついているよ・・・それに君の母さんだって・・・」

 

         アル、そっとリリの背中を押す。

         リリ、ゆっくり舞台中央へ。

         音楽流れる。(リリの踊り。)

         騒いでいた客達、リリの踊りが始まると

         呆然と見詰める。

         リリ、決めのポーズ、客達の歓声、

         拍手喝采の中、アル残してカーテン閉まる。

         嬉しそうなアル。一時置いてカーテン中央

         より、興奮した様子のリリ、飛び出すように

         登場。

 

  リリ「アル!!踊れた・・・踊れたわ!!私!!」

  アル「素晴らしい踊りだったよ。(微笑む。)」

  リリ「・・・あなたのお陰よ・・・あなたがいてくれたから・・・」

  アル「俺は何もしていない・・・君が自分の力で踊ったんだよ。」

  リリ「・・・ありがとう・・・」

 

         2人、嬉しそうに見つめ合い手を取る。

         暗転。

 

      ――――― 第 11 場 ―――――

 

         カーテン開く。(一座の小屋。)

         ロバン、マーゴ、話しながら登場。

 

  ロバン「だけどあいつがあんなに踊りが上手いとはね。」

  マーゴ「本当ね!!初めは失敗するのがオチだと思っていた

      けど、失敗どころか・・・(笑う。)」

  ロバン「全く、マハル以上だぜ、ありゃ!」

  マーゴ「何言ってんのさ!マハルくらいの踊りなら、誰だって

      ちょっと練習すれば踊れるのよ!!」

  ロバン「おまえでも?」

  マーゴ「勿論さ!だけどやっぱり血は争えないもんだねぇ・・・。」

  ロバン「そうだな。最初はジジイ付きで厄介なお荷物だと思って

      いたが・・・」

  マーゴ「左団扇ね!!」

 

         2人、笑いながら出て行く。

         下手より座員達、談笑しながら出る。

         上手より松葉杖を付いたマハル、

         ゆっくり出る。

         座員達、マハルを認め、口を噤む。

 

  エヴァ「いい気なものよねぇ・・・。たいした踊りも踊れないくせ

      に、スター気取りだったんだから。」

  サミー「そうだよな!笑っちまうぜ。」

  マックス「よく考えたら、俺達だってあれくらいの踊りなら、十分

       踊れるんだ。」

  ルダリ「やめろよ!」

 

         座員達、憮然と黙って出て行く。

         ルダリ、マハルの側へ。

 

  ルダリ「マハル・・・歩いて大丈夫なのか?」

  マハル「・・・私のことなんか放っといてよ!!」

  ルダリ「マハル・・・」

  マハル「一人にしてよ!!」

 

         ルダリ、マハルを気にしながら出て行く。

         マハル、足を引き摺りながら、ソファーに

         ゆっくり腰を下ろす。

         そこへ、薬箱を持ったリリ入って来る。

 

  リリ「マハル・・・?」

  マハル「(チラッとリリを見て。)何よ!!(打切棒に。)一人に

      してよ!!」

 

         リリ、マハルの側へ。

 

  マハル「何!?いい気なもんね!!嘸かしいい気分でしょ!!

      今やあなたはこの一座のスターですもんね!!おまけ

      にアルといい感じになっちゃって何なの!?負け犬の

      顔でも拝みに来たの!?」

  リリ「(マハルの傍らへ膝を付く。)さぁ、湿布の交換をしましょう

     ・・・。」

  マハル「(リリの手を払い除ける。)自分でやるわよ、それくらい

       !!他の誰ももう私の面倒なんて見に来やしないわ

       !!なのになんでスターのあんたが、こんなことしに

       来るのよ!!」

  リリ「(落とした湿布を拾い、マハルの手当をしながら。)・・・私

    はスターなんかじゃありません・・・」

  マハル「ふん、よく言うわね!!毎晩舞台に立って、拍手喝采

      浴びておきながら!!」

  リリ「私はただ踊りが好きなだけ・・・スターになりたくて踊って

    いる訳じゃありませんから・・・。マハルさんの怪我が早く

    治って、舞台に立てる時が来たら、私はもう舞台には立ち

    ません・・・。」

  マハル「あんた・・・他の連中がそんなことを許す訳ないじゃな

       い!!現に私なんかよりずっと上手く踊って見せてる

       んだから!!」

         

  リリ「(首を振って。)私は・・・一人の人の為だけに踊りたいん

    です・・・。その人の為だけに・・・」

  マハル「一人の・・・あんた・・・アルに本気で惚れてるの・・・?

       」

  リリ「・・・私を初めて認めてくれた人なんです・・・。ここに来て

    から私は、誰にも認めてもらえず・・・私もそうされようとは

    思ってきませんでした・・・。でも、そんな私を心から励まし

    て・・・力付けてくれた人なんです・・・。」

  マハル「呆然とリリの顔を見る。ハッとして。)馬鹿馬鹿しい!

      !」

  リリ「(嬉しそうに。)そうかも知れません・・・。さぁ、そろそろお

    部屋に戻って休んだほうがいいですわ。・・・立てる・・・?

