ケイト・クリッペンスティーン「TOKYO、お店探し名人になれる本」

          

 ずいぶん昔、「月刊プレイボーイ」に連載された「東京シティコンフィデンシャル」というお店紹介読み物をまとめた本です。そういえばと無性に再読したくなり、アマゾンで注文しました。新刊はもうなく中古本、250円と安かったです。

 毎週、毎月次回が待ち遠しい新聞や雑誌の連載は終了後、単行本として出版されると改めて手にしてじっくりと読み直す楽しみがあります。一方で、連載時に非常に印象に残ったのに出版時にはカットされてしまう記事があるとアレっ!?と驚いてしまいます。

 私の記憶に残っているのは、沢木耕太郎の対談シリーズ(これも月刊プレイボーイの連載だったか?)で吉永小百合との対話が出版時にカットされていました。おそらく、沢木が思い