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米国石油界 第二のロックフェラー ハリー・シンクレア

2023-06-22 21:21:50 | 麻薬・阿片・石油

アインホルンの活躍は、ゲーペーウーの本領を発揮する。 レット人共産党員の一人が、モスクワの商業人民委員会に赴任してきた。 彼の名前はエデル・スタインと言ったが、アインホルンと瓜二つというほどよくいている。 

このレット人の旅券はゲーペーウー外国部に送られ、エデル・スタインの写真の代りにアインホルンの写真が貼られた。 かくして、このレット人の旅券はそのままアインホルンの旅券に改ざんされ、彼はレット人になりすましたのである。 

子の旅券を持ったアインホルンは、大金を懐にして公然とペルシャの首都テヘランに入り、まもなく目抜き通りに立派な自動車屋を開業した。 彼の配下の諜報員は自動車を自由に駆使してペルシャ各地に旅行し、各種の情報を収集した。

英国のクライブ公使がペルシャのチムール・タシェ大臣と石油工業に関する契約を結んだ時など、その内容は直ぐアインホルンに分かっていた。 タシェ大臣からソビエト大使を通じても分かるし、文書や電報による通信を盗むことによっても分かった。

アングロ・ペルシャンの使者からの通信は、郵便局員として入り込んでいるアインホルンの部下の手で知らバラれていたのである。 ある時、アインホルンは以前ウクライナのオデッサで会った事のある一人の運転手とめぐり会ったことがあった。 

当時、アインホルンはこの黒海に臨んだ港町で、ゲーペーウーの前身たるチェカの一員として暗躍していて、この男を検挙したことがあった。 そんな関係から、万一、レット人エデル・スタインになりすましている彼の身上をあばかれては、彼の画策も水泡に帰してしまう。 結局、このロシア人を買収し,高給で自分の店に雇って禍を除くという事件もあった。

こうしたアインホルンの暗躍は、実は一つの目的・・・ 一人のペルシャ人を捜し求めていたのだ。 その探している男がリザ・ハーンであったのである。 リザ・ハーンは裏海南岸のマッサンデラン県の片田舎に軍人を父として生まれ、若い時ペルシャのコサック軍団に投じて、馬洗いから始めて将校となった。 

彼は極めて愛国心に富み、当時のペルシャが英・ソ両国の傀儡となる状態に奮起し、遂に1921年はじめ、突如として粛軍(軍の規律を粛清する事)を決行して、軍団内のロシア将校を一掃し、手兵2,500を率いて、威風堂々首都テヘランに入場してクーデターを敢行し、自ら軍司令官となったのである。

アインホルンは、このリザ・ハーンと提携していこうと図ったのである。 リザ・ハーンは英国人を嫌っており、同時に烈烈たる愛国心に燃えていた。 彼はペルシャの国権を回復して、二千年前のアルタクセルクセス大王時代のペルシャを再現することを念願としていた。

アインホルンはリザ・ハーンのこれら二つの念願を利用して、英国勢力の駆逐にあたろうと思っていたのである。 赤色ソビエトのスパイとペルシャの志士は、ともにペルシャ復興を語り合うようになった。 ゲーペーウーのアインホルンはエイザ・ハーンの黒幕として、その活躍を多づけた。

こうして、リザ・ハーンの勢力は旭日昇天の勢いで発展し、1925年12月、ペルシャ国会はカージャール王朝を廃して、リザ・ハーンを元首に建てること決議した。 ここにエイザ・ハーンはシャー・リザ・パハラヴィとしてペルシャの支配者となったのである。

これでアインホルンの謀略はその第一幕を閉じる。 リザ・パハラヴィは祖国ペルシャの地位を高めるために、軍備に財政に一大改革を断行し、まず1919年の保護条約破棄を英国につきつけ、まずアングロ・ペルシャン(英・イラン)石油の度肝を抜いた。 ついでアインホルンの計画通り、ペルシャの外交政策を親ソの方向に引き摺っていいたのである。

この成果は、今や座して待つのみとなったが、この奸智に長けたロシア人はテヘランに駐っている訳にいかなくなった。 彼が米国に協力者を求めるために派遣していた密使が、遂に有力な石油資本を得て帰国したのだ。 アインホルンはこれを迎えるために急遽モスクワに帰らねばならなかったのである。

アインホルンをモスクワに引き戻した珍客は、ペルシャの石油利権とも大いに関係を生ずることとなるのである。それは一体誰であろうか。 米国の石油業界で第ニのロックフェラーたるべき人と予想されたハリー・シンクレアである。米国の石油業界はほとんどロックフェラーに買収され、一時軍油割拠の状態を呈していた業界は、スタンダード石油の傘下に糾合されてしまった。

そのなかにあって、敢然スタンダード石油に対抗し続けた者に、シンクレア、ドーニー、及びマーランドなどがあったが、シンクレアは大胆不敵にもアインホルンとの協力によって、ソビエト領内の石油開発重大な役割をつとめるべく登場したのである。

それは、ロイヤル・ダッチ・シェル石油のデターディングの力でも、スタンダード石油の資本力でも遂にできなかった役割であった。 英・米両国政府しら飛び出してきてソビエトを屈服させ、バクー及びコーカサスの油田に既得権益を確保しようとしたものである。 

しかも。これ等の努力がことごとく水泡に帰した時、シンクレアはまるで国賓待遇を受けて、堂々とソビエトの首都モスクワに乗り込んでいったのだ。 怪人ハリー・シンクレアのソビエトにおける活躍については後述することとして、我々はここで彼のペルシャにおける暗躍ぶりをさぐってみなければならない。

それは結果に於いては悲史に終わるのであるが。石油秘密戦の一幕として省略するわけにはいかない。

 

続く、次は「シンクレア登場」の予定です。

 

 

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