    (マハルに手を差し出す。)」

  マハル「(その手に一瞬驚くが、ゆっくり手を差し出す。)・・・

      ありがと・・・」

 

         マハル、リリの肩に掴まって、2人

         ゆっくり出る。

         一時置いて、アル、ダンドラ登場。

         少し離れて助手ミシェル、鞄を持って

         2人に続く。

 

  ダンドラ「(ミシェルに向かって。)少し遊んで来ていいぞ。」

  ミシェル「ホントに?じゃあ・・・はい!(鞄を置いて出て行く。)」

  アル「(嬉しそうに。)でも驚いたよ、まさかおまえにここで会え

     るとはね。それで一体、何しに来たんだ?こんなところへ

     。」

  ダンドラ「(ソファーに腰を下ろし。)いやぁ、何、おまえがこの村

       である物に夢中になってるらしい・・・と耳にしたもんで

       ね。その夢中になってる物とやらに、一寸ばかし興味

       があったのさ。(笑う。)」

  アル「・・・ははぁ・・・本当はレイモン達に頼まれたんだな。」

  ダンドラ「バレたか・・・。だが頼まれたから来たんじゃないぜ。」

  アル「で・・・ある物って?」

  ダンドラ「おいおい、それはこっちがじっくり聞かせてもらいたい

       ものだね。全くおまえらしいさ。昔っからおまえは一つ

       のことに夢中になると、それに没頭してしまうところが

       あったからな。(嬉しそうに。)で・・・?どんな娘だんだ

       ?」

  アル「おまえ・・・どうしてそれを・・・?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

     ――――― “アル・ロー”6へつづく ―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪

























“エドワード” ―全12場― 4

2013年02月25日 20時03分46秒 | 未発表脚本


  老婆「それが何かな・・・?今日はもう店じまいして、これから帰
     るところなんじゃ・・・。占いならまた今度・・・」
  エドワード「いえ、占いではなく、少し聞きしたいことが・・・」
  老婆「聞きたいこと・・・?構わんが、手短にな・・・。」
  エドワード「はい・・・」
  老婆「そこのベンチへ腰を下ろしても構わんか・・・?年寄りに立
     ち話しはキツイのでな・・・。」
  エドワード「ええ、勿論!」

         老婆、エドワードに手を借りながら、ゆっくり
         中央ベンチへ腰を下ろす。

  老婆「で・・・?聞きたいこと・・・と言うのはなんじゃ?」
  エドワード「・・・“命の花”・・・と言うのはご存知ですか・・・?」
  老婆「命の花・・・?」
  エドワード「死んだ人間が生き返ると言う、不思議な花のことで
         す。もし知ってたら、詳しく教えて下さい!!そうやっ
         て生き返った人間はどうなるのか・・・!!その人間
         を再び・・・安らかに眠らせる為には・・・どうすればい
         いのか・・・」
  老婆「・・・命の花は、この世の秘薬じゃ・・・」
  エドワード「矢張り、あなたがマークにその花を・・・?」
  老婆「どうやら奴は・・・花を咲かせたようじゃな。」
  エドワード「・・・そうしてローラは再び、我々の前へ戻って来たの
         です・・・。」
  老婆「なら、なんの問題があると言うのじゃ・・・。そなたたちの愛
     しい者が生き返ったのじゃろう・・・?」
  エドワード「見た目は確かに彼女だ・・・けど・・・」
  老婆「命の花で生き返った者は・・・見た目は生きた時そのまま
     に見えるが・・・心は・・・」
  エドワード「・・・心は・・・?」
  老婆「一度死んだその人間は・・・死んだ心を半分持ったまま生
     き返っておる・・・」
  エドワード「・・・死んだ・・・心・・・」
  老婆「生き返らせたことを・・・後悔しているのか・・・?」
  エドワード「・・・後悔・・・と言うのではないのです・・・。実際に生
         きた彼女を目の前にして・・・二度と目にすることが
         出来ないと思った、その笑顔に接すると・・・たとえそ
         れが神に背いて得たものだと分かってなお、心のど
         こかでよかったと・・・そう感じるのですから・・・」
  老婆「たとえ・・・彼女が毒を吐いてもか・・・?」
  エドワード「・・・毒・・・?」
  老婆「早く他の命を差し出せばよいのじゃ・・・。変わりの命を差
     し出せば、彼女の心全部が生きた人間の心となり・・・元へ
     と戻るであろう・・・。」
  エドワード「生きた人間の心・・・でも・・・でも、そんなことは出来
         る訳がない・・・!!たとえ彼女に生きて欲しいと・・・
         そう願ったとしても・・・彼女の変わりに誰か他の者の
         命を差し出すなど・・・それこそ、それを知った彼女は
         どう思うでしょう・・・」
  老婆「おまえは勘違いをしておるようじゃから、一つ忠告してや
     ろう・・・。彼女の変わりに差し出す命・・・その命におまえは
     “自分”・・・と言う選択肢は頭にないようじゃの・・・。」
  エドワード「・・・え・・・?」
  老婆「自分以外の誰かを思い描くから、罪の意識に苛まれるの
     じゃ。彼女の変わりに自分が身代わりになる・・・と考えれ
     ばどうじゃ?彼女の為になる善意の行いととれんかの・・・
     ?」
  エドワード「善意・・・ローラの変わりに・・・この俺が・・・」

