USスチールのブリットCEOは「日鉄による買収は計画通り24年末
の完了を目指す」とコメントした
【ニューヨーク=川上梓】
米鉄鋼大手USスチールが1日発表した2024年4〜6月期決算は純利益が前年同期と比べ62%減の1億8300万ドル(約270億円)だった。
米国や欧州で自動車など産業向けの需要が低調で、鋼材出荷が減少し平均単価も下落した。日本製鉄による買収については計画取り「24年末の完了を目指す」との方針を示した。
売上高は18%減の41億1800万ドル、調整後EBITDA(利払い・税引き・償却前損益)は45%減の4億4300万ドルだった。
自動車や建材など産業向けの需要が減り、鋼材価格も下落した。4〜6月の総出荷量は9%減の359万㌧。部門別の出荷量は全体の6割を占める北米鋼板事業が9%減、電炉が4%減、欧州が15%減だった。鋼材平均単価は北米が3%減、電炉が14%減だった。
USスチールは環境負荷の少ない電炉への投資を増やしている。電炉子会社のビッグリバースチールでの工場の立ち上げ費用が増えたほか、人件費も上昇。出荷量の減少や販売価格の下落に加え、費用増が減益要因となった。売上高に占める調整後EBITDA比率は11%と前年同期(16%)から悪化した。
7〜9月期の調整後EBITDAは2億7500万ドルから3億2500万ドルの範囲になると予想する。デビッド・ブリット最高経営責任者(CEO)は「価格面の逆風が強まったが、製品構成の改善やコスト管理で収益の回復力は維持できた」とコメントした。
日鉄によるUSスチール買収は米国以外の規制当局の審査は完了し、米当局の審査と司法省による反トラスト法の審査を残すのみとなっている。
ブリットCEOは日鉄による買収について「24年末の完了に向け、米国の規制当局への手続きを引き続き進めている」と説明した。「日鉄による買収は競争力を高め、国家、経済、雇用の安定を強化し、米国の鉄鋼業をより強くするための先進技術をもたらす」と改めて意義を強調した。
バイデン大統領や共和党のトランプ前大統領は買収に反対している。民主党の大統領候補になる見通しのハリス副大統領は立場を明らかにしていない。
USスチールが本社を置く東部ペンシルベニア州のショジュ・シャピロ知事は7月30日、日鉄による買収について「本当に深い懸念を抱いている」と述べ、反対する考えを示した。シャピロ知事について地元メディアはハリス氏が副大統領候補に選ぶ可能性があるとしている。