医療破壊・診療報酬制度・介護保険問題を考える

リハビリ診療報酬改定を考える会を中心とするメンバーのブログ。リハ打ち切り問題や医療破壊等に関する話題が中心。

保険会社を第三分野に参入させると日本も『SICKO化』する

2007-09-19 18:54:31 | リハビリ打ち切り/医療破壊問題
日本の保険会社は、映画SICKOに描かれている米国の業界のような悪質な体質ではないので、いわゆる第三分野と呼ばれる医療保険等に参入して、経済が活性化した方が良いと考える人がいるかもしれません。

でもそれはとんでもないことです。

基本的な体質は外資も国内の保険会社も同じです。慈善事業ではなく、私企業ですから、社会的責任よりは、ぎりぎりまで利潤の追求をするのはあたりまえです。

SICKOに出てくる保険会社の支払い拒否の話が、リアリティーをもって迫って来たのは、私自身、患者さんの主治医として、保険会社の対応を知っているからです。

この場合は損害保険会社ですが、交通事故で後遺症が残ったとき、その障害の程度を認定しなければなりません。多くの場合、主治医が認める障害等級を保険会社は認めません。特に高次脳機能障害の場合は、確実に値切ってきます。具体的には裁判で争ってきます。そのときに登場するのが、SICKOにも出て来た「審査医」です。彼らの仕事は、正当に保険金を認めることではなく、ただ一つ、値切ることなのです。しかも、そのような医師による意見書は、患者さんを診察もせずに、カルテ情報のみから、これも認めない、あれも駄目、と支払い拒否の『根拠』を書き連ねているだけです。SICKOでは支払い拒否をしたことで患者を殺すことになった医師が、良心の呵責に耐えかねて議会で証言していましたが、日本ではそのような医師はまだ出てきません。

さきほど、損保会社に聞いたところ、値切った額の大きさによる医師へのボーナス(報奨金)は(少なくともその会社では)ない、と答えていました。しかし、子会社の医者が『中立的』な判断ができるとは思えません。甚だ疑問です。

このようなミラーイメージのようなお話が、日本の損害保険の後遺症認定で現実にありますから、この業界が第三分野に本格参入したときには、とんでもない事態になると思われます。

映画にあった笑い話のような酷い話が日本でも現実になるかもしれません。意識を失って救急車で運ばれたのに、救急車を使うという『事前告知義務』に違反したため保険会社が支払い拒否した、というお話。

そうです。彼らは契約のプロ。そして、利益追求のプロ。現実の医療なんてどうでも良いのです。

国民皆保険は死守しなればなりません。

臨床医D
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 姿なき占領 | トップ | 整形外科関連3団体とリハビ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

リハビリ打ち切り/医療破壊問題」カテゴリの最新記事