         エドワード、呆然と立ち尽くす。

  デビルの声「そうすれば、おまえが子どもの頃から疑問に思って
         いた答えも・・・自然と分かることになるぜ!!(笑う。
         )」

         デビルの笑い声でフェード・アウト。
         (カーテン閉まる。)

    ――――― 第 9 場 ―――――

         カーテン前。音楽流れる。
         下手よりマーク、ゆっくり登場。歌う。

         “たとえ間違いだと
         誰もが否定しても・・・
         たとえそれが人の道に
         逸れることかも知れないとしても・・・
         何度同じことが繰り返されようと
         何度でも僕は愛しい者を守る為・・・
         この心 悪魔に差し出すだろう・・・
         再び同じ世界に立ち
         進むことが出来るなら・・・
         きっとどんな悪にも手を染めるだろう・・・
         その笑顔を見る為ならば
         僕は非情になろう・・・”

         カーテン開く。と、人々が行き交う街の
         様子。
         一時置いて、上手よりナナ登場。
         
  ナナ「(回りを見回しながら。)・・・えっと・・・(マークを認め。)あ
     ・・・!マークお兄さん!(マークに駆け寄る。)」
  マーク「(振り返りナナを認める。)やあ・・・ナナ・・・」
  ナナ「どうしたの?こんなところで・・・。お兄ちゃんと一緒なの?
     昨日、お兄ちゃんから私に何か渡すものがあるって、電話
     があったの!ねぇ、マークお兄さん!渡すものって何だと
     思う?この間、作ってくれた紙飛行機に関係があるんです
     って!何かなぁ・・・でもね、その時のお兄ちゃんの電話の
     声が・・・いつもと違って何だかガラガラしてたのよ。」
  マーク「あ・・・ああ、それはあいつ、風邪気味だったから・・・その
      せいだよ・・・」
  ナナ「そうなの?大丈夫なのかしら・・・」
  マーク「今・・・署内で風邪が流行ってるから・・・」
  ナナ「ふうん・・・それでマークお兄さんも、声がガラガラしてるの
     ね。」
  マーク「え・・・あ・・・ああ、そうなんだ・・・」
  ナナ「風邪、早く良くなるといいわね。(微笑む。)」
  マーク「・・・あ・・・ああ・・・」
  ナナ「(回りを見回して。)それにしても、お兄ちゃん遅いわね・・・
     」
  マーク「・・・そうだ・・・エドから伝言があったんだ・・・。少し約束
      の時間に遅れそうだから・・・暫く僕と時間を潰してて欲し
      い・・・って・・・」
  ナナ「え・・・?」
  マーク「そう言うことだから・・・エドが来るまで僕と待とう・・・」
  ナナ「うん!あ・・・でもマークお兄さん、お風邪をひいてるんでし
     ょ・・・」
  マーク「・・・え・・・?」
  ナナ「こんな外で待ってると、余計お風邪が酷くなるんじゃない
     かしら・・・そうだ!私、いい場所知ってるわ!あそこなら温
     かくて・・・」
  マーク「大丈夫だから・・・!!」
  ナナ「・・・マークお兄さん?」
  マーク「あ・・・いや・・・大丈夫だからここで・・・」
  ナナ「本当に?」
  マーク「ああ・・・」
  ナナ「そう・・・」

         ナナ、下手方に何かを見つけたように
         走り寄る。

  ナナ「あ・・・!見て見て!!マークお兄さん!!こんな街の真
     ん中にほら・・・こんな可愛い小さなお花が・・・(夢中になっ
     て、見つけたものを見ている。)綺麗ねぇ・・・」
  マーク「・・・僕は・・・」

         音楽流れ、マーク歌う。
         (後方、雑踏の中にデビルの姿が現れる。)

         “たとえ間違いだと
         誰もが否定しても・・・”

         デビル歌う。

         “誰も否定などしないさ・・・”

         マーク歌う。

         “たとえそれが人々の道に
         逸れることかも知れないとしても・・・”

         デビル歌う。

         “誰も気付きはしない・・・”

         マーク歌う。

         “何度同じことが繰り返されようと
         何度でも僕は愛しい者を守る為
         この心 悪魔に差し出すだろう・・・”

         デビル歌う。

         “確かに受け取ってやろう
         闇に取り憑かれたその心
         悪に塗れた極上の味・・・
         さぁその手を染めるがいい!!
         赤く深い血の色に!!”

         その時、車の走り近付く音。

  マーク「悪魔よ!!今、受け取るがいい!!愛しい者の代わり
      となるこの命を!!(ナナの背中を両手で押す。)」
  ナナ「キャアッ!!(前に倒れる。)」

         車の急ブレーキの音。(“キキーッ!!”)
     
