りんのお散歩

一児の母になりました。
のんびり、ときに激しく語ります

空中ブランコ           奥田 英朗

2008-05-28 23:02:26 | 本♪
インザプールの短編続編、空中ブランコ。

直木賞に輝いた作品なので読んだ方も多いかも。


前作を読んでいただけあって、どんな展開になっていくのかとか、どういうパターンの話かはわかってしまっているのですが(「パターン」は作家にとって禁句らしいですが(『女流作家』参照))、
そんなこた、わかっちゃいるが、わかっちゃいるがオモロイ!!!のがこのシリーズなんです。



前作同様、悩める患者が迷い込むトンデモ精神科医ワールドてんこもりです。

今回の患者さんは、飛べなくなった空中ブランコ乗り、先端恐怖症のやくざ、義父のカツラが取りたくて取りたくてたまらない医者、ノーコンのプロ野球選手…

どの患者も、まじめで、ちょっと意地が悪くて、でも悪い奴にはなりきれなくて、すぐに悩んで、でも落ち込んでも心の底はポジティブで、
つまり、私たちとなんら変わらない、「普通の人々」。

いいなーー。居心地いーなー。
この「普通な人」っぷりが、たまらんわけです。
そして、そんなどこにでもいる悩める患者が出会うのが、明らかに普通じゃない精神科医、伊良部なんです。

前作「インザプール」の時には伊良部のキテレツっぷりに「患者さんどうなっちゃうんだよーー」とハラハラしながら読んでいたのですが、今回は、「ほーほー伊良部サン、今回はそう来るわけですかー」とニヤニヤしながら読んでいました。



今回も、患者の悩みそっちのけではしゃぎまわっていますが、
伊良部にさんざん振り回されて巻き込まれて調子狂わされていくうちに患者さんたち、

「なんだかよくわかんないけど、悩みも状況もほとんど変わってないんだけど、なんか頑張れそう…がんばれる… … 気がしてきた!!」

ってなってる。



そかそか。うんうん。

がんばれるよ。
愛すべき普通の人々、あなたたちならがんばれる。

次にもしもまた同じ、もしくは別の壁にぶち当たったとしても、伊良部との一件を思い出して、次はニヤニヤしながら自分で解決できるはず。

それでもしまた許容範囲を超えてひとりじゃ解決できないときは、伊良部総合病院に行けばいいのさ。


そんなことを考えながら、最後にはニコニコしながら本を閉じました。




ちなみに、私は先端恐怖症なので『ハリネズミ』だけは他人事に思えませんでした(あそこまでひどくはないけど)。