goo blog サービス終了のお知らせ 

りんのお散歩

一児の母になりました。
のんびり、ときに激しく語ります

もつれっぱなし          井上夢人

2006-06-02 22:55:13 | 本♪
この本がどんな本かと聞かれた時、一言で表すなら…『テレパシーの力』と答えます。

前後のそれぞれの話には全く繋がりがない、純粋なる短編集なのですが、そのひとつひとつの話それぞれの背景にはテレパシーと言う概念が存在しているように思います。
テレパシーと言うか、『あなたと私の繋がり』を感じる。






このもつれっぱなしは、ライトに読める短編です。
でも、そうでありながら、かなり恋愛指数の高い、いうなれば読み手の恋愛のアンテナの感度が刺激されるような話で埋め尽くされています。







恋したくなる。




きっと、読んだら大切な誰かに会いに行きたくなるはず。







この本は、恋愛小説っていうジャンルなのかな。
でも、なんかそういう風にも感じられないしなぁ。

うーーん。あ、きっとこれだ!!

ただただ幸せにおぼれて満たされる…って本。





どの話もかなりアゲアゲです。






特にりんが気に入ったのは『狼男の証明』と『幽霊の証明』です。
最後の1ページ(文庫版)を読んだとき、もう何とも言えず幸せになりました。
にんまりしちゃった。電車の中で(*^^*)





登場人物はそれぞれ結構真剣に悩んでいるのに、彼らを包み込むものがあまりにも暖かいから

そこに流れる空気は限りなく穏やかで、
果てしない愛しさに満ちています。






筆者の井上さんはミステリー作家だからもしかしたら最後にドンデン返しがあるのかな・・・ってちょっと期待しながら読んでました。
あったよ、ステキなドンデン返し(*^^*)

でも、それ以上に、




ただただ言葉の力に感動します。
だってだって…こんなにセリフが『魅せる』んだもん。
セリフの一つ一つが、凄くそっけなくてライトなのに、なんか心に残るんだぁ。




やっぱり井上夢人は凄い。
岡嶋二人時代も大好きですが、独立してなお輝きを放っていますね。

これは解説にも書いてあったんだけど、登場人物の性別や年代、いる場所や力関係が、セリフを読むだけで伝わります。しかも全く説明臭くならずに。

いゃあ、匠の技だね、と言うしかないのです。






愛しい愛しい本。


愛する人をもっともっと愛そうと強く思う。






さてと。

誰に会いに行こうかな(^-^)

おかしな二人~岡嶋二人盛衰記~      井上夢人

2006-05-31 22:06:21 | 本♪
京極夏彦、伊坂幸太郎、そして岡嶋二人。

私が、ちゃんと本屋さんに行って、ちゃんと本を定価で買う、数少ない作家さんです。


大好きなんです。

あまりにも大好きだから、この人たちには、ちゃんと売り上げに貢献したい!!と思います。

参加したいのです、『ついに何万冊突破!』っていうアレに。








大好きな大好きな岡嶋二人。


岡嶋二人とはその名前からも分かるように、二人で小説を書いている作家さんです。


彼らは既に解散しているのですね。
その事実は有名だったし勿論知っていたのですが、解散したって今でも本は読めるんだし・・・とあまり深く考えていなかったのが本当です。



そして、この本は、そんな二人が出会い、意気投合し、そして別れるまでを書いているエッセイです。






盛衰記という名のとおり、盛の章と衰の章に分かれているのですが、
黄金期だった盛の章ですら、なんだか悲しい。


別れるということが分かってて読む、というのは、とても辛いことですね。





ストイックで、正確緻密で、エンターテインメント性に富んでいて、読むものをハラハラさせ、アッといわせる。

そんな彼らの作品の裏に、あんなことやこんなことが潜んでいたなんて。
あんなに驚くべきトリックを使って、あんなにもミステリー好きを唸らせるあの二人、
その二人がまさかあんな状態で仕事をしていたなんて。







筆者・井上さんが、相方・徳山さんに送った手紙の内容(質問状)がもう・・・

悲しいとか、ひどいとかじゃなくて、辛かった。



どんなに抑えようとしても、相手を傷つけることばが抑えきれず溢れ出てきてしまう、
そんな筆者・井上さんの痛みが、悲しいほどに分かって、辛かった。
いつだって、誰かを傷付けるというのは、自分の傷が今まで以上に開くのも覚悟しないといけない。
その覚悟が無いのなら、人を傷付ける資格は無いんだと思う。