  エドの声「ナナ!!」

         下手よりエドワード飛び出し、銃を構える。
         客席方へ発射する。(“パーン!!”)
         人々の叫び声。車のスリップ音、何かに
         ぶつかる音。
         一瞬の静寂が辺りを包む。

  ナナ「お兄ちゃん!!(エドワードに走り寄り、抱き縋り泣く。)」
  エドワード「(ナナを抱き寄せる。)大丈夫だ、ナナ・・・(マークを
         見据える。)」

         呆然と立ち尽くすマーク、スポットに
         浮かび上がる。

    ――――― 第 10 場 ―――――

  マーク「(両手を見る。)・・・僕は・・・」

         下手スポットに、胡座をかいたデビル
         浮かび上がる。

  デビル「情けない奴だ・・・」
  マーク「僕はなんてことをしたんだ・・・」
  デビル「愛しい者の為に、その手を悪に染めることも出来ず・・・
      」
  マーク「いくら・・・彼女の為だとしても・・・」
  デビル「馬鹿な奴め・・・」
  マーク「大馬鹿野郎だ・・・」
  デビル「せっかく手に入れたチャンスをものにも出来ず・・・」
  マーク「あんな花を手に入れた・・・」
  デビル「花は終わりだ、もう時間がない・・・」
  マーク「3日のうちに・・・なんて無理だ・・・」
  デビル「何日あろうが、おまえには出来っこない・・・」
  マーク「誰かを・・・」
  デビル「愚かな奴め・・・愚かな奴め・・・(木霊する。)」

         デビル、フェード・アウト。

  マーク「僕は・・・(頭を抱える。)」

         フェード・インする。(カーテン前。)
         上手よりエドワード、走り登場。
         マークを認め駆け寄る。
    
  エドワード「馬鹿野郎!!(思わずマークを殴りつける。)」
  マーク「(倒れる。)・・・僕は・・・(項垂れる。)」
  エドワード「おまえは、もう少しで取り返しのつかないことをする
         ところだったんだぞ!!ナナを・・・ナナをその手にか
         けようとしたんだ!!」
  マーク「エド・・・すまない・・・どうしてもローラを・・・二度とローラ
      を失いたくなかったんだ・・・だから・・・」
  エドワード「世の中・・・謝って全てかたがつくなら・・・俺達の仕
         事はなりたたない・・・だが・・・何故・・・ローラなんだ
         ・・・何故彼女は死んだ・・・そして何故再び俺達の目
         の前に戻ったんだ・・・何故・・・命の花なんてものを
         使って・・・おまえは・・・」
  マーク「・・・愛しいローラが・・・再び目を開いて・・・この僕を見て
      くれるなら・・・僕はなんだってする・・・そう思ったんだ・・・
      命の花を咲かせることで、再び彼女がこの世に舞い降り
      ることができるのなら・・・たとえその代償がなんであろう
      と・・・僕は・・・」
  エドワード「・・・ナナの命と交換するつもりだったのか・・・ローラ
         が自分の命と引き換えにしてまで守った、ナナの命
         と・・・」
  マーク「(ゆっくり頷く。)」
  エドワード「・・・そんなにまで・・・どんな形であっても、ローラを再
         び蘇らせたいと・・・そんな風に考えたのならば・・・そ
         れならば俺を殺せ!!」
  マーク「・・・エド・・・」
  エドワード「俺が死んでローラが助かるのなら、いくらだってくれ
         てやる、こんな命!!それで生きた人間の心を取り
         戻し、以前の・・・俺達の知った美しいローラに戻るな
         ら、俺は自分自身の命を今直ぐ差し出してやる!!
         」

         怪し気な音楽流れエドワード、スポット
         に浮かび上がる。
         デビルの笑い声が響き渡る。

  デビルの声「ならば連れて行ってやろう!!おまえがずっと知り
          たがっていた死の国へ!!」

  エドワード「・・・え・・・?」

    ――――― 第 11 場 ―――――

         カーテン開く。と、黒一色の闇の世界。
         中央、設えられた段上にデビル、マントを
         靡かせ立つ。歌う。

         “今行こう
         おまえが知りたがった
         死の国へ・・・
         あれ程興味をそそられた
         現世で見つけた俺の姿・・・
         今こそ行ける
         願いが叶うその時だ”

         デビル、エドワードの側へ。エドワード、
         デビルを認める。

  エドワード「誰だ・・・!」
  デビル「・・・この俺が見えるようだな・・・(ニヤリと微笑む。)」
  エドワード「・・・おまえは・・・確か・・・」

         後方、シルエットに幼いエドワード、
         横に立つデビル、浮かび上がる。

  エドワード(シルエット)「死んだらどうなるの・・・あなたは知って
                 いるの?」
  デビル(シルエット)「知りたいか・・・?」
  エドワード(シルエット)「うん・・・」
  デビル(シルエット)「おまえが自分で確かめればいいんだ・・・」
  エドワード(シルエット)「・・・どうやって・・・?」
  デビル(シルエット)「・・・死んで・・・死んで・・・(木霊する。)」

         後方シルエット、フェード・アウト。

  エドワード「あの時の・・・」
  デビル「そう!!俺は死への使い、デビルだ!!」
  エドワード「・・・デビル・・・?」
       









      ――――― “エドワード”5へつづく ―――――













 ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪



    (どら余談^^;)

    書き終わったので、全12場となりました(^_^)
    どこからが、現在の私文章か分かりますか・・・?
    差がつかないように書き繋げたつもりなのですが・・・
    上手く繋がっているでしょうか?(^_^;)




    2月24日(日)

    明日は新作の録音です(^O^)
    初めて歌練習をして挑む録音・・・いつも以上に
    いい録音ができますように・・・(>_<)


    2月25日(月)

    新作録音、無事終了しました(^O^)
    とってもメンバーの状態が良く、今までとは比べ物に
    ならない、いい録音日となりました(^_^)V
    皆、頑張った録音の出来を、是非8月12日、メイシアター
    にご覧になりにいらして下さいm(_ _)m

































“アル・ロー” ―全16場― 4

2013年02月24日 19時06分13秒 | 未発表脚本

        その時、遠くからリリを呼ぶ声がする。

 

  リリ「(そっと涙を拭う素振りをして。)行かなくちゃ。ティボー!

