「『孫子』を読む」
「『孫子』を読む」 浅野裕一 講談社現代新書
人間心理の奥底を見つめ、
「必ず勝つ」方法を冷徹に追求しつづけた孫子。
勝算の冷静な分析、無勢で多勢に勝つ方法、リーダーに迫る5つの罠――など、
しなやかな知と逆転の発想にみちた「最古最高の用兵理論」を読みとく。
百戦錬磨はベストではない
「孫子」の兵学の特色は、
軍事についてきわめて柔軟な発想を展開している点である。
たとえばその柔軟さは、
戦争=戦闘とは考えない
といった形で現れてきている。
「交を伐つ(敵の外交関係を断ち切る)」(謀攻篇)といった外交戦術であったり、
「謀を伐つ(敵の陰謀を未然に葬る)」(謀攻篇)といった謀略活動であったりする方が、
金もかからず、血も流れず、はるかに効率がよいことになる。
孫子にいわせれば、決戦以外の戦闘をいかに巧みに回避して行くかが、
将軍の腕の見せどころであって、
百戦百勝を誇るのは、すでに百戦した点で凡将と称するべきである。
孫子2冊目です。もうすぐ3冊目と4冊目がアマゾンから届きます。
せっかくなんで、本文から気になった部分を紹介しときましょうか。
そもそも、病気の研究をせずに健康をもたらす医者が、この世にいるであろうか。
また犯罪の研究をせずに治安をもたらす刑事が、この世にいるであろうか。
だからといって医者は、病気を深く愛するがゆえに、
顕微鏡で熱心に病原菌を観察するのではない。
刑事は惨劇を愛してやまないがゆえに、
血まみれの殺人現場を丹念に調査するわけではない。
これとまったく同様に、もし平和を望むなら、
われわれはまず軍事に関心を持つ必要がある。
たとえどんなにそれが嫌いであっても。
戦争とは、あくまでも自国の利益のために他国と争い、そのために戦うことであって、
戦場での戦闘によって軍事的勝利を争うのは、その一つの形態に過ぎない。
むしろ、実際に軍事力を用いて敵軍を破り、おびただしい兵員や物資の損害のうえに、
やっと敵国の意図をはばむのは、最も拙劣なやり方と称すべきであろう。
世俗で優秀なものとは、数多くのあい矛盾した性質を、
一個の身体中に同時に備えているものを指す。
航空機を例にあげると、グライダーのように翼面積を大きくすれば、
航続時間は増大するが、飛行速度は低下する。
逆にロケットのように翼を小さくすれば、
速度は増すが、今度は航続時間が低下する。
そこで、速くしかも長く飛べるという矛盾した性能を兼備したとき、
それは名機と賞賛されるのである。
実社会で優秀であることの難しさは、ここにある。
したがっていずれか一方にだけ傾くのは、やさしい分だけ劣るといわねばならない。
孫子が理想とするのは、情報戦と謀略活動によって、
敵国のくわだてを事前に挫折させ、「戦わずして人の兵を屈する」方法である。
そして止むを得ず開戦にふみ切った場合でも、
常に国家経済を疲弊させぬよう気を配り、補給を断たれぬように配慮しながら、
短期に戦争を終結させる点に全力をあげる。
孫子2冊目ですが、まだまだ理解が足りません。
経営っつーか競争の問題を孫子の視点から解明しようと試みてるんだけど、
まだ納得できる形にはいってない。
まぁ、上記の抜粋もそうだけど、何かと社会においてためになる教えが多い。
なにより、「孫子によれば…」って裏づけがかっこいいじゃん?
![](http://x7.shinobi.jp/bin/ll?076320000)
2005.03.14