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弁護士・元ロースクール教授宮武嶺の社会派リベラルブログです。

9・11同時多発テロから10年 アメリカ市民は犠牲者だが、アメリカは加害者だ

2011年09月10日 | 海外の話題


 弁護士会の会報は「自由と正義」というのですが、ブッシュ前米大統領によるイラク戦争以降、本当に「正義」という言葉が嫌いになりました。

 アメリカが長年「正義の戦争」をしつづけてきたこと。

 それに対するイスラム過激派の聖戦という名のテロ。

 その双方に言えることは、自分たちの「正義」を実現するためには相手を殺すことも厭わないということです。

 また、今年7月のノルウェーの極右による銃乱射・大量殺害にも、人の命より自分だけの「正義」優先の思想を感じます。

ノルウェー連続テロ事件生存者「私たちが共にどれだけ大きな愛をみせることができるか考えてみてください」

ノルウェー連続テロ事件

 

 

 「地上唯一の超大国」アメリカ合衆国。

  10年前の2001年9月11日、そのアメリカがかつてない惨劇に見舞われましたのが同時多発テロです。

  旅客機4機が乗っ取られ、2機がニューヨークの世界貿易センタービルに突入しビルは崩壊しました。3機目はワシントン近郊の国防総省に激突、4機目はペンシルベニア州に墜落しました。

 死者は計約3千人にもなります。


9・11同時多発テロ

 


 しかし、9・11テロは大規模とはいえ、侵略戦争ではなく、犯罪でした。

 ですから、これに対する「自衛戦争」は成り立ちません。

 対処法としては、警察力を行使して、国際間の取り組みで犯人を見つけ出し、身柄拘束し、裁判にかけ、適正な処罰をすれば良かったのです。今年ビンラディン容疑者を見つけたように、CIAなどあらゆる情報機関を使ったら良かったのです。普通の犯罪でも何年もかかることはざらにあるのですから。

 ところが、当時の共和党ブッシュ政権は、ろくに捜査もしないで9・11は同容疑者の率いる国際テロ組織アルカイダの犯行と断定し、「自衛戦争」だと称して、2001年にアルカイダをかくまったタリバン(とアフガニスタン)を攻撃しはじめました。

 アフガンの多くの市民にとっては、とばっちりでしかありません。明らかに国際法違反の武力行使です。

 そして、さらに、アメリカは2003年にイラク戦争を始めました。

 これらの戦争をアメリカ国民は「愛国心」から、当初熱狂的に支持しました。

 しかし、ブッシュ政権の本当の目的は、親ブッシュが湾岸戦争でなしとげられなかったフセイン政権打倒と、石油と復興利権を含む湾岸支配にあったことは、少なくとも、アメリカ以外の諸外国の多くの市民にとっては明らかでした。

 最初から、自衛戦争、対テロ戦争とは名ばかりでした。イラクが攻めてきたわけではないことは明らかだったし、イラクにアルカイダはいないことは知られていたからです。

 いつの間にかイラクに「大量破壊兵器」がある可能性があって、サダム・フセインの独裁がなされている、というだけで、国際法違反の戦争が正当化されたのです。

 そういう国なら他にも一杯あるのに。そんなことを言っていたら、朝鮮半島で戦争が始まりかねません。アメリカが支援している国にもいくつもあるのです。

戦争中毒国家 アメリカ合衆国

映画「父親たちの星条旗」を思い出させる消防士達

 


 イラク戦争は国連安全保障理事会の明確な決議がないまま、アメリカが募った有志連合で開始しました。

 しかし、フセイン旧政権は大量破壊兵器を持っていなかったし、アルカイダとの関係も立証されませんでした。

「正義の戦争」の大義はなかったのです。

二機目のジェット機が突入の瞬間



 日本では、アメリカの意を汲んで郵政民営化を行ない、市場原理主義で日本をどん底に叩き落した、ブッシュのポチとまで呼ばれた小泉純一郎元首相が、「ショー・ザ・フラッグ」と言われて、「復興人道支援活動」に従事させると言いだし、とうとう自衛隊を海外派遣してしまいました。

 ブッシュ大統領やブレア英国首相は曲がりなりにも、イラク戦争の大義がなかったことについて後に追及されましたが、小泉元首相がこの件で問われることがないのは、日本の民度がいかに低いかということの現れだと思います。