井上さんには、その覚悟がちゃんとあった。
やっぱり運命共同体。相手とともに自分も沈んでもいい。
そういう覚悟で、言ったことば。
だから、悲しくて辛くて、痛かったです。




そして、そんな叫びのような訴えを聞かされ続けてきた徳山さん。
私がもし同じことを言われたら、ぶん殴っちゃいそうな・・・絶交してもまだ足りないようなことを言われてもなお。
筆者が吐き出した思いを受け止めようとして「ちょっと考えてみるよ」という。

彼は絶対に言い返さない。





そしてそのことを誰よりも知っていたから、深い深い自己嫌悪に陥る筆者。






どちらが正しいのかは、分からない。
徳山さんの仕事上の役割もそれはそれは辛かっただろうし、
井上さんの言い分はあまりにも最もで、共感できる。





もう解散して随分たつ岡嶋二人。

きっと、今なら丁度良い距離のなかで、夜通し他愛も無い話に盛り上がっているのでしょう。
そうであってくれればいいな。




そして、いつだってこれからだって、私はお二人のファンなのです。







私は、彼らの小説は半分以上読んでいます。
でも、半分は読んでいません。
さて
残りも読みましょう。
きっと、今まで読んできたのとは違う気持ちで読めるはず。

続巷説百物語          京極夏彦

2006-05-26 22:46:32 | 本♪
今回も、あまりの美しさに目を見張りました。

見ているのは文字のはずなのに、景色を見ているように、鮮やか。
神業でした。








続、とタイトルにもあるように、御行又一シリーズ2作目です。


京極夏彦の本と言うと、『京極堂シリーズ』派と『又一シリーズ』派、と言う風にファンがピッチリ分かれていそうな気がしますが、りんはどちらかと言うと又一派。
古きよき、勧善懲悪を貫くスタイル。日常に潜む過ちへの落とし穴。人間の弱さと、強さ。
勿論、前作を読んでいて展開なんかはもう分かっているのに、やっぱり私の予想だにしないような、あまりにも鮮明で、あまりにも悲しい結末。

幕が上がった瞬間から、幕が引けるその瞬間まで、痺れる様な感覚が支配しています。







毎度毎度、話に入り込みすぎてしまう私ですが、その中でもこの本は比べ物にならないくらい私をのめりこませました。

私も、彼らを取り巻く事件に遭遇して、又一一行に出会って、
そして百介と一緒に旅して驚いて悲しくなって、むなしさに空を仰ぐ。


きっと、この本を読んだ人はみんな、こんな錯覚に陥るんじゃないかな。









そんな風に、一人の登場人物のような気持ちで読み進めてきた私だから、最終章の『老人火』はもう悲しくて悲しくて。





この章の半分辺り。
近いうちに必ず来る『終わり』が、近づいてきているのがわかって、泣けてきた。



話に感動したとかじゃなくって、ただただ『終わり』が来てしまうのが悲しくて。




だってこの先もう、又一の鈴の音は私に届かない。










でも、実はこの本、まだ続編があります。
京極夏彦を直木賞作家にならしめた作品『後巷説百物語』。






なぁ~~~んだ、
後巷説があるんじゃない。
そんならまた又一に会えるよ。
百介と旅が出来るよ。







いいえ。そうじゃないの。








もうこの先、百介は旅をすることも無いし、又一が現れることもない。

『老人火』が、正真正銘、私と彼らの今生の別れでした。





そう思ってしまうくらい、この『続巷説百物語』の結末は美しかった。

だから、後巷説百物語に手を出すかはまだ決めかねています。










百介はひとりで前に進むことにした。
この先どう生きていくかの、覚悟を決めた。







私も前に進みます。

振り返っても良い。そう言い聞かせて、進みます。

大極宮       大沢在昌 京極夏彦 宮部みゆき

2006-05-11 01:10:04 | 本♪
夫婦円満の秘訣は。
愛と執念ですよ、はい。




・・・まさか彼からこんな言葉が飛び出してくるとは。

いささか、驚きです。





最近、やっと社会人生活にも慣れてきて、
思う存分読書が出来るようになって来ました(*^^*)

やっぱり本は素晴らしいですね。
相変わらずミステリーが大好きな私です(*^^*)




さて、大極宮について。


大極宮とは、大沢オフィス公式HPのことです。
ボスの大沢氏を筆頭に、宮部みゆき、京極夏彦が所属しています。




この3人、みんな超有名作家さんだから、かなりの期待でした。

で、読んだ感想。



やっぱり好きです京極夏彦!!!