    舞台の片付けなら後で私がするから、無理しちゃ駄目よ!」

 

         リリ、下手へ駆けて行く。

         アル、ティボーの側へ。

 

  アル「彼女はあなたには心を開くんですね・・・」

  ティボー「(振り返り、アルを認める。)アル殿・・・」

  アル「あなたの前だと、あのキラキラした笑顔を惜しみなく振り

     撒いている・・・。羨ましいですよ。」

  ティボー「リリお嬢様は、私が心からお仕えしていた方の一人

       娘でいらっしゃいますから・・・。」

  アル「その・・・あなたが仕えていた方と言うのは・・・?」

  ティボー「はい・・・昔はちょっとは名の知れた踊り子で、マルテ

       ィーヌ様とおっしゃいました・・・」

  アル「マルティーヌ・・・どこかで聞いたことがある・・・」

  ティボー「え・・・?」

  アル「(暫く考えて。)そうだ!!ずっと以前、私の師と仰ぐ人が

     、ヨーロッパ中を騒がせる程の名踊り子に夢中になって、

     写真を捨ててまでその踊り子と一緒になったのです・・・。

     その踊り子の名がマルティーヌ・・・」

  ティボー「マルティーヌ様をご存知で・・・?」

  アル「写真で見たことが・・・もしかしてリリの父親と言うのは・・・

     ?」

  ティボー「はい・・・有名な写真家のお方でした。アル殿のお知り

       合いの方で?」

  アル「小さい時に・・・私に写真を教えてくれた人物です・・・。まだ

     年端もいかない私に・・・熱心に、写真を撮るは何たるかを

     教えてくれた・・・。あの人がいなければ、今の私は有り得な

     と言っても過言ではありません。リリがその人の・・・」

  ティボー「だがお父上の方は、リリお嬢様がお生まれになって直

       ぐ・・・お亡くなりになられました・・・」

  アル「・・・ええ・・・亡くなったことは聞いています・・・」

  ティボー「その後、暫くしてマルティーヌ様もお亡くなりになり・・・

       身寄りのなくなったリリお嬢様を連れて、この年寄りが

       出来ることと言えば・・・雨露の凌げる環境を見つけて

       差し上げることくらいしか出来ず・・・今まで来たと言う

       訳で御座います・・・。」

  アル「そうでしたか・・・両親が生きていれば・・・きっとリリも今頃

     は、屹度どこかで踊り子のスターになっていたに違いない

     ・・・」  

  ティボー「勿論で御座います!」           

  アル「リリの踊りは母親譲りだったのですね。」

  ティボー「はい!!・・・え?リリお嬢様の踊りをご覧になったん

       で御座いますか・・・?」

  アル「初めてこの村に着いた時に、森の中で楽しそうに踊って

     いたリリを見かけたのです。私はもう一度あの踊りが見た

     くて・・・それでこの一座に押しかけたと言う訳です・・・」

  ティボー「そうでしたか・・・。リリお嬢様はマハルさんよりずっと

       上手くお踊りになられるのに・・・ここでは丸で使用人の

       ような扱いで・・・私が不甲斐ないばかりに・・・(思わず

       涙ぐむ。)」

 

 

         ティボー、下手へ出て行く。

         アル、その方を見ている。

         その時、俄に上手方が騒がしくなる。

         アル、振り返ると、ルダリ、ガロに

         抱かえられてマハル出る。

         後ろから、他の仲間達続く。

 

  ルダリ「(慌てた様子で。)おい、誰がマーゴさんを呼んで来い

      !!」

 

         リー、それを聞いて駆けて行く。

         ルダリ、ガロ、マハルをソファーに

         掛けさせる。

         他の者達、マハルに近寄り、口々に

         心配そうに声を掛けるが、マハルは

         痛みを訴える声を上げている。

         アル、驚いて駆け寄る。

 

  アル「どうしたんだ、一体!!」

  マハル「アル!!(アルの手を握る。)」

  ルダリ「(打切棒に。)関係ないだろ!!」

  ガロ「ルダリ!!そんな言い方ないだろ!!俺達、よく分から

     ないんだけど、踊りの練習中に足を挫いたようなんです。」

  マハル「アル!!痛いわ!!アル!!」

  アル「大丈夫かい?」

 

         そこへマーゴ、駆け込んで来る。

         リー続く。

 

  マーゴ「(慌てて。)マハルが怪我したって!?何処!?」

  ルイーゼ「あ!!マーゴさん、早く!!」

  エレーナ「足、挫いたみたいで!!」

 

         マーゴ、マハルの傍らへ膝をついて、

         足を見る。(他の者、心配そうに覗き込む。)

 

