杭工事の設計入札に参加した。
仲間の設計事務所とのベンチャーだったが私の独断で入札を決行した。
この入札物件にはいわくがあった。
いちど設計が終わっている物件だった。
工事発注間際になってその設計に大きな不備があることが発覚した。
詳細は不明だが、設計者による構造データーの偽装が行われていたようだ。
その後、この設計は破棄され、再度設計者の選定となったのだ。
私は前設計時の落札金額を知っていた。
550万円だった。
そこからはじき出して、400万円を入札金額にすることに決めた。
少々自信のある金額だった。
これなら落札できるという勝算があった。
だから仲間には一切相談しなかった。
次の日、設計事務所6社による競争入札が始まった。
一回の入札で落札業者が決定した。
落札金額は150万円だった。
私の予想を大きく下回っていた。
普通、ここで落札業者以外は一斉に退場になるのだか今回は少し違っていた。
まず、各社の入札金額が発表された。
次に、落札金額から一番かけ離れている設計事務所から順次退場になった。
その一番手は私だった。
ダントツで高かった。
ひどく恥さらしの状態になった。
私は逃げるようにすごすごと入札場を出た。
出た先には仲間の設計事務所の面々が待ち構えていた。
すかさず集中攻撃を浴びる。
「400万は高すぎやろ」
「杭の設計なんてすぐ終わるやろ」
「なんで相談せんやったとや」
みんなからブーブー文句を言われた。
なにも言い返す言葉がなかった。
たしかに杭の設計に400万円は高かぁ。
自分、なんば考えとったんやろう。
◆
夢だった。
モチーフは「旭化成杭データー偽装事件」であることはほぼ間違いない。
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