・・・この一言に尽きます。
正直、後の二人のは全然楽しくなかった(-"-)
・・・っていうか実はちゃんと読んでませんが(笑)
だって、ちょっとパラパラ見ただけで、読む気持ちがなくなっていったのよーーぉ。。。



確かに、HPで取り留めなく書いている文。
お三方とも、肩の力が抜けていて、良い感じ。

でも。

そんな場だからこそ、力量が分かってしまった(気がする)。


やっぱり京極夏彦さんは、素晴らしいです!
何度も何度も書いてきましたが、彼は本当に、日本語を愛しているのでしょう。
砕けた文なのに、引き込まれるし、笑えるし、グッと来るし。

この気持ちってば、「どすこい」でも感じたのですが、
どんな文章を見ても、プロだなぁ・・・と感じます。


うん。好きです!







今回は、HPの文章だけあって、ちょっと私生活が垣間見えたりします。


整理整頓大好きで、家族大好きで、入ってくる仕事が断れないお人よしで、っていうか仕事が趣味で、趣味(仕事)の合間に仕事をこなし、仕事の合間に趣味(仕事)をする。でもって削るのは一家団欒タイム・・・ではなく睡眠時間(笑)。
本業は何なのか・・・と思わずにはいられない、執筆以外の仕事の多さ。
業者みたいなことまでします(笑)

↑一気読み(笑)





しかも、私が以前から持っていたイメージは、今でも全く崩れないところが凄い。
京極夏彦、魅力は増えてく一方です。



ということで、京極夏彦にモエモエ(死語)になりながら、
お次は『続巷説百物語』いっときますか!!

ってかもう読んでるし(*^^*)
しかもかなり面白いし(*^▽^*)ノ

しあわせの書       泡坂妻夫

2006-05-06 22:39:58 | 本♪
実は、この本はかなり前に読んだものなんです。


…でも、その時は、

なんかよくわからんかった

としか思えずにいました。





もう、何度読み返しても、そのトリックの意味が分からず…。

がっかりでした。

ほんとうに、がっかりでした。




そこまでがっかりした訳はというと。


はっきり言ってこの本、前評判がかなり良かったのです。

どこのレビュー見ても「そのトリックにはただただ感動するばかり
のようなことが書いてあったし、
実際にこの「しあわせの書」の裏表紙の作品紹介を見ても、
どうか未読の方には明かさないでください
なんて但し書きがあったし。


そりゃ、期待するでしょ。
期待も大ってなもんでしょ!!!




だから、本当にがっかり、裏切られたかのような気分。。。




本当に、本当に、トリックの意味がよく分からなくて。

あまりにもわからんので、もうどうでもいいわい!!!
とばかり、本棚にしまいこんでいました。

だって、いくらトリックが素晴らしくても、読んだ人がすぐにピンと来なけりゃ駄作じゃい!!!!ですよね。



・・・なのですが、今回、同じ新興宗教をテーマにした本を読んでいる最中に
「そういえば、前に同じような新興宗教の本読んだよなーー。あれよく分からなかったなーー。」

なんてことを考えていたのです。

そして。

ふと、思いついてしまったのです。




「・・・あ。あれ?もしかしてあの本のトリックって…」




今更ながらピンときました。
そして、すぐにその本を本棚から取り出し…。



おわっっっっっっっ!!!


やっぱりそうか!
そういうことだったのか!!!

分かっちゃいました。
私、分かっちゃいました。



いやホント、鳥肌立ちました。
冷や汗ものでした。
   


確かに驚愕唖然のトリック(仕掛け)でしたよ。


駄作から一気に秀作にランクアップですよ。
右肩上がり、うなぎ登りでわが社の成績ナンバーワンですよ。



話は対して面白くないのですが(つまらなくもないですが)
本当に、トリックの為だけにでも、一読の価値アリです。




このトリックを知ってしまった以上、私にはトリックを他人に明かさないなんて無理です(笑)
早速兄を驚かし、これから母を驚かせる予定です(笑)






しかし、、




まだまだ興奮状態。
皆様一読あれ、そして魔法にかかってください(^^)



(私は鈍かったですが、皆様なら最後まで読んだ段階でトリックの意味が分かるはず…です。)

