ニューヨーク証券取引所のトレーダー=ロイター
【ニューヨーク=三島大地】17日のニューヨーク株式市場でダウ工業株30種平均は反発し、前日比0.3%高の4万0003ドルで取引を終えた。
終値として初めて、4万ドル台に乗せた。米連邦準備理事会(FRB)の年内利下げ観測の高まりや経済の軟着陸期待からテック株や金融株などが上昇し、初の大台突破につながった。
ダウ平均は16日に一時、4万0051ドルに達したが、終値は3万9869ドルと4万ドルの大台に届かなかった。17日は終値ベースで初めて4万ドルに達し、史上最高値を更新した。
ダウ平均は1999年3月に終値で初めて1万ドルを突破した。
2017年1月の2万ドル到達まではおよそ18年かかった。20年11月の3万ドル到達までは3年10カ月、4万ドルまでは3年半と、大台突破のペースは速くなっている。
足元の上昇をけん引したのはハイテク銘柄だ。S&P500種の業種別でIT(情報技術)は4月末比7.9%高と上昇率で上位だった。
次期基本ソフト(OS)に人工知能(AI)を盛り込むとの観測が追い風でアップルは4月末比11.5%上昇した。マイクロソフトも7.9%高で推移する。業種別では通信サービスも7.0%上げた。
FRBの利下げ期待の持ち直しが株高の原動力となっている。経済統計でインフレのしぶとさが意識され、年明け以降、利下げ期待は後退を繰り返してきた。
ダウ平均は4月末に年初来の安値圏である3万7815ドルに沈んでいた。
5月に入り、4月の米雇用統計や消費者物価指数(CPI)などインフレの鈍化を示唆する指標が相次いだことで、「次の一手が利上げとなる可能性は低くなった」(ウェルズ・ファーゴのサム・ブラード氏)。
金融先物市場でも年内の複数利下げを織り込む向きが支配的になり、相場のリスクオンムードが高まった。
米債券市場では金融政策の先行きを敏感に織り込む2年物国債利回りが16日に4.7%台を付け、4月末比で0.3%程度低下した。
金利の低下で割安感が意識され、ハイテク株を押し上げた。不動産セクターも前月末比で7.1%上昇した。
米景気への楽観論も株価を下支えしている。
15日に公表された4月の米小売売上高が軟調な結果となったことで、インフレを抑えるためにFRBが景気を硬着陸させる必要性が薄れたとの見方が広がった。市場取引が活発になるとの期待から、ゴールドマン・サックスが前月末比9.6%上げるなど、金融セクターは5.0%高と高い伸びを示す。
もっとも、急速な株価の上昇に警戒感も広がる。S&P500種の予想PER(株価収益率)は足元で21倍弱に達する
。SMBC日興セキュリティーズ・アメリカのジョセフ・ラボーニャ氏は「金融引き締めが続く中での株高は持続的ではない」と警鐘を鳴らす。
ひとこと解説
米国の「株式の死の時代」の終焉は1981年。
16年間抜けられなかった1000ドルの壁を破り、その後は、幾多のショックを乗り越え、43年かけて4万ドル、40倍となった。
年率換算で9%弱の上昇率は高い。背景は、企業収益の向上だけではない。
米国の長期投資家層の存在は見逃せない。
最初のベビーブーマーが35歳以上の資産形成期入りしたのが81年、その後この層が401k等の手段を使って投資を継続、岩盤層となった。
日本にもそうした岩盤となる長期投資家層はいるのか。投資への理解が遅れていた分、新NISAで新たに投資を始めた若者たちが長期投資家層として広がることに期待したい。
日経記事2024.05.18より引用