1957年
連休を利用して後楽園のこの一戦を見に来たが、ヒヤヒヤさせられたうえに好天候でノドがかわいてしようがなかった。巨人を四連覇した中日の活躍を見ただけに私には印象の深い試合になった。このなかからヒーローを選ぶとなると私はためらいなく中山をあげる。空谷もよかった。身体全体でピンチの苦悩を表現する空谷は力感あふれていた。しかしその空谷が一点を取られた六回の満塁を、みごとにリリーフした中山のピッチングこそヒーローたるにふさわしいものにちがいない。名古屋から後楽園へ来たのははじめてであるが、彼中山が後楽園のマウンドをふむのもたしか今年はじめてだろう。中山があのとき(六回)巨人の打力を不発に終わらせることに失敗していたらどうなったか。それを考えると私は中日ファンとして中山よくやったといいたい。伊奈以外にたよれぬという中日投手陣に空谷、中山の活躍が見られたことはうれしい限りである。ことに中山が六回の危機に老練の代打平井、樋笠を三振させたの試合のヤマは圧巻というべきであった。外角シュートがきまった瞬間の平井のあの苦しい表情、空振りした樋笠の鬼のような顔、これは巨人側には無念の表情だろうが、私には痛快なひとときであった。今夜名古屋へ帰る私によい土産が出来た。試合後の中山は「リリーフの用意をするようにいいつけられていたが酒井(捕手)が速球の切れがいいから心配ないといっていた。だからカーブに限らず直球で勝負した。なんといった感じもない。ただホッとしたという感じですね」といい、天知監督は「まだカーブの切れが悪い。満足すべき出来ではないが、彼は夏場から調子の出る投手だ」と楽観している。中山は五尺八寸、十七貫五百、昨年は20勝11敗。
連休を利用して後楽園のこの一戦を見に来たが、ヒヤヒヤさせられたうえに好天候でノドがかわいてしようがなかった。巨人を四連覇した中日の活躍を見ただけに私には印象の深い試合になった。このなかからヒーローを選ぶとなると私はためらいなく中山をあげる。空谷もよかった。身体全体でピンチの苦悩を表現する空谷は力感あふれていた。しかしその空谷が一点を取られた六回の満塁を、みごとにリリーフした中山のピッチングこそヒーローたるにふさわしいものにちがいない。名古屋から後楽園へ来たのははじめてであるが、彼中山が後楽園のマウンドをふむのもたしか今年はじめてだろう。中山があのとき(六回)巨人の打力を不発に終わらせることに失敗していたらどうなったか。それを考えると私は中日ファンとして中山よくやったといいたい。伊奈以外にたよれぬという中日投手陣に空谷、中山の活躍が見られたことはうれしい限りである。ことに中山が六回の危機に老練の代打平井、樋笠を三振させたの試合のヤマは圧巻というべきであった。外角シュートがきまった瞬間の平井のあの苦しい表情、空振りした樋笠の鬼のような顔、これは巨人側には無念の表情だろうが、私には痛快なひとときであった。今夜名古屋へ帰る私によい土産が出来た。試合後の中山は「リリーフの用意をするようにいいつけられていたが酒井(捕手)が速球の切れがいいから心配ないといっていた。だからカーブに限らず直球で勝負した。なんといった感じもない。ただホッとしたという感じですね」といい、天知監督は「まだカーブの切れが悪い。満足すべき出来ではないが、彼は夏場から調子の出る投手だ」と楽観している。中山は五尺八寸、十七貫五百、昨年は20勝11敗。