インザプール       奥田英朗

2006-04-17 22:16:31 | 本♪
人間って・・・。。。。


・・・という本を読むことが何故か多い最近ですが、
どうやらそろそろそのジャンルも締めくくりになりそうです。

奥田英朗『インザプール』

それぞれが何らかの悩みを抱えて生きている昨今の日本。
その姿を、実に鮮明に映し出した本です。


『こいつ、本当に医者か?』
の、帯にひかれて買ってしまいました。
直木賞受賞作『空中ブランコ』に続くための本として、有名ですね(*^^*)





大病院の、何故か地下にある神経科。
そこを訪れた患者は、「いらっしゃーーい」という場所に適していない明るい声で迎えられる。

声の主が、精神科医・伊良部一郎。

彼の病院に訪れる人々を描いた、短編連作です。




精神科医と患者の話というと、
なんだか癒されるようなほんわかとした物語か、
あまりにも痛くて見ているのが辛くなってしまうような物語、
とかが多い気がします。


が。


こちらの伊良部氏の治療は、そういうんじゃありません。
何がどう、とか言っちゃうと面白さ半減しちゃいそうだからあえて言いませんが、
まだこの本を読んでいなかったあなたは、ラッキーです。
だって、これから読めるんだからね!



どの話も甲乙付けがたいほど好きな私ですが、
特に好きなものをあげるならば『フレンズ』でしょう。

これは、携帯依存症の高校生の話です。
内容が自分にとって結構身近だったというのも面白かった理由の一つですが、
キテレツ伊良部医師が、なんとなく優しい大人っぽくて嬉しかったのです、私。

そして、なんといってもマユミさん(注射係・看護婦)が惚れ惚れするほど格好よかった!!!
最後の1Pで、マユミさんに抱きつきたくなりました、はい。
人間は弱いなぁ、ということと、人間って強い・・・ってことを、同時に感じてしまいました。
泣くべき本じゃないのに、泣きそうでした。


子供みたいな伊良部も、協調性のかけらも無いマユミさんも、
なんだかんだ言ってもやっぱり大人なんだな、って感動してしまいましたよ。

五味太郎さんの『大人問題』と言う本が巷で反響を呼んでいますが、
私もここいらでひとつ大人とはなんぞや、について考えないといけないな。と感じさせられました。







伊良部医師。

通常なら、友達どころか顔見知りにすらなりたくない。

心が疲れていたり、ストレスでどうしようもなくなっている時に会ってしまったなら、症状が悪化するどころかもう浮上して来れない。



だけど、



本当に本当に本当に悩んで苦しんで辛くてたまらないときには、


彼にだけ、悩みを打ち明けられるのかもしれない。


きっと彼は、私の背中にある重い重い荷物を、
一緒に背負ってくれるでもなく、そっと下ろしてくれるでもなく、


ぼうぼうと、火をつけて跡形もなく燃やしてくれるのでしょう。








・・・カッファンが求めていた、通勤快読本、こんなところにありましたよ☆

オーデュボンの祈り     伊坂幸太郎

2006-04-14 23:36:26 | 本♪
鬼才・伊坂幸太郎の、記念すべきデビュー作です。

このミス常連作家さんということだし、やはり分類としてはミステリーなのでしょうか。

うーーん。いや、でもちと違う。



じゃあ、ファンタジーかしら。
なんたって、カカシを殺した犯人を捜すストーリー。
舞台は切り離された孤島。

うーーん、でもでも。いや、ちがう。




宗教?
環境問題??
社会学???