  マーゴ「(暫く見て。)大丈夫!ただの捻挫よ。どってことないわ

      。」

  マハル「こんなに痛いのに、どってことないはないでしょ!!」

  マーゴ「自分でやったんでしょ?少しくらい我慢しなさい!誰か

      湿布しといてやって!」

  サミー「OK!(一旦、薬箱を取りに出て行く。)」

  マーゴ「たいしたことはないけど、舞台は当分無理ね・・・。困っ

      たねぇ・・・」

 

         サミー、薬箱を持って入って来る。

         (マハルの足首の手当をする。)

         そこへロバン、入って来る。

 

  ロバン「(驚いた様子で。)マハルが怪我したって!?」

  マーゴ「あ、あんた。ただの捻挫だけどね。」

  ロバン「舞台は?」

  マーゴ「駄目ね、当分・・・」

  ロバン「畜生・・・!他に踊れる奴はいねぇし・・・なんてこった!

      マハル!おまえは一座のスターだって自覚がねぇんじゃ

      ないか!!舞台に穴開けられないのは、おまえもよく知

      ってるだろ!!」

  マハル「・・・ごめんなさい・・・」

  ロバン「レニエの歌だけじゃ話しにならねぇ。金も貰えないぜ・・・

      。」

  マーゴ「困ったねぇ・・・」

  ロバン「(マハルに。)手当が済んだら奥で休んでろ!!(怒っ

      たように。)」

 

         マハル、仲間に抱かえられ出て行く。

         他の者達、それに続く。

         ロバン、マーゴ、出て行こうとするのを

         認めたアル、慌てて声をかける。

 

  アル「あの!!」

  ロバン「(不機嫌そうに振り返って。)あ!?何だ。」

  アル「あの・・・リリに踊らせて下さい!!」

 

         ロバン、マーゴ、一時置いて顔を見合わせ、

         大笑いする。

 

  ロバン「・・・リリだと・・・?何、寝惚けたこと言ってんだ!あいつ

      に舞台が勤まる訳ねぇだろ!!」

  アル「いや・・・僕は見たんです!!彼女が素晴らしい踊りを踊

     るところを!!彼女ならマハルの代わりに必ず、舞台を勤

     めることができますよ!!だから彼女に是非・・・」

  ロバン「駄目だ、駄目だ!!冗談はそのくらいにしといてくれ!

      ちゃんと出来る保証もないのに、あいつを出す訳にはい

      かねぇ!!」

  アル「どうして彼女の踊りを見たこともないのに、そんなことが

     言えるんです!!」

  ロバン「煩い煩い!!どうしてもこうしても、あいつは踊りなん

      て踊れねぇに決まってる!!放っといてくれ!!」

  アル「リリを舞台に立たせて下さい!!」

  ロバン「駄目だ!!」

  マーゴ「(口を挟むように。)待って!!でも・・・あの子の母親

      って、昔は名の通った名踊り子だったんでしょう?ひょ

      っとして、その血を引いてたらリリも少しくらい踊れたっ

      て不思議はないわよね。」

  ロバン「何言ってんだ!!」

  マーゴ「舞台に穴を開けることも出来ないし・・・出してみたら

      ・・・?」

  ロバン「おまえ、それで失敗したら・・・」

  マーゴ「失敗したら・・・(アルの方を向いて。)あなたが責任取

      ってくれるんでしょう?(ニヤリと笑う。)」

  アル「・・・分かりました・・・マハルが休んでいる間の稼ぎ分は、

     私が出しましょう・・・。それでリリを舞台に立たせてもらえ

     ますね?」

  マーゴ「いいわ。今夜から早速よ!」

  アル「ありがとう!!(嬉しそうに走り去る。)」

 

         ロバン、マーゴ残してカーテン閉まる。

 

  ロバン「いいのか?リリなんか出しても。舞台に穴どころか傷

      がつかなきゃいいがな。」

  マーゴ「平気よ!もしリリがそんなことになったら、あの男に

      リリを買い取ってもらうだけよ!(顎でアルが出て行っ

      た方を指す。)」

  ロバン「え・・・?」

  マーゴ「あの男、金持ちみたいだし、リリのこともお気に入りの

      ようだから、高く買ってもらうわ!」

  ロバン「おいおい、それじゃあ丸で失敗してもらうのが狙いの

      ようだぜ。」

  マーゴ「あら、そう?私は一座が大事なだけよ。」

 

         2人、笑いながら出て行く。

         音楽で暗転。

 

      ――――― 第 9 場 ―――――

 

         絵紗前。(リリの部屋。)

         リリ、窓の外を眺めている。

         その時、扉をノックする音。

 

  リリ「(その音に慌てて。)ごめんなさい!!今、行きます!!」

  アル「(扉を開けて、入って来る。)俺だよ!」

 

         リリ、驚いた様子で立ち尽くす。

         アル、嬉しそうにリリに駆け寄る。

 

  アル「(リリの手を取り。)リリ、舞台に立つんだ!!今夜から!

     !」

  リリ「え・・・?」

  

 

         

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

     ――――― “アル・ロー”5へつづく ―――――

 

 



















“アル・ロー” ―全16場― 3

2013年02月22日 20時01分09秒 | 未発表脚本

      ――――― 第 7 場 ―――――

 

         絵紗前。(アルのオフィス。)

         フーケ、ロベール、デスクで仕事をしている。

         レイモン、急いで入って来る。

 

  レイモン「(デスクの上に、持っていた書類を置く。)ロベール!

