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インタビューに応じる農林中金の奥和登理事長
農林中央金庫の奥和登理事長は日本経済新聞のインタビューで、2024年度中に米国債や欧州国債を10兆円売却する方針を明らかにした。
一方で、日本国債について「1%は瞬間で見れば妙味がある」と述べ、金利上昇に伴う評価損を警戒しながらも投資を検討する考えを示した。一問一答は以下の通り。
――5月下旬に含み損の処理に伴う大規模な損失見通しと1.2兆円規模の資本増強の検討を公表しました。今後、どう運用を立て直しますか。
「10兆円かそれを上回る規模の低利回り(外国)債券を売っていく。米欧国債が中心だ。米金利が下がるのは相当先になるかもしれない。
米大統領選などの状況によってはさらに踏み込んだ売却を検討することもあり得る」
農林中央金庫の奥和登理事長は日本経済新聞のインタビューで、2024年度中に米国債や欧州国債を10兆円売却する方針を明らかにした。一方で、日本国債について「1%は瞬間で見れば妙味がある」と述べ、金利上昇に伴う評価損を警戒しながらも投資を検討する考えを示した。一問一答は以下の通り。
――5月下旬に含み損の処理に伴う大規模な損失見通しと1.2兆円規模の資本増強の検討を公表しました。今後、どう運用を立て直しますか。
「10兆円かそれを上回る規模の低利回り(外国)債券を売っていく。米欧国債が中心だ。米金利が下がるのは相当先になるかもしれない。米大統領選などの状況によってはさらに踏み込んだ売却を検討することもあり得る」
![](https://article-image-ix.nikkei.com/https%3A%2F%2Fimgix-proxy.n8s.jp%2FDSXZQO4984331018062024000000-2.jpg?ixlib=js-3.8.0&w=319&h=404&auto=format%2Ccompress&fit=crop&bg=FFFFFF&s=e1eac468d899b8fd7f73bbff342bd208)
――米国の利上げ局面は終わったとの見方が強いですが。
「これまではいずれ金利が下がるという見立てが強かったが、米国の経済が強く、高金利に対する耐性がついた。
予見は捨て去り、運用を抜本的に変える必要があると判断した。想定していたよりも下がるのが遅くなるなら、低利回り債は売っておいた方が将来足を引っ張らない」
――農林中金への財務的な影響は。
「(含み損の処理によって)25年3月期に1.5兆円程度の赤字になる可能性がある。10兆円を超えて売却する際は、赤字が利益剰余金の2兆円を超えないようにする。(含み損は既に反映されているため)
自己資本比率への影響はほとんどなく、懸念していない。財務とポートフォリオが改善し、26年3月期の黒字化が可能になる」
――具体的には何を売って何を買いますか。
「米欧債を中心に年度内、できれば年内に売る。新型コロナウイルス禍の前から持っている低利回り債もある。
10兆円を上回る場合は、秋に状況を見ながら追加で売却するか判断する。同じ債券で銘柄を入れ替えるほか、通貨をドルやユーロから、場合によっては金利がついてきた円に入れ替えることもある」
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「(外貨運用に関わる)金利リスクを小さくし、代わりに法人や個人の信用リスクを取る資産に分散させる。社債や株、プライベートエクイティ(PE=未公開株)、住宅ローン担保証券(MBS)、クレジットカードやオートローンの債権などだ。法人融資も増やしたいが、時間がかかる」
――金利が上がり始めている日本国債に投資しますか。
「1%という水準は瞬間で見れば妙味はある。ただ、金利が上がり続ければ評価損を抱える可能性があり、短期金利がさらに上がれば逆ざやもあり得る。
慎重にはなるが、なんら手をつけないことはないだろう。これまでは(金利が低く)円に投資先がなかったが、普通の状態に戻りつつある」
――現在16%台の中核的自己資本(CET1)比率の目安は。
「金利リスクが高いと評価損益のボラティリティー(変動率)が大きくなるため、高めに保っておく必要がある。15%を運営上の『ガードレール』にしている」
――赤字になれば配当がなくなる見込みですが、25年度以降の見通しは。
「26〜28年度のうち、早期に復配したい。それが責任だ。(JAグループに上乗せ金利を払う)奨励金の水準を下げる話は一切無い」
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農林中金は外貨運用での金利リスクを小さくし、代わりに信用リスクを取る資産に分散する方針だ
――運用でJAを支えるビジネスモデルの根幹に限界があるのでは。
「安定還元をするのが農林中金の最大の使命だ。一方で(JAなど)会員の経営基盤を強くしなければならない。
JAバンクやJFマリンバンク(漁協の金融部門)で農林水産業への金融仲介機能を強くするために、デジタルなどのインフラを支えていく」
「農林中金自身は、市場ポートフォリオのバランスをとる。これまでは資本効率と流動性が高く一定のリターンがある米国債中心だった。
債券は資本を食わず流動性があるため『キング』だった。これからは分散投資の基本に立ち戻る。収益力は下がるかもしれないが単純には戻ってはいけない。どの水準がいいかは日々頭を使う」
「市場以外の部分でも、食・農関連法人などを中心とした農林中金らしい融資ができるかどうかだ。まだまだできていないが、JAの顧客を含めて資産運用で手数料を得る事業にも力を入れたい。
挑戦的だが、アグリビジネスなど事業投資もしていきたい」
――本業の赤字を金融事業で補塡するJAの仕組みを改める必要があるのでは。
「JAグループがサステナブル(持続可能)にやっていくのが必要条件だ。資材高騰と地域の人口の減少、担い手不足という3つの危機がある。
すんなり変えられるものではないが、スマート農業など農林水産業を省力化できるスタートアップの支援を農林中金はやっていくべきだ」
――理事長の責任の取り方は。
「3月までは2割減俸し、4月からは(2割減給した分からさらに)3割減らした。幹部も一定のカットがある」
(聞き手は北川開)
日経記事2024.06.19より引用
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