どれもそう。でも、どれも違う。





この作品は、もっともっともっと深いところに位置している。





優しいのに、冷たい。
悲しいのに、愛しい。




人間のはかなさ。そして逞しさ。
強さと、脆さ。




人が持つ、全ての感情が内包されている感じ。





ある人にとってはほのぼのするストーリーかもしれないけれど、
ある人にとっては悲しくて苦しくて、とても辛いかもしれない。




かなり、リアルです。








オーデュボンの祈り。

「祈る」って、どういうことなのでしょうか。
祈り続けたその先には、どんな色の光が差しているのでしょう。


祈り続ける者は、
祈り続けている限り、闇の中にい続けている。
光がどんな色をしているのかも忘れてしまうほど、鮮やかな、闇の中にいる。



真っ暗で、未来が見えないのって怖いよね。
でも、未来が見えたって、やっぱり真っ暗で怖いんじゃないかな。


もしも、もしも私に未来を読む力があって、
もしも私の大切な人が病気になって手術できずに死んでいくのがわかったって、
だからって私にはどうすることも出来ない。



未来が見えるのと、強いのは同じことじゃない。








だから、人は祈り続けるのかな。
同じ闇の中なら、少しでも光の見えるほうを見ていたいから。



たとえ、その光のほうには進めなくても。

巷説百物語     京極夏彦

2006-04-03 19:25:49 | 本♪
「お話」って、凄い。

なんてなんて、いとおしい。


心が洗われるような優しさで、
掻き毟られるような非情さで、
はっとするような鮮やかさで、


それを同時に叶えられるのは、「お話」なんだってことに、
改めて気づかされました。


私は読書といえばミステリーが好きで、うなるほどに好きで、
それはそれで楽しいし面白いからいいのですが、
やっぱりミステリーは「手法」や「トリック」のために読むものなので、
「お話」ではないんですよね。

もともと読書が好きな私は、やはりたまに「お話」が読みたくてたまらなくなります。
そんな時に迷わず手を伸ばすのが、京極夏彦。



京極夏彦の書く文章はまさに「お話のためのお話」といえます。

小説でも音楽でも絵画でも、「現代風」や「新解釈」などが市民権を得始めた近年。
しかし新鋭か、古典かと聞かれたら、京極夏彦は古典でしょう。


期待を裏切らない展開。
ちょっと難しい文体。

でも

展開が王道であればあるほど、人を引きつけるのって至難の業のはず。
難しい文章の完成された綺麗な流れを退屈させずにえがくのって、そう簡単には出来ないはず。


つまりは、


京極夏彦すごいっすーーー!!!の一言に尽きるわけですね。今回も。





展開は本当に王道です。

もう、ここでこいつがこう言うんでしょーー。とか、
多分ここで・・・あ、やっぱりここで登場か、この人。とか、
あーー、やっぱこの人、ここでこう言っちゃうわけだ。とか、

本当に期待を裏切らない。予想に反しない。


京極堂シリーズにも巷説シリーズにも共通して言えることだけど、


『満を持して持して持して・・・役者を全員揃えて一堂に集めて、
でも役者が揃いも揃って事件の全貌を知らされておらず、ただ右往左往するばかり・・・
もうここいらでバシッと決めちゃいましょう!
ひとつなんとか丸く治めちゃってください!!
はいみんな整列!!!

さあ!!!!


どーーぞ!!!!!』


で、登場なわけです。

王道でしょ(*^^*)


しかしこの王道っぷりが
しびれるしびれる。


これでこそストーリーテラーです。
これでこそお話作家です。
京極夏彦、最高峰です(*^^*)



ところで

新鋭物より古典が空きというのはりんの勝手な好みです。
ぶっとんでる=アート  って勘違いしている自称芸術家が今の世に多すぎるのも理由の一つだし、
やっぱり廃れないものにはそれだけの価値があるんだと思う。

廃れない、色あせない文といったらもう京極夏彦の右に出る者はいないわけですから、やっぱり彼は最高峰です(*^^*)



それに、京極夏彦の文章はいつも、「文章に、言葉に」対する愛情に満ち溢れています。




古典を愛するってそういうこと。
美しいものを美しいままでいさせるのは、物語への、作品への愛情ではないのでしょうか。

そしてそれだけじゃなくて、最後に紅を差したような鮮やかさが、作品全体を包んでいるのが、京極夏彦が最高峰であるという所以なのです♡


もう既にゲット済みの「続巷説百物語」。
直木賞作品になった「後巷説~」も早く読みたいな。

重力ピエロ    伊坂幸太郎

2006-03-16 14:44:26 | 本♪
私には、本を読むにあたっての『自分ルール』があったりします。




それは

感情的にならない



つまり

感情移入しすぎない

ということなんです。





だって私ってば………


ちょっと気を抜くと、あまりにも入り込みすぎて、
先が、結末が気になって、もうありえないくらいあまりにも…




読み飛ばすんですもの!!!

しかも飛ばし方が半端ない。

もう1P2Pは当たり前、ひどくなると5Pくらいいっときますか!!!…となります。


勿論これだと、話の筋すらわからなくなるし、当然ラスト近辺での新しい、楽しい発見にも出会えず、



挙げ句…




『なんかおもしろくなかった…(・ω・;)』

とか言い出す始末…


当たり前ですが、こんな読み方で面白かったと感じた本などあるわけもなく、
結局また最初から、今度はじっくり読むことになります。

そして読み直した本はどれもとても面白い!!
ので、本当心底効率が悪い!!!




