Renaissancejapan

哲学と宗教、財閥、国際政治、金融、科学技術、心霊現象など幅広いジャンルについて投稿しています

欧州版JPモルガン誕生せず 「PIIGS」安定も統合停滞 波立つ欧州金融②

2024-09-18 15:39:00 | 世界経済と金融


EUは今春、資本市場の統合に向けて協議を約10年ぶりに再開した(ブリュッセル)=ロイター

 

「PIIGS」(ポルトガル、アイルランド、イタリア、ギリシャ、スペイン)と呼ばれた欧州各国の金融が復調している。

イタリアのウニクレディトは11日、事前調整のないままドイツ2位のコメルツ銀株を9%取得したことを明らかにした。

 

オーセル最高経営責任者(CEO)は統合案も視野に入れるが、コメルツ銀はリストラを警戒し反発を強める。

ウニクレディトは2023年決算で最高益を計上し、攻めの経営に転じている。

 

アイルランド大手銀、バンク・オブ・アイルランドは5年で株価は2.5倍になった。上昇率は同期間の米JPモルガン・チェースを上回る。

2010年ごろに起きた欧州債務危機の震源地の一つとなったアイルランド金融だが、約470あった銀行など金融機関は240程度に半減。金融再編を経て安定性を取り戻した。

 

ポルトガルの10年債利回りは今やフランスを下回る。ギリシャは23年、国債格付けが13年ぶりに投資適格級に復帰した。

ユーロ圏の銀行監督が欧州中央銀行(ECB)に統一されてから、10年近く運用が進んだ。15年に約1兆ユーロで約7%あった不良債権の比率は2%台まで減った。

 

 

JPモルガン・ダイモン氏「汎欧州化を」

欧州金融が失ったものもある。顕著なのは収益性の見劣りだ。

QUICK・ファクトセットの集計によると、欧州銀行の自己資本利益率(ROE)は22年時点でおよそ8.5%。米国は11%程度と2桁を維持し、欧州は危機後に米国を下回り続けている。

 

 

 

欧州域内で国境を越えて存在感を示す金融機関は存在せず、各国とも金融規制は独自の様式が残ったままだ。

ユーロ圏はおよそ3億人を擁し、米国に匹敵する巨大な通貨圏にもかかわらず金融の世界では経済規模を生かせていない。

 

「欧州には欧州版JPモルガンが必要だ」。ECBの銀行監督委員会委員長を23年末まで務めたアンドレア・エンリア氏は主張する。

当のJPモルガンのジェイミー・ダイモンCEOは「欧州の銀行は汎欧州化する必要がある」と度々コメントしている。

 

 

「資本市場同盟」は10年ぶり協議

欧州各国の資本市場制度を統一する「資本市場同盟」構想を巡り、EUは今春の首脳会議でおよそ10年ぶりに協議を再開した。

ウクライナ危機に直面するなか、脱炭素やデジタル化へ長期的な成長マネーの確保を急ぐ。

 

「実現に向けた野心的な取り組みを目指す」。

5月下旬、仏大統領として24年ぶりにドイツを国賓訪問したマクロン氏とショルツ独首相はEUの資本市場統合を優先議題とする共同声明を打ち出した。

 

特にマクロン氏の問題意識は明確だ。

「欧州には膨大な貯蓄があるのに、年3000億ユーロ(約47兆円)が米国に投資されるため流れている」と話す。人工知能や防衛などにマネーをまわす「欧州貯蓄商品」を創設する構想も浮かぶ。

 

 

「銀行同盟」はなお壁高く

しかし各国の利害が衝突する分野の統合は容易ではない。特に「銀行同盟」の実現はハードルが高い。

欧州債務危機を教訓に金融市場の強化を掲げてきたものの、柱の一つである欧州預金保険制度は実現の見通しが立たないままだ。

 

強く反対するのがドイツ金融界だ。独貯蓄銀行協会のウルリヒ・ロイター会長は「モラルハザードを誘発しかねない」と猛反発。

預金保険制度をあてにした他国の金融機関が過度なリスクを取りやすくなると警告する。堅実経営の独金融界が逆に問題に巻き込まれるとの警戒は根強い。

 

欧州の大国である独仏がリーダーシップを発揮できなければ、金融市場の統合機運も空転しかねない。

「欧州は危機に対する解決策の積み重ねとして構築されていく」。欧州統合の父と呼ばれるジャン・モネの言葉は欧州金融の針路にも重なる。

 

 


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。