やはりEU大統領になるべきでなかった男 英国前首相ブレア

小泉・ブレア・ブッシュ各首脳



 今、前原民主党政調会長が、わざわざアメリカで、「集団的自衛権の確立」「PKO活動における自衛隊の武器拡充と活動範囲の拡大」「武器輸出3原則の緩和」などと言い出しましたが、元を正せば、これも湾岸戦争での小沢自民党幹事長の90億ドル戦費負担と、イラク戦争での小泉首相の自衛隊派兵が元凶です。

 小泉首相の「自衛隊の活動しているところは非戦闘地域である」という歴史に残る迷言が残されましたが、戦争中なのに「非戦闘地域」なんてあるわけないでしょう。

 イラク戦争では、アメリカは、ロシア・中国はもとより、常任理事国フランスをはじめとする欧米主要国に反対され、安保理決議が取れませんでしたから、とにかく支持国が多数欲しかった。

 そのアメリカからの要請に応じた理屈抜きのアメリカ盲従です。

 派遣された自衛隊員は、奇跡的に全員ご無事で帰国されましたが死傷者が出ていてもおかしくありませんでした。

 そして、自衛隊員がどれだけ劣化ウラン弾で被曝したのか、いつ放射線後障害が出るかもわかりません。

 戦争に加担すれば、相手も自分も必ず傷つく。

 しかし、日本国民は小泉元首相を追いつめることが出来ないまま、現在に至ります。

説明不要

 

 米国の圧倒的な軍事力で二つの国の旧政権は崩壊しました。しかし、テロがなくなるどころか、頻発するようになっています。

 そして、アフガンとイラクを合わせると数百万人の難民が発生したのです。

 2011年5月、アメリカは9・11テロの首謀者とされるウサマ・ビンラディン容疑者をパキスタンで殺害しました。

 パキスタン政府に連絡もなく行なったことで、また同国の市民の反発を呼びましたし、なにより、犯罪の被疑者を刑事手続きにかけることなく暗殺するアメリカの思想はブッシュ政権のときと何ら変わっていないことが明らかになりました。


アフガンの子供達



 アフガニスタンでは、「誤爆」が続き、民間人の犠牲者も増え続けています。旧政権タリバン系の活動が広がっているとされ、ジハード(聖戦)に加わる者も増えています。

 もちろん、その背景には、米軍などによる市民の被害と、「異教徒」の駐留への反発があるのです。

アフガン大統領 米軍とアメリカ政府に「最後の警告」 「誤爆」の連続で、女性子どもを含む多数の民間人死亡

米軍の無人機による誤爆に抗議するアフガンの人々


 また、イラクでは、イラク戦争前はアルカイダが目立って活動することもなかったのに、アルカイダもイラク戦争でアメリカがした蛮行への復讐心を利用して、かえってイラクでの基盤を確立することになりました。戦火で親を失った子供も多く、恵まれない子らがアルカイダに勧誘されることがあると伝えられています。

 今年の8月半ばに10都市ほどで、各地の武装勢力が連携したとみられる爆弾テロが起きました。

 オバマ大統領が当選したときの公約にである米軍完全撤退も今年末から延期し、駐留を継続させるかどうかも議論されはじめているのです。

傷ついたイラクの無辜の民


 アフガン戦争だけで毎年9兆円近くの戦費がかかっているのにテロ抑止の効果がない。なぜ、テロが絶えないのか、その根本から考えるべきです。

 一つには、米国はじめ先進国による政治的・軍事的・経済的な圧制によって、世界に格差や抑圧が生じている問題。

 二つ目には、それも原因となり、多くの途上国内部での格差や抑圧がある問題。

 三つ目は、この二重の格差・抑圧から逃れて、より豊かな国に大量に移動する移民・難民に対する差別と抑圧がある問題。

 アメリカは9・11から10年を期するテロに今おびえていますが、以上の問題に真正面から取り組まなければ、テロの恐怖に永遠に脅かされることになります。

 
9・11テロは3千人。対テロ戦争での米兵の死者は計6千人にのぼり、帰国後、心的外傷後ストレス障害(PTSD)に悩む人も多いのですが、その何十倍もの被害を諸外国に与え続けていることを忘れるべきではありません。

 また、イラクやアフガンでの捕虜虐待や、対テロ戦争に必要だからとしてブッシュ政権の時代に制定された、世界中の市民を監視する「愛国法」など、対テロ戦争には人権侵害が必然的につきまとうことも銘記すべきです。

アメリカがバグダッド近郊に作ったアルグレイブ収容所で米軍により拷問されるイラクの人々

 


 アメリカが世界の人々を苦しめ続けるから、アメリカ市民が苦しめられる。

 日本も同じ苦しみを負うことはありません。

 二度と戦争に加担することなく、国際災害救助隊を創設して国内はもとより国外の天災に対応することこそ、我が国の真の国際貢献といえるでしょう。

憲法記念日2 日本に軍隊はいらない!国際災害救助隊の創設を!!

