Doll of Deserting

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プラスティックベイビー(修イヅ。修誕記念フリーSS)

2005-08-14 19:05:42 | 過去作品(BLEACH)
*性表現はありませんが、修兵とイヅルが清く正しく美しくな関係だと思っていらっしゃる方はご覧にならない方がいいと思われます。


プラスティックベイビー
 鼻につくのは、彼が残した煙草の匂いだった。この世界では葉巻煙草なんて出回っていないのに、とイヅルは心底不思議に思っていたが、彼がやたら慣れた仕草でそれを吸うので、黙っていた。イヅルは追いかける相手を見つけたのに、相変わらず彼に捕らわれたままだ。
(忌々しい…。)
 彼を、市丸隊長を追いかけようと思っていた矢先、彼は、檜佐木先輩はイヅルを捕らえた。それを拒まなかった自分もひどく忌々しいのだが、憎ませてもくれない彼も相当忌々しい。離れていけないのは、自分なのだとこういう時に強く実感する。
 イヅルは修兵の部屋で、霊術院の制服に袖を通した。行為に及んだのはこれが初めてではないが、彼の下にいる自分のことを、淫猥だと思ったことは一度もない。むしろいつも人形のように強張っていて、だからといって処女のような恥じらいを感じることもない、何とも可愛げのない人間だろうと思う。
 彼は先に出て行ってしまったので、特に言い残すこともない。最も、自分が早くとも声をかけることはないのだが。それは彼が寝ているところを起こしたくない、というのはたてまえで、起きた彼が自分とどう接するのか恐ろしいからでもある。昨晩、何の反応も示さなかった自分に、どんな言葉を返してくるのかと。


「なあ吉良、檜佐木先輩って明日誕生日なんだろ?」
「…え?」
 恋次の言葉に、イヅルは瞠目した。彼とそういう話をしたことはない。仲は良かったが、なぜだかどちらも自分のことを話そうとはしなかった。互いに、干渉しない関係になってしまっていた。
「お前ら付き合ってるくせに知らねえんだな。先輩、夏季休業中だから毎年誰にも祝ってもらえねえって言ってたぜ?」
「…そうなんだ。」
 彼の家族関係についても何も知らなかったが、彼は毎年自分や恋次と同じく霊術院に残っていた。彼もおそらく、帰る場所がないのだろうと想像出来た。
「だからさ、何なら俺達で祝ってやろうかと思って。」
「ああ、そうだね。」
 どうせ自分達も残っているのだし、と言いながら、イヅルは今夜にでも聞いてみようと思っていた。自分に何かして欲しいことはあるか、何か欲しいものはないか、自分は一応ではあるが恋人なのだから、例え知らされていなかったとしても何かしてやりたかった。
「阿散井君、僕、今日も帰らないと思うけど、いい?」
「おー、ついでに先輩に何が欲しいか聞いといてくれよ。点呼はいつも通りごまかしといてやるから。」
「分かった。」
 もう既に何度も繰り返した、慣れたやり取りだ。恋次の返答に慣れきったものを感じる度、自分の中の何かが浸食されていくような感覚を覚える。むしろ行為の最中よりも、やたらと淫猥な雰囲気を漂わせているかのような錯覚に襲われるのだ。