       先生から連絡は?」

  ロベール「(立ち上がって。)いいえ、今週に入ってからはまだ

        一度もないですよ。」

  レイモン「可笑しいなぁ。今まで作品撮りの放浪の旅に出ても、

       連絡だけは毎日忘れずに入ってたのに・・・」

  フーケ「本当だな・・・。」

 

         そこへアナベル、入って来る。

 

  アナベル「レイモン!市長とオットーさんがお見えになっている

        んだけど・・・!(困ったように。)」

  レイモン「え?本当か?何だって・・・?}

  アナベル「先生に会いたいって・・・」

  レイモン「・・・仕方ない・・・俺が会うから入ってもらってくれ・・・」

  アナベル「はい。」

 

         アナベル、一旦退場。レイモン、フーケ、

         ロベール、緊張した面持ちでデスクの前

         へ進み出る。

 

  フーケ「なんだろう・・・」

  レイモン「(服を整えながら。)さぁ・・・。だが、先生がいないん

       じゃ仕方ないし・・・かと言って会わずに帰ってもらうの

       も失礼だし・・・」

  ロベール「一言連絡してから来てくれたらいいのに・・・」

  レイモン「しっ!!」

  ロベール「(舌を出す。)」

 

         その時、市長、オットー、アナベルに案内

         されて入って来る。

 

  レイモン「ようこそおいで下さいました。(手を出して、市長達に

       近寄る。)」

  オットー「いやあ、レイモン君。悪いね、急に押し掛けたりして。

       (レイモンと握手する。)」

 

         レイモン、続いて市長と握手する。

         アナベル、礼をして退場する。

 

  レイモン「いえ、今日はまた何か?」

  オットー「アルはもう戻っているかね?」

  レイモン「それがまだ・・・」

  市長「まだ帰って来てないのか?」

  レイモン「はい・・・申し訳ありません。」

  オットー「実はこの月末に市長主催の園遊会を催すことになっ

       たのだが、その席に是非アルを・・・と言われるのだ。」

  レイモン「それは光栄です。」

  市長「アルとは連絡が取れるかね?」

  レイモン「それが・・・今週に入ってから、まだ一度も・・・」

  オットー「何、連絡が取れないのか?」

  レイモン「すみません・・・。」

  オットー「一体今度の彼の夢中の元は何だ。居場所くらいは分

       かるんだろうな?」

  レイモン「はぁ、大体のところは・・・」

  オットー「それならば園遊会に間に合うように、アルを連れ戻し

       て来るんだ。」

  市長「いや、何、アルが無理だとすれば仕方ない。他の者を当

     ることにするよ。アルには園遊会より素晴らしい作品を撮

     ってもらうことの方が大事だ。(笑う。)」

  レイモン「・・・本当に申し訳ありません・・・。」

  市長「では、私はこれで失礼するよ。(先に出口へ向かう。)」

  オットー「(レイモンの方へ近寄って。)兎に角、アルを連れ戻し

       て来るんだ!!」

  レイモン「はい・・・努力します・・・。」

  オットー「頼んだぞ!(足早に市長を追って、出て行く。)」

  レイモン「(オットーが出て行くのを見計らって。)参ったなぁ・・・」

  フーケ「どうする?」

 

         レイモン、横にあるソファーに腰を下ろす。

 

  レイモン「どうするもこうするも・・・また余計な仕事が増えちま

       った・・・。」

  フーケ「余計な仕事・・・?」

  レイモン「ああ、先生を連れ帰るって仕事さ。」

  フーケ「成程。」

  レイモン「何、感心してんだよ!俺達は今、次の個展の準備で、

       非常に忙しいんだ!!」

  ロベール「特にレイモンさんは先生の変わりを一手に引き受け

        てますもんね。」

  レイモン「オットーさんにああは言ったが・・・居所さえ定かでは

       ないのに・・・。頭が痛くなってきた・・・。今日こそは連

       絡が入ることを祈るよ・・・。」

 

         アナベル、入って来る。

 

  アナベル「レイモン!ダンドラさんと助手のミシェルさんが来ら

        れてるんだけど・・・。」

  レイモン「え・・・?何しに来たんだ、あいつら・・・」

  アナベル「どうする?帰って頂く?」

  レイモン「いや・・・いい、会おう。どこにいる?」

  アナベル「廊下でお待ちよ。」

  レイモン「分かった。」

 

         レイモン、フーケ、ロベール残して

         カーテン閉まる。

         上手よりダンドラ、ミシェル登場。

 

  レイモン「お待たせしました。何か御用ですか?」

  ダンドラ「いや、たいした用事ではないのだが・・・アルはいるか

       い?」

  レイモン「いえ・・・先生は今、作品撮りの旅に出ています。先生

       に何か・・・?」

  