戦争に加担するのはもう嫌だ

 

 

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9・11テロ後のニューヨークに白い灰が降り積もった

 

 

具体的テロ情報 米大統領対応指示

9月9日 11時59分 NHK

同時多発テロ事件から10年となるのを前に、アメリカ国内を狙った具体的なテロ計画の情報があるとして、オバマ大統領は、治安当局に対して情報の確認を急ぐとともに、警戒を強めるよう指示を出しました。

アメリカの国土安全保障省の高官は、NHKの取材に対して「まだ確認されてはいないが、具体的で信 ぴょう性のあるテロ計画の情報がある。殺害されたビンラディン容疑者の隠れがからも11日のテロ計画に興味を持っていた情報が出てきており、情報の裏付け を進めている」と述べ、アメリカ国内を狙ったテロ計画の情報があることを明らかにしました。これに関連し、アメリカのメディア各社は、先月、2人から3人 の不審な人物が空路アメリカ国内に入り、11日の前後にワシントンかニューヨークの橋かトンネルを狙った爆弾テロを計画している可能性があると伝えていま す。またホワイトハウスの高官によりますと、オバマ大統領は、8日、この情報についての報告を受け、治安当局に対して情報の確認を急ぐとともに警戒を強め るよう指示したということです。

 

 

社説:9・11から10年 テロ抑止へ初心に帰れ

毎日新聞 2011年9月11日

 この10年を振り返ると、いささか重い気分になる。テロ抑止の願いは実ったか、世界はより安全になっただろうか--。

 「流れ落ちる建物は、巨大なこぶしでつぶされる砂の城のように、石と鉄がおびただしい滝となって細かくたてにこぼれだした」。作家のリービ英雄氏 は、ニューヨークの世界貿易センタービルが崩れるさまをそう表現した(「千々にくだけて」)。ワシントン郊外の米国防総省も「巨大なこぶし」に殴られたよ うに、えぐれた側壁から炎と煙が噴きだした。01年9月11日。超大国の経済と軍事を象徴する建物に、ハイジャックされた旅客機が突っ込み、約3000人 が死亡した日だ。

 ◆世界は安全ではない

 世界の激動が始まった震源地、グラウンド・ゼロである。「テロとの戦争」を叫ぶ米ブッシュ政権は翌月からアフガニスタンで、03年からはイラクで 戦争を始め、両国の政権を倒した。脅威は先手を打って解消する(先制攻撃論)、米国に敵対する政権は力で倒す(レジームチェンジ)という武断的な姿勢を超 大国があらわにしたのだ。

 イラクのフセイン元大統領は06年に処刑され、9・11テロを実行した国際テロ組織アルカイダの指導者ウサマ・ビンラディン容疑者も今年5月、米 特殊部隊に射殺された。だが、国際社会には、91年の湾岸戦争で米軍がイラク軍をクウェートから追い出した時のような米国賛美の声がわき起こらない。アフ ガンやイラクからの米軍撤退が始まっても、兵士たちは凱旋(がいせん)とはほど遠い雰囲気だ。

 冒頭の問いの答えは明らかだろう。世界は決して「より安全」にはなっていないのだ。

 アフガンではイスラム原理主義勢力タリバンの攻勢が続き、かつて大英帝国とソ連の軍勢が撤退した国で、米国も敗北の恐怖に直面している。米軍の軍 事介入はベトナムへの介入を超えて最長になり、年間9兆円に迫るアフガン戦費が超大国を消耗させる。だが、米国にも意地があろう。ビンラディン容疑者を殺 したからといって、さっさと引き揚げるのは無責任というものだ。

 「イラク戦争のパラドックス」も手つかずで残っている。フセイン政権崩壊後、イラクではシーア派イスラム教徒が権力を握り、同じシーア派主導のイ ランやシリアとの関係が強まった。イラク指導部の中には、イランやシリアに亡命してフセイン政権との戦い(テロ)を続けた人が少なくない。イラク新政権が イランに接近するのは当然だ。つまりイラク戦争で得をしたのは反米最右翼のイランという解釈が成り立つ。

 今後の中東情勢は不透明だが、確かに言えるのは、湾岸戦争を遂行した父親(ブッシュ元大統領)に比べてブッシュ前大統領が中東に関する知見を欠い ていたことだ。ビンラディン容疑者とフセイン元大統領を強引に結び付け、「大量破壊兵器の脅威」を大義名分としてイラク戦争に突入したのは、返す返すも短 慮だったと言うしかない。