「先輩、明日お誕生日だそうですね。」
 敷布の上で唐突に放たれた言葉に、修兵が目を丸くする。イヅルは何を思うでもなく、そのまま修兵の背中に腕を回した。
「阿散井から聞いたのか?」
「ええ、まあ。欲しいものとかありますか?」
 愛想も何もない取り繕ったような笑みを浮かべると、修兵は少しむっとしたような顔をして仰向けに寝転がる。暫くそのまま考え込んでいるような素振りを見せた後、面倒臭そうに言葉を吐き出した。
「おま「“お前”なんて言ったら殺しますよ。」」
 最後まで言い終わる前に、イヅルの声が遮る。相変わらず容赦のない奴だと思いながら、修兵はまた眉間の皴を深くした。イヅルは何でこんな奴抱いて楽しいんだろう、と思いながら、しんとしてしまった部屋を焦点を合わせずに見つめていた。
「…お前誕生日の日部屋来いよ。」
「阿散井君も一緒にお祝いするって言ってましたよ。」
「じゃあその次の日でいいから。」
「…はい。」
 釈然としない表情で、仕方なしに、とでもいうようにイヅルが頷く。なぜだか修兵は、その不機嫌な表情がたまらなく愛しかった。笑った顔よりも、無理をせずに遠慮なく歪めた顔の方が可愛らしいと思っていた。
「先輩は、何で僕と寝て楽しいんですか?」
「お前全然反応ないから。」
「…つまらないことなんじゃないんですか?それって。」
「俺はサドだから、逆に泣かしてやろうと思って躍起になるんだよ。だから厭きねえの。」
「悪趣味な人ですね、どこまでも。」
「何とでも言え。」
 修兵は懐から葉巻を取り出すと、さっと火を付け大きく吸った。しかしどこか品のあるその様子に、イヅルは本当に何でこの人は自分のことが好きなんだろうと思う。暫くイヅルが眺めていると、修兵は突然「あ」と声を上げ、布団から立ち上がって私物を漁り始めた。イヅルはそれに驚き、あっけに取られていると、修兵が「これだ、これ」と何かを差し出した。
「…え?」
「キレーだろ?死神になった俺の先輩に頼んで買ってきてもらったんだ。」
 美しいフォルムの、指輪が一つあった。イヅルはそれが何なのかよく分からなかったが、形状からして指にはめるものであろうことは理解出来た。修兵が言うには、恋人への贈り物としてはとても一般的な
ものらしい。余計な装飾は一切ついていなかったが、銀色の光沢を放つそれは、とても神聖な空気を孕んでいた。
「…あの、普通は先輩がもらう方じゃないんですか?」
「むしろお前がそれ受け取ってくれるっていうのが俺への贈り物だと思うけどな。」
「何でですか?」
「お前がいつもそれ付けててくれればな、所謂虫除けになるんだよ。」
「…はあ。」
「ただし、受け取るってことは俺のもんになるってことだけどな。」
 その言葉に、イヅルはどきりとした。修兵は知っているのだ。自分が市丸隊長に心酔しているということを。彼は、出会った頃は副隊長だったが、イヅルが二回生になる頃には既に隊長に就任していた。遥かな強さと凄惨さを含んだ笑みは、どうしてもイヅルを魅了してならなかった。そのことを、修兵は不安に思っているのだと簡単に予想出来た。
「…まだ、信用出来ませんか?」
 自分に彼を追わせてくれなかった修兵のことを、忌々しく感じたことは何度もある。しかし、結局受け入れたのは自分なのだ。気紛れに誰かと寝床を共にするなどということは、自分には出来ない。そして彼も、それをよく分かっているはずなのに。
「まあな。信用させたいなら、受け取れよ、素直に。」
「………。」
 無言でふっと微笑んで、イヅルはそれを指にはめてみる。適当にはめているのにも関わらずそれが薬指であったことに、修兵も思わず唇の端を上げた。イヅルは知らず、修兵は知っている、その行動が表す意味を考え、修兵は更に笑みを深くした。

 
 エ ロ イ……!!(笑)すみません何かこういうの書いたの初めてなのでテンションがちょっとアハハ!(笑ってごまかすな) 
 修兵って現世のことに詳しそうだなーっと思いまして。ていうか修兵って夏休み中だから可哀想ですよね。恋次はかなり惜しい感じですが。(笑)
 企画カテゴリーの小説は全てフリーです。そしてこれも修兵お誕生日記念なのでフリーです。今日の夕方突然他所様の修イヅ読んでていきなり「今日じゃん!!」と気が付きまして(バチ当たり)急いで書き上げました。(笑)

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