ティーレマン/ウィーンフィル「ワーグナー トリスタンとイゾルデ」


 7月25日に開幕したバイロイト音楽祭で日本人として初めて指揮台に立った大植英次氏。初日の「トリスタンとイゾルデ」で大成功だったという第一報、本当にうれしかったです。「終演後のカーテンコールで、思わず舞台にひざまずいてキスした大植さんは、「自分でも信じられないほど柔らかい音色が出せた。最後はうっとりして別世界にいるようだった」と、興奮気味に話した。」と報じられているので快演だったのでしょう。今後の詳細のレポートが楽しみです。

 今年のバイロイトではタンホイザーを振っているドイツ期待の星、クリスティアン・ティーレマン。私がご推薦するまでもないもはや大物ですがこちらも凄いです。
 デビュー盤からしてドイツ・グラモフォン、オケこそフィルハーモア管弦楽団でしたがいきなりベートーヴェンの第5番、第7番。これぞドイツ音楽だぞっというゆったりしたテンポ、濃い表情づけの巨匠風の音楽。さっぱりした無表情の音楽が多い中で久しぶりにキターーという感想を持ちました。
 その後いろんな演奏を聴き、ますます期待は膨らみます。現在、ラトルやゲルギエフよりも新譜が楽しみな指揮者です。

 ティーレマンのワーグナーでは海賊盤ですが、2001年のバイロイト音楽祭でのパルジファルを聴きました。ここでも堂々とした立派な音楽を響かせていますが、そもそもパルジファルは大物がバイロイト音楽祭で演奏したディスクが沢山残っているのでそれと比較して抜きん出ている水準とまでは思いませんでした。

 しかし、この2003年のウィーン国立歌劇場でのライブは素晴らしい演奏です。歌手陣は過去と比較すると並びこそすれ上回ることは少なく新盤には不利があります。それでもこの演奏は過去の名盤に匹敵する素晴らしいものだと思います。粒が揃った透明感のある弱音、厚みがあってうねる弦、スケールが大きくて音楽を聴く喜びを感じます。指揮者との息が合った時のウィーンフィルはベルリンフィルを超える凄まじい音を出します。
 先日、レヴァインのDVDを取り上げた際、トリスタンは映像がないとと書きましたが、これは音だけでも十分満足できます(このブログには矛盾しているところが沢山ありますがお許し下さい)。

 ネットで検索するとこのディスクは結構、賛否両論なので驚きました。名演というコメントがある一方で全然ダメというコメントも多いです。私は楽譜を読めない素人リスナー、感覚で聴くので、この演奏が全くダメだと聴き取れる耳を持っていません(これは皮肉ではありません)。私には美しい極上の名演にしか聞こえませんがリスナーによって評価はまちまちでいいのだと思います。芸術をどう感じるかは知識の多少はあっても最終的には主観です。正解なんてありません。

 暑い中で何か納涼のディスクを一枚聴きたいなと思ったときに、シベリウスではなく、このティーレマンのトリスタンを取り出しました。清涼感溢れる耳に暑苦しくない音楽、今の私にはこのディスクです。


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