ゆうわファミリーカウンセリング新潟 (じーじ臨床心理士・赤坂正人)     

こころと暮らしの困りごと・悩みごと相談で、じーじ臨床心理士が公園カウンセリングや訪問カウンセリングなどをやっています。

家庭裁判所の離婚調停での経験から-黙っていても「まねきネコ」のように幸せを招く臨床家をめざして

2023年11月13日 | 心理臨床を考える

 あるかたのブログを読んでいたら、まねきネコのお話が出てきました。

 まねきネコ、といえば、じーじのブログにもありましたので、再録します。

 2018年ころのブログです。

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 以前、家庭裁判所で離婚調停に立ち会っていた時のこと。 

 調停委員さんからたまに、調査官が立ち会ってくれると話し合いがまとまることが多い、と言ってもらうことがありました。

 もちろん、お世辞が大部分だったとは思うのですが、たまにはそういうこともあったのかもしれません。

 優秀な調査官が立ち会えば、適切なアドバイスをして、話し合いをうまく進めることも可能だと思います。

 しかし、じーじのような落ちこぼれの調査官の場合は、特に有効なアドバイスもできずに、ただ茫然と立ち会っていたような気がします。

 もっともそんなじーじでもできていたことが一つだけありました。

 それは、お父さんやお母さんがいい発言をした時には大きく頷き、あまりいい発言でない時には動かないでいる、ということでした。

 凡庸なじーじにできることはそれくらいのことで、ほとんど黙って立ち会っていることが多かったように思いますが、それでもそれなりに影響を与えていたのかもしれません。

 じーじはそういう関与の仕方を「まねきネコ」としての調査官、と自称していました(じーじの顔はあんなに可愛くはないのですが…。それでもたまに手を顔のそばに近づけて、こっそりとまねきネコのまねをしてみたりしていました)。

 いま振り返ってみると、アドバイスなどはしなくとも、ただニコニコとして、そこに存在をしていることこそが大切ではなかったかと思うのです(もっとも、深刻なお話の時に、なんで笑っているんだと怒られたこともありましたが…)。

 そしてこのことは臨床家全般にも通じそうな気がします。

 どんなに厳しく、困難な状況であっても、臨床家が多少は困っても、しかし、あまり動じずに、自然体で泰然として存在すること、このことがどれだけ多くの言葉よりもクライエントさんには重要なことではないかと今は考えています。

 拙い文章を書いてしまいましたが、今後もさらに思索を深めていきたいなと思います。 (2018?記)

 

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大島亮吉『山-随想-』1978・中公文庫-大正時代の大雪山登山の記録です

2023年11月13日 | 随筆を読む

 2022年11月のブログです

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 大島亮吉さんの『山-随想-』(1978・中公文庫)を再読する。

 ここのところ、大雪山の動画を観ていて、その中にクワウンナイ川という沢を遡る動画をいくつか発見、その沢の美しさに感動したが、以前たしか大島亮吉さんという昔の登山家がクワウンナイ川を遡った本を読んだことがあるのを思い出した。

 それで読んでみようと探したが、例によって、本棚の中になかなか見つけることができず、半月くらい探して(?)ようやく発見、再読をした。

 大島さんは慶応大学の学生だった大正時代に大雪山の山々を登った人。

 当時、大雪山には登山道がなく、沢から登っていたようで、大島さんはその頃、大雪山を研究していた小泉秀雄さん(上川中学校(今の旭川東高)の先生)の登山記録などをもとに登山をする。

 本書の中の「石狩岳より石狩川に沿うて」という一文にその記録が記されているが、大島さんの大正9年夏の11日間にわたる山歩きの記録で、とても感動的だ。

 一行は4人で、まずは松山温泉(今の天人峡温泉)からトムラウシ山を目指してクワウンナイ川を遡る。

 クワウンナイ川の滝の瀬十三丁と呼ばれる川床の描写がとても美しい。

 トムラウシに登頂後、石狩川の源流から石狩岳に登頂、その後、石狩川を下る。

 当時、ここらあたりは奥山盆地と呼ばれ、旭川の近文アイヌの人々がイワナ釣りやクマ狩りに訪れていたようで、大島さんらと彼らとの交流がとても印象的だ。

 大島さんのアイヌへの尊敬の念がひしひしと伝わってきて、こういうすばらしい日本人もいたのだなあ、と感動する。

 その後、大箱・小箱の難所をなんとか通過し、層雲別(今の層雲峡)の温泉に到着する。

 読んでいると、登山や山歩きというよりは探検という感じだが、読んでいるととてもわくわくして面白い。

 こういう人たちの貴重な報告の積み重ねがあって、今があるのだなあ、と思うと、歴史の大切さを感じてしまう。

 なお、本書の中にある「北海道の夏の山」という一文も同時代の十勝川上流の山歩きと川歩きの記録で、こちらにもアイヌの人々が登場し、なかなか感動的である。

 山好きの人に限らず、地理好き、歴史好き、民俗好きの人にも、とてもよい本だと思う。 (2022.11 記)

 

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