ままちゃんのアメリカ

結婚42年目のAZ生まれと東京生まれの空の巣夫婦の思い出/アメリカ事情と家族や社会について。

鳥瞰な旅

2022-10-04 | アメリカ事情

カリフォルニア州聖なるシャスタ山

 

 

 

 

今年も長姉の夫の日本風に言えば6回目の命日がやってきた。 毎年義兄の逝去の日には未亡人となった子のない姉を訪ね、多くの思い出を聞き、語り、姉妹の時間を楽しく過ごすが、今年も日本の姉は来ることが出来なかった。 欧米では、まるでコロナは立ち去ったかのように人々は振る舞い、もう我慢ならぬとばかりに旅をほとんど一斉にし始め、どの空港も溢れんばかりの旅客である。 その旅客の一人になって私は、それでもコロナに影響されることなく、一度も毎年恒例の北行きを断念することはなかった。 

出発前に、花を手配していたので、命日の前日にいつもの長い箱にきっちりと梱包された花束が配達された。 姉は2ダースの花を喜び、墓地へ持っていく花を5輪ほど選んだ。 「配達される花束は、幾つになっても本当に心が躍るし、嬉しい」と、そのお裾分けを墓前に生けると、深閑としたその古い墓地に、さわやかな風が吹き渡った。 「そうなのよね、風に乗って多分世界中を飛んでいるんでしょうね」と思いながら、「今年もやってまいりましたよ」と義兄に挨拶をした。 近くには私たちの父や弟の墓石もあり、二人にも声をかけた。

たった3ヶ月前にも長姉を訪った私だが、あの時は姉の急病に忙しないことだった。 いまでは姉はすっかり体調は良くなり、それを実際にこの目で確かめたかった旅だったので、安堵もした。来月には、いわゆる「大台」を迎える姉は、ますます元気で来年の日本旅行を計画するなど、元気に生きていく気概も感じ、ほっとした。 

その旅の際には、私が付き添うことになるが、それがいつになるのかは、私の引退時期によるのだ。 来年こそは、引退致したく思っているが、日々の勤務では次から次へとやらなくてはならないことがあり、それでも引き際をしっかり線付けしなければと最近特に強く思う。 次世代に譲ることは、とても重要なことだ。

そんなことを考えながら、帰りの飛行中、加州に入った時、眼下に広がる湖や貯水湖の縁取りが幅広く白くなっているのが見え、ちょっと注意して見ると、河川もかなり干上がっているのが、わかる。 もともと加州は砂漠を含む荒野や岩地や山脈がたくさんある地だが、そこここにある森林が、空きさえして、やけに茶色い。 そんな光景が長く続き、雨乞いダンスを本気で期待するか、日常の祈りに頻繁に降雨を願わなくてはならないと思っているうち、帰港地が近付いてきた。 

すると乾涸びた荒野が不意に、緑の果樹園になって来た。 律儀なまでに真っ直ぐな列で整然と果樹園や各種の野菜が育っているのがわかり、そこに農家の勤勉さがはっきり見て取れる。 鳥瞰でなければこの小さな感動はなかったかもしれない。 

ほぼ見渡す限りのよく整頓された加州中部の農業のありように感謝の念を持った。 ここが世界の食物庫と言われるのは、温暖な気候だけが原因ではなく、開拓時代からの農家の地道な努力が大きく影響しているのだ。 当然のように期待されてきた自然の水量が底をつき始め、各農家は自力自費で地下水を利用するために、さらに深い井戸を堀り、なんとかやりくりしている。 

地球も年を取っているから、老いに伴うさまざまな障害を生じている。 それでも人は懸命にそうした障害を乗り越えてきているのを感じ、再び希望さえ持つ自身の楽天さを今更喜べる単純さ。 そして地球が引退する前に、私も引退しなければ、の思いを新たにした。

 

新たな希望を持って毎日を始め、嫌な思い出を後に残し、より良い明日への信念を持とう。

 


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2 コメント

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Unknown (fennel)
2022-10-04 09:14:29
普段、何気なく見過ごしていることや、気付かないことを教えて下さってありがとうございます。そうか地球も年取っているのかと思うとお互い労わって行こうと思いました。そして再生の力を信じていこうとも。
fennel様 (ままちゃん)
2022-10-08 01:37:22
コメントをありがとうございます。
再生の力、目にするだけでも元気になれそうな気がします!

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