  ミシェル「(ダンドラに向かって。)ね!先生、本当みたいでしょう

       ?(嬉しそうに。)」

  ダンドラ「そうか・・・あの噂は本当かも知れないな・・・」

  フーケ「あの・・・噂って・・・」

  ダンドラ「アルの奴が、田舎町で芝居一座の娘に夢中になって

       るって話しさ・・・」

  レイモン、フーケ、ロベール「声を揃えて。)えーっ!!」

  ダンドラ「アルから連絡はあるのか?」

  レイモン、フーケ、ロベール「(3人揃って首を振る。)」

  ダンドラ「矢っ張りな・・・。仕方ないなぁ・・・あいつは昔から、一

       つのことに夢中になると、他のものは見えなくなるんだ

       。」

  レイモン「あの・・・ダンドラさんは、うちの先生とはライバル・・・

       ですよね・・・?」

  ミシェル「決まってるだろ!」

  レイモン「いや・・・なんかダンドラさんって、うちの先生のこと・・・

       やけに詳しいようだから・・・」

  

  ダンドラ「ライバル・・・と同時に親友さ・・・(含み笑いする。)」

  レイモン、フーケ、ロベール、ミシェル「(声を揃えて。)えーっ!

                         !」

  ダンドラ「(ミシェルに向かって。)おまえまで何、一緒になって

       驚いてるんだよ!」

  ミシェル「だって、俺だって今まで知らなかったですよ!!」

  フーケ「もう長いんですか?」

  ダンドラ「ああ・・・餓鬼の頃は家が隣同士だったからな・・・」

  ロベール「じゃあ幼馴染なんだ!」

  ダンドラ「そう言うことになるかな。」

  レイモン「全く知りませんでしたよ・・・」

  フーケ「うん・・・単に仲の悪い、ライバル同士かと思ってた・・・」

  ダンドラ「(笑って。)別に言い触らす話しでもないから・・・。それ

       よりアルの奴、放って置くのか?次の個展も決まってる

       んだろ?」

  レイモン「そうなんですよ・・・。おまけに市長から園遊会の誘い

       もあって・・・」

  ミシェル「へぇ。うちの先生も出席するんだぜ!」

  ダンドラ「まだ出るとは言ってないだろ!」

  ミシェル「えー・・・」

  レイモン「スポンサーのオットーさんから、先生を連れ戻すよう

       に言われてるんです。」

  フーケ「先生の居場所も定かでないのにですよ。」

  ダンドラ「それなら大丈夫だ。」

  レイモン「え?」

  ミシェル「俺の田舎にいるんだぜ。」

  フーケ「本当に?」

  ミシェル「田舎の友達が手紙で教えてくれたんだ。雑誌で見た

       アル先生の顔を覚えてたらしくて・・・。さっきの噂もそ

       いつから仕入れたんだ。」

  ロベール「(レイモンの向かって。)一先ず良かったですね、先

        生の居場所が分かって。」

  レイモン「まぁな・・・。ダンドラさん、助かりました。ところで・・・

       誰が先生を連れ戻しに行くかだが・・・(困ったように、

       フーケ、ロベールの顔を見る。)」

  ダンドラ「俺が行こうか?」

  レイモン「・・・え?」

  ミシェル「先生!!冗談でしょ!?」

  ダンドラ「いいや。あいつが何に夢中になっているのか、興味

       があるからさ。(嬉しそうに。)」

  レイモン「でも・・・」

  ダンドラ「心配するなって。必ず連れて戻って来てやるから。」

 

         フェード・アウト。

 

      ――――― 第 8 場 ―――――

 

         カーテン開く。

         芝居小屋の舞台裏。

         下手よりアル、カメラを片手に登場。

         物珍しそうに回りを見回して、ゆっくり

         上手方へ。

 

  アル「へぇ・・・ここが彼らの生活スペースか・・・」

 

         その時、上手より慌てた様子のリリ、

         走り登場。

 

  リリ「ティボー!!」

  アル「(リリを認め、嬉しそうに。)やぁ。何をそんなに慌てている

     んだい?」

 

         リリ、アルがいることに気付いて、一瞬

         驚いて立ち止まる。

         ゆっくりと、アルの横を通り下手方へ。

         通り過ぎると、再び“ティボー”の名を

         呼びながら駆けて行く。

         アル、その様子を振り返って見詰める。

         下手よりティボー、登場。

 

  リリ「(ティボーを認め、嬉しそうに駆け寄る。)ティボー!!見て

    頂戴!!」

  ティボー「(驚いて。)どうされました?お嬢様!」

  リリ「母さんの形見箱の中から、ほら・・・(手に握っていた物を

    ティボーに見せる。)」

  ティボー「それは・・・」

  リリ「そう!!母さんがいつも舞台で身に付けていたもの・・・

    いくら探しても見つからなかったから、もう諦めていたのに

    ・・・嬉しい!!」

 

         アル、端で2人の様子を見ている。

         リリ、その手に持っていたネックレスを

         着ける。 

 

  リリ「見て!!・・・似合う・・・?」

  ティボー「はい!!それはもう・・・。お嬢様はマルティーヌ様と

       瓜二つでございますから・・・(思わず涙ぐむ。)」

  リリ「ティボー、泣かないで。私まで悲しくなってしまう・・・(ティ

    ボーにそっと手を添える。)」

  ティボー「申し訳ありません・・・(涙を拭う。)」

  リリ「(胸元をネックレスをそっと手で包んで。)母さんが側に

    いる・・・これからはいつも側にいてくれるのね・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

     ――――― “アル・ロー”4へつづく ―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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