りんのお散歩

一児の母になりました。
のんびり、ときに激しく語ります

13階段 高野和明

2006-12-31 12:18:55 | 本♪
ミステリーって、仕掛けや展開だけではなく、作家さんの質感やタイプもかなり、作品の評価に左右されると思う。





とにかく興奮気味に読み進める本に…



ほんっっっと~~~に











出会いたかったぁ~~~。



だから…『13階段』との出会いは、まさに感動っす~!!!









いやもう…、なんて目が離せない、スリルある展開。なんて鋭い観察眼。なんて人情味溢れる人物描写!!!





何度も裏切ってくれます、いい意味で。


「あれ?もしかしたらこういうことかな」って中盤で先が読めたあなた!
ご安心ください、それじゃありません。

「おっ。こういうことだったのか!!」と後半にて閃いたあなた。
大丈夫です、それでもありません。




中だるみが本当に一回もなくて、勢いがあって、「すごいっす~」の一言です。






でも、わたしがこんなにはまりまくり寝る間も惜しんで読みまくった理由は、実は巧みな人物描写によるものだったんだなと思うのです。



思いっきり重いテーマなのに、重たくならない。
主題を楽観視したり、奇麗事を並べるような軽さは勿論ない。


微妙であり絶妙なさじ加減で、三上が、南郷が、樹原が、存在している。



チョイ役ででてくるたくさんの人物も、どこか暖かくてユーモアがあるのもなんだかほっとして、嬉しかった。





そういうふうに全体に漂って心地いい空間というか、空気。



そのおかげで、読んでいる私としては
「重…重い………」ではなく、


「………深いなぁ~………」



となったわけです。






考えるべきことはたくさんあるから、頭の中や心の奥では色々な気持ちが渦巻くのだけど、それは重さではなく深さなんだよね。



久々の、匠の技です。





テーマを掲げて、自分の意見を押しつけるのは簡単。特に、扱うテーマが重く暗い場合は、文体もタッチも深刻になりがちだしね。
だから、個人の主観を入れずに描くのはかなり難しい作業なのです。


そしてこの作品はというと、勿論後者なのです。



押しつけられない。
押さえ込まれない。
考えを改めるのも自由、更に深めるのも自由。




だから




読むべきです。これは。




でもどんなに考えても、やっぱり悩んでしまいます。



私がこの世のすべてではないように、この世の全ては私ではないから。


あらゆる人にそれぞれの立ち位置があり、それぞれの立場があるから。








う~ん



深い。




良い作品は、重いのではなく、深いのです。





本当に、久々の星三つ!!!