ままちゃんのアメリカ

結婚42年目のAZ生まれと東京生まれの空の巣夫婦の思い出/アメリカ事情と家族や社会について。

唖然とする感覚の違い

2022-06-02 | アメリカ事情

1672年作「キリストの入墓」の彫刻にはマグダラのマリアが悲しみの涙を浮かべている。

 

 

 

最近ニューヨーク州サフォーク郡警察署はFacebookに、下図の護身用に多く用いられる2発(だけ)撃てるデリンジャー銃を所持している男性を違法行為とみなして逮捕したことを投稿した。

生涯拳銃などを実際に触れるどころか目にすることもなく、ましてや日常生活にその必要性を一切感じない日本人としては、この私のように、一見しただけで、恐ろしいと思うのではないだろうか。 ところがこのフェイスブックの投稿に対しての一般市民のコメントは日本人の感覚とは程遠いものである。 そのコメントに賛同する数にも日本人の感覚にはないものがある。

 

old gun recovered police funny comments

アンソニー・ディアス

アンティーク・ロードショウ(公共放送局PBSの巡回興行で各地のアンティークをその道のプロが鑑定し、その価値を持ち主に示す米国の人気番組)へ行く途中の男性を逮捕!! よくやった、サフォーク郡警察署!

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リッチ・ジョン

その拳銃のシリアル番号は1。

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ジア・アンジェラ

この逮捕は1879年のことなの?

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マシュー・ゴンザレズ

逮捕した警察官は誰? ワイアット・アープ?

 

その他にも次のようなコメントが続いた:

 

それでは誰が、「英国軍が来る!」【かつて独立戦争時にポール・リヴィアが真夜中の騎行でそう人々に報らせた】と知らせてくれるの?

その男を連行した時の馬車の速さはどのくらいだったの?

その逮捕された男は、チャタヌガ行き列車の中で列車強盗から身を護るために所持していたんだよ。

 

この拳銃はご覧になられるように、小型上下二連の連装銃で、弾倉をもたない護身用で、昨今の集団銃撃事件に使用された米国製自動小銃AR-15やロシア製自動ライフルAK-47のような大量殺戮を目的としてはいない。 ただしこのデリンジャー小銃は小型故に暗殺用としても用いられ、かのリンカーン大統領暗殺にジョン・ウィルクス・ブースは使用したのだった。 だから、一眼見て恐ろしいと思う日本人の感覚は正しい。 古式だろうが、小さかろうが、二連銃だから、二発続けて撃てる凶器である。 その古さと型を見てジョークにするアメリカ人はやはり本当に銃に対してかなり麻痺観があるのが伺えるコメントだと私は受け取る。

ちなみに全米一銃規制の厳しい州はカリフォルニア州だが、一番安全な州はハワイ州、最近富に銃規制環境が改良された州はコロラド州である。 しかしながら、そのカリフォルニアでさえ、今年に入って極最近二つの銃撃事件が、サクラメントとオレンジ郡で起こり、死者も出している。 そして全米の銃撃事件は1840年から1999年までに352件、2000年以降現在までの22年間には、圧倒的な速さで1000件にならんとしている。 そこには銃規制だけではすまされない因子が見え隠れしている。

アメリカが犠牲者の命以外に失っていったものは、道徳心、互いを思いやる心がけで、ますます増えていくのは、孤独な者はますます孤独に追い込まれるような重圧を生む社会情勢、アルコール中毒や麻薬中毒、弱者虐め、多発する離婚、親の育児放棄、家族崩壊あるいは離散、過度な権利主張、義務感の欠如、廃れていく信仰心、などなどざっと挙げただけでもこれだけある。 1960年代、台頭してきた放任、過度の寛容性が本来あった自己抑制を破壊することに拍車をかけたのは間違いはない。 

そして大麻をとうとう娯楽用に使用することをアメリカの多くの州は法的に認可し、カナダではコケインさえ大統領が今や認可せんという気配がある。 悪に立ち向かえないならば、いっそ合法化してしまえばいい、という社会の風潮は、何一つ人々の幸せにつながらない。

道徳に反する風潮が積み重なって雪崩現象となるのは必然で、火に油を注ぐが如きだ。 子供が若者が銃を取り、学校へあるいは教会やシナゴーグ、モスク、劇場、ショッピングセンター、病院と多くの人々が利用する場所へ出掛けて、事件を起こす。 その裏にはいつも精神的病いに対する安易な対策が原因の一つとして影を落としている。

夫のまだ若い甥は精神心理分析医としてユタ州に住んでいるが、週の半分はカリフォルニアへ飛んできて、州立刑務所の服役者を対象に治療をしている。 彼はもともと青少年層が研究・治療対象であるが、刑務所からの要望が多い。やむを得ず、そうしているが、実際には治療を最も必要とするのは、服役者ではなく、そうならないようにするために若い層を中心に治していかねばならないはずだ。

知り合いの内科医の許で働くナース・プラクティショナーは、話の弾みで夫の甥の多忙さが話題になった時、突如真剣な顔をして、「私は刑務所に若い人を送るよりも前に、精神医学を再学習し、その治療の一環として働きたいのです。その方に私はシャドウできるかお願いしてもよろしいでしょうか。」と訊いた。(シャドウイングとは、専門医師のそばに付き、その医師の診察や治療・手術などを観察して学んでいく方法)「何故ならば、内科での患者を診ていると、いかに精神衛生が身体に影響を及ぼすか、顕著なんですよね、そして内科治療よりもむしろ内心治療(心療)が如何に必要か実感するんです。」

40,50年ほど前までは、親が道徳の基本、正直、勤勉、努力などを家庭の中で教えてきたのだろうが、今ではすっかりそれは「学校」や「教師」や精神分析医学へ責任転嫁されているようである、アメリカでも、日本でも。

 

 

 


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2 コメント

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Unknown (aromadeyui)
2022-06-02 08:59:40
こんにちわ

銃規制と言えば、私が初めてアメリカの地を踏んだのは、あのロス暴動の渦中でした。
ニューヨークでは5/1にタイムズスクエアで黒人の女子学生が抗議の声を上げていて、多くの人々が耳を傾けていました。
夜ホテルでテレビを見ていると、外からパンパンと乾いた音がして、その後パトカーのサイレンが聞こえたのを、昨日のことのように記憶しています。
黒人解放を進めたリンカーン、そして今もなおカラードの人々への圧力、若き人々へ銃口を向ける人々。
やはり持つことをやめない限り、減少には程遠いし、これからも繰り返される悲しみ。
暴力的なものは自由にネットで閲覧できる昨今、その世界だけで解消してほしいモノです。表現の自由の境界線は何処ですが
aromadeyui様 (ままちゃん)
2022-07-05 02:04:32
コメントをありがとうございました。

その暴動とはロドニー・キング氏の件でしょう。あれもひどいものでした。この国は議会の国のはずなのに、話あうことや話せばわかる、ということは最後の最後に思い出されることのようです。残念なことですが、人種の坩堝のよくない点の代表的な事柄なのかもしれません。

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