タムラ君へ

タムラ君があちらに行ってしまってから、何年経っただろう。
今日起きて、窓の外を見ると、
君が去った日の朝と同じく
雪が街をうっすらとおおっていた。
この雪は、午前中のうちに、すべて溶けるだろう。

確か…クリスマスの翌日だったよね。
アタシはラジオを訊きながら仕事をしていたが、
その交通事故のニュース内容に、耳を疑った。
…ああ、どうか、同姓同名でありますように！！

出かける前、
「今日は、なんだか気が重い。」みたいなことを
家族に話していたって訊いた。
仕事で、秋田から盛岡方面に車で向かった君は、
途中、濡れた路面でスリップ事故を起こした。
車は大破、君は、即死状態だった。

…何故なんだ。何故！？

棺の中のタムラ君に問いかける。
君は、眠っているように見えた。
そして、なんとなく、口元は微笑んでいるようだった。

もう、逢えないんだな。タムラ君。

あのころのアタシは、自分の離婚のことで
めいっぱい落ちていた上に、友人である君にも去られて、
本当に本当に寂しかったよ。
グズグズと、身体も心も崩れそうになり、
立っているのが、やっとだった。

君は今、どこにいるのかな？
こちらの世界のことを、見てくれてたかな？
ほら、アタシは、シッカと足を踏ん張って、
生きて行けるようになったんだよ。
もう、弱いアタシじゃない。

もっと生きてほしかったけど、
こればっかりは、なんともならないね。
君の事は忘れないよ。
だから、君も、アタシの事を見ててね。