夫の系図を手がけた時、どのラインもアメリカ独立戦争を通っているのに気がついた。つまりPatriots(愛国者)である。そんな先祖を持つ人々が1890年に設立した、婦人団体としてはアメリカで最大のDaughters of the American Revolution(DAR)というのがある。日本語にしたら、愛国婦人団体と言うそうだが、なんだかそれだと戦時中のドラマで見る鉢巻して竹やりを持った怖い国防婦人団体のよう。実際は、直系先祖が独立戦争を戦ったPatriotsであると証明された子孫の女性の団体で、歴史保存、教育、愛国精神を育む活動を行っている。その一環として1896年に創設された図書館は、系図家にとって、いつかは行きたい垂涎物図書館である。
男性子孫には、Sons of the American Revolution (SAR)が、1889年に設立されている。趣旨は概ねDARと同じである。このメンバーには、セオドア・ルーズベルト大統領、ウィンストン・チャーチル(アメリカ生まれの母親の血筋から)、陸軍元帥ダグラス・マッカーサーなどがいる。俳優のロブ・ロウは、先祖は英国に雇われたドイツ兵(Hessians)であったが、寝返ってアメリカ独立のために戦ったので、その功績が認められて最近会員になっている。アフリカ系アメリカ人でもハーヴァード大学教授のヘンリー・ルイス・ゲイツ博士も会員である。
アメリカには、こうした血筋・血統を通じて設立されたソサエティと呼ばれる会が多い。メイフラワー号に乗船した祖先を持つ子孫たちのThe Mayflower Society、フランスのユグノー教徒(French Huguenots)でヴァージニア州マナキンタウンに移植した祖先の子孫たちの作ったHuguenots Society、ウィリアム・ペンと同船したクゥエイカー教徒の祖先を持つ人々のWelcome Society等々、数多い。尤も泡沫な組織も少なくない。
今から少し前に、私は、まず長女を、今年二女を、そして夫と息子三人のDARとSAR入会登録を済ませた。実際に独立戦争で戦った直系先祖まで、出生、婚姻、死亡、それに従軍した軍歴などの書類を集めて、全ての世代の書類を提出するのである。
夫や子供達の場合、私は14,5代前まで調査をしてあったので、7代前に独立戦争で戦った先祖の書類収集はすでにあった。しかし通常の証書や書類以外の、教会記録と先祖が所有した聖書の書き込みに、とても助けられたのだ。合衆国の国勢調査は1790年から始まり、それ以前を調査するには税関係記録や、軍事記録、遺書、教会記録や各家庭に大抵あった家族聖書によくある家族の生死や婚姻の記録が、必要である。
この調査や資料収集期間は、私の場合は、すでに調査しきれていたので、短かった。同時に職場の同僚の一人も申請するにあたって、請われてその調査を手伝ったが、これは少々時間がかかった。全ての記録がデジタル化されてはいないから、昔ながらの、裁判所や郷土資料館やDARの図書館に手紙やメイルや電話で確かめ、コピーの郵送を頼むこともした。この人のケースも、やはり母方に長く伝わる家族用の古い聖書の余白ページにきちんと貴重な記録がなされていたので、それに助けられた部分が大きい。
家族の一人がDARやSARの会員であると、それこそ芋づる式に兄弟、姉妹は即入会できる。会員の配偶者も入会資格はあるが、私の先祖ではないので、それは遠慮した。入会してどうなるのか? 一つの合衆国民としてのアイデンティであり、DAR,SAR会員同士のネットワークも強い故、履歴書に書くと箔がつく、とも言われるが、私にとっては、直系子孫の夫や子供達が、合衆国の独立のために戦った愛国者だった先祖を忘れないで欲しい、と思うからである。