 だが、米国の責任を問うだけでは十分ではない。イエメンやソマリアではアルカイダ系のイスラム武装勢力が根を張り、破綻国家の趣だ。近年は欧米に 生まれ育ったイスラム教徒による「ホームグロウン・テロ」が急増し、イスラム教徒を嫌悪するキリスト教徒らのテロも目立つ。ノルウェーで7月、極右青年が イスラム系移民の増加に反発して連続テロを実行したのは、その一例だ。

 ◆中東和平に取り組もう

 さまざまな形態の過激主義が台頭している。民衆運動「アラブの春」は、ビンラディン的過激主義が魅力的でなくなった証拠という見方もあるが、手放しで美化するのは危険だ。民衆運動が過激化した例も多い。

 だが、国際秩序が流動化する中、欧米も日本も、初心に帰ってテロ抑止の方策を再検討すべきである。ブッシュ政権下で超党派の要人らが提案した中東 和平への取り組みも大切だ。ビンラディン容疑者が「キリスト教国家+イスラエル」と「イスラム教徒」の対立構造で世界を語ることには同調できない。しか し、イスラエルに対する米国の「無条件の支持」がイスラム教徒の目にどう映るか、考えてみることは大切だ。

 対話を通して過激主義の芽を摘むことが肝要である。その点、米国では来年の大統領選に向けて、茶会運動などの内向きで急進的な勢力が台頭し、異文 化との対話に前向きなオバマ政権への「弱腰批判」が強まっているのは気になる。ブッシュ政権の、力を頼むユニラテラリズム(単独行動主義)が米国を孤立さ せたことを忘れてはなるまい。

 この10年、日本には複雑な思いもある。世界の目がアフガンとイラクに向く中、北朝鮮は2度の核実験を行った。米国に「テロ支援国家」のレッテル も外させた。チェイニー前副大統領は近著でライス前国務長官の北朝鮮への対応を批判し、ライス氏は反論を用意しているそうだが、日本人にはやりきれない話 だ。

 だが、日本政府としても、イラク戦争や北朝鮮への対応も含めて真剣な反省と総括が必要だ。世界を安全にするために何が必要か。日本の主体的な関与が求められている。

 


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Unknown (平和ボケした極右)
2013-06-02 10:34:26
西欧列強には戦争反対。
原爆を落とされた国を武器にアメリカを倒そう。
返信する
Unknown (法律事務員)
2011-10-22 13:10:52
そういうあなたが正義の弁護士を気取っていられるのも、日本やアメリカという国家が秩序と正義を維持しているからだという現実を忘れない方がいいですよ。
我々が隣人に殺されることも、外国から侵略されることも殆どないのは、日本国やアメリカ米軍が日本の治安と防衛を保持してくれているからです。

戦後の日本の平和は9条なんていうお花畑な法律ではなく、米軍と自衛隊によって保たれてきたのです。
彼らの正義は、正解の正義ではなくアメリカにとっての正義ではありますが、日本の平和はそのアメリカにとっての正義によって維持されてきたことを忘れるべきではありません。
戦後60年以上の秩序を提供してきた功を無視して、一方の罪だけを取り上げるのは不公平だと思います。

弁護士は六法全書の中の法律論理と自分の価値観だけで考えてしまう傾向があると思いますが。
法律のルールや憲法のお花畑思想がそれなりに守られているのは、目に見えぬ不断の努力があればこそです。
返信する
正義のための戦争 (明日から)
2011-09-11 21:33:36
戦いはテロも戦争もウルトラマンも含めてやっている側には3つの理由しかありません.正義のための戦い、平和のための戦い、自由のための戦い.全部戦いの前につく言葉は良い言葉ばかりですよね.矛盾している.
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え、そんなこと言っていいんですか!? (ray)
2011-09-11 07:19:31
ス師にしては珍しいではないですかw

「正義」という言葉は嫌いだ、という記事を書いたすぐ上に、司法修習生のためなら「正義は勝つ」と掲げてしまう柔軟さ(いい加減さ)。

これぞ、私の信条=身上です(^_^)V
返信する
...And Justice for all (スクウォッター)
2011-09-11 01:06:18
rayさんは正義という言葉がお嫌いの様ですが、やはり、私は、rayさんは正義の弁護士だと思います。
もっとも、これは私の評価ですので、気にしないで下さい。自分で、正義の…などと言う奴はロクなもんじゃねえ。
正義は信条として持つものであって、振りかざし、押し付けるもんじゃない。
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