…だからもうほんとに「感情的にならないように」気をつけて読んでるんです。面白い話、好きな作家さんなら余計に。









伊坂幸太郎は、好きな作家さんの一人です。

なので、いつものように気をつけながら…と言い聞かせて始めのページに目を落としました。



さて。


結果から言うなれば。



最初の章「ジョーダンバット」で既に私の決心は脆くも崩れ去りました…。


肩入れしまくりです。





はい。すみません思い出しました。
同作家『陽気なギャングが地球を回す』でギャング一味の仲間入りを強く…強く切望したのは私ですσ(^-^;)




でもさぁ~

こればっかりはしょうがないような気がしてきちゃう程、伊坂幸太郎の書く話は「仲間に入れて!」率高いんだもん~(・_・;)言い訳・・・





と、いうことで(^-^)

晴れて、感情まるだし移入しまくりになった私。
果たして、そんな読み方で楽しめたのか否や!!





楽しめました♡

しかもかなり!!!
ってゆうか、超!!!!


リアルタイムで私が感じたのは…



泉水(長男)に遺伝子の話たくさん教えて貰いたい!

春(次男)の美貌を至近距離でジロジロ眺めまくっても、拒否られない妹のポジション希望!

あまりにも美しいお母様とメイクやらファッションやらの話で一晩明かしたい!



そして…

あのお父さん独り占めしたい!!!



マジで。

末っ子希望!!!




なんもかんも良かったですが、やはりキャラクターが良すぎます。
誰も彼もみんな憧れちゃう♡

まぁ、やっぱり一番がお父さんなんだけどね(^-^)

彼(父)の口からすとんと落ちてくる言葉たちは、もうどれも感動的。
いとしくて、愛したい。そんな言葉ばかりです。





ちなみに本の内容は、明るい話でも愉快な話でもありません。
テーマは多分かなり重い部類に入りそうです。


なのに、それらの周りにあるのは、明るさやおおらかさ。心が洗われるような透明感。

癌・放火・レイプ・殺人など、重くて暗くて救いようのないテーマを扱っているからこそ、
その突き抜けるような明るさやおおらかさが、逆に悲しいやら愛しいやら。




ラストはもう泣きっぱなしでした。

最初から最後まで感情移入しまくって読んだからこそ、更に溢れる涙。



その時の本の中の兄弟はというと、ニコニコ楽しそうで、解放感に溢れていて、穏やか。


なのに、


読んでいる私だけが泣きじゃくっています。





そう


『本当に深刻なことは陽気に伝えるべきなんだよ』


そういうことなんですよね。


私の涙をよそに、手を叩いて笑い合う、泉水と春の顔が目に浮かぶようです。


ランキング←今日もクリックお願いします♪

プラスティック   井上夢人

2006-03-14 21:14:04 | 本♪
岡嶋二人改め井上夢人。

私が大好きで大好きでたまらないミステリー作家岡嶋二人の解散後、
1人になった井上夢人さんの作品を初めて読みました(*^^*)

このブログでも、岡嶋二人さんのことは
何度も何度も「天才!!!」と謳ってきたりんですが・・・

解散して尚。


天才見参!!!

まさに。




何が凄いってこの話、
オチが四分の一くらいのところで分かっちゃうんですよ。
察しがいい人にはもっと早くわかります(私はかなり早い段階で分かりました)。

「絶対こういうオチじゃん~」
ってもう断言できちゃうんだけど、
そこで問題勃発。

「いや待てよ、そうだとしたらここが変だ、ここがかみ合わないぞ」
って、矛盾を感じるのです。
つまりなんか釈然としないんだよね。。。




で、後半を読むと、もう本当に予想通りのオチ。
だから、私にとってオチがどうのというよりも、


「このオチでいくならあのシーンやあのシーンはどう説明すんじゃーー」


な、わけです。



そして、後半部分でその説明がなされるんですが、
その説明でまさに

唸る。


唸らせてもらいました。



完敗です。

オチが分かっただけに、完敗です。



無理のある設定なのに、何一つ無理の無い状況説明。
まさに職人技でした。


オチがわかって尚。

しくみがわかって尚。

もう一度、じっくり読み直させてもらいます!!!



同じような題材の本は数え切れないほどあるのに、
この本はそれらとは異質なのです。


いやーーー、
今回も勉強させてもらいました!!




ランキング←今日もクリックお願いします♪