2曲目の仰げば尊しと最後から2番目の赤とんぼの時だった。
背筋をしゃんと伸ばして、いつも朗々と歌うおばあちゃん。
2月の慰問の時。
歌いながら、はらはらと。
ぬぐいながら。
何かあったのか。
思い出がよみがえったのか。
「おばあちゃん、目が汗かいてるね。暖房ききすぎかな?」
感謝の言葉を述べるだけで、訳を話してくれる訳ではない。
「また来るからね。そのときにまた、元気良く一緒に歌おうね。」
笑顔で別れてきた。
トランクにギターをしまって、運転席に座って、バックミラーを見たら、
少しまつげが濡れていた。