10日の東京株式市場で日経平均株価は続伸し前日比の上げ幅は一時300円を超えた。午前終値は117円高の3万9395円となった。
4万円に接近し上値が重くなる中で、相対的に堅調なのが保険などの金融株だ。10日には著名投資家ウォーレン・バフェット氏が率いる米投資会社バークシャー・ハザウェイが2019年以来の大型起債をした。市場では日本株を支える材料として受け止められている。
10日はMS&ADインシュアランスグループホールディングスが一時2%高となった。
SOMPOホールディングスや東京海上ホールディングスなども買われた。業種別TOPIXで銀行は1%高、保険は0.9%高で午前の取引を終え、それぞれ上昇率の2位と4位だった。バークシャーが保有している三菱商事や三井物産などの商社株も買われた。
バークシャーは1日に円建て社債の発行の準備に入ったことが明らかになり、10日に2818億円の発行条件を決めた。
足元で想定されている償還はなく、フィリップ証券の増沢丈彦株式部トレーディング・ヘッドは「償還による借り換えよりも新たな日本株への投資が期待される」と指摘する。
連想的な買いが入りやすいのは、バークシャーが保有している日本の5大商社株だ。1日には住友商事の株価が一時前日比5%高、伊藤忠商事と三井物産はともに4%高まで上昇し、思惑的な買いが入った。
日本株への投資資金はほとんどを社債で調達してきた=ロイター
ただ、バークシャーが商社株の保有比率を引き上げたことに関する大量保有報告書や変更報告書は23年7月以降は提出されていない。
バークシャーは今年2月に公表した恒例の「株主への手紙」では、5大商社株の保有比率は最大でも9.9%までとする方針を示した一方、すでに約9%を保有していることを明らかにした。買い増しの余地が少なくなる中、別の銘柄への投資も期待される。
専門家の間で次に買う銘柄として、期待が大きいのは三菱UFJフィナンシャル・グループなどの金融株だ。
配当利回りが比較的高いだけでなく、日本が脱デフレで金利高となれば、収益が改善することが期待される。海外企業などに積極投資していることが評価されそうだとの見方もある。
大和証券の木野内栄治チーフテクニカルアナリストは保険株に注目する。「商社株が上昇した際は、起債の1〜2カ月ほど前から株が上昇していたので、すでに別の銘柄を買っている可能性がある」と指摘する。
日本株が急落した8月5日以降の騰落率をみると、東京海上ホールディングスが36%上昇しており、買われている期待があるとの見方を示す。
木野内氏は海運株についても「市況に影響される事業をしていることや配当利回りが高いことが商社と似ており、バフェット氏が好む可能性がある」と話す。
今回の起債により、年間の発行額は4月の2633億円と合わせて5000億円を超え、過去最高となる。楽天証券経済研究所の窪田真之チーフ・ストラテジストは「バークシャーを含め、海外投資家が日本株を買う意欲は高いとの期待が膨らむ可能性がある」と指摘する。
(大越優樹)