夏至・親父の一番赤い日３

…だが！
「気持ちいいねぇ～！」などと呑気なことも言ってられなかった。
何故なら、父の愛車は、お世辞にも『ビュンビュン系』ではなく、『か～な～り・いっちゃってる系』。
後部ドアを開けるたび、ギ～ィと錆びた音がする。
しかもマニュアル車。ギアを入れれれば、ガスっガスっと鳴る。
アクセルを踏み込むと、ギャイギャイギャイ～ンンンと不気味に唸るし(笑)。
…こ、こわいよぅ。
この車で盛岡や横手、弘前にまで行ったことがあるというのだからオソロシイ！

嗚呼！アタシの車で来れば良かったよ！
父の運転は危なっかしく、
「ほら、あれが○○だ。」とか「こっち曲がれば××さんちだよな。」とか、およそ関係ない案内をしてくれる。

頼むぞ父さん（泣）！
お願いだから～前向いて運転してぇ～！
お願いだから～手離し運転やめてぇ～！
お願いだから～曲がる前にウィンカー出してぇ～(泣)！

ドライブインやお土産屋さんがある『鹿の浦』にようやく到着。そこで秋田名物『ババヘラアイス』を買って食べた。

その帰りのことは…よく覚えてない。
暑さと前日の寝不足が祟り、あたしは後部座席で寝込んでしまい、
父の恐怖のドライビングテクニックを味わわずに済んだのだった(笑)。

助手席でダルマのごとくジッと座らされてた母。
家に着く頃には、すっかり茹だっていた。
まるで、中華街の店先で蒸されている『豚まん』のようだった。

『夏至・親父の一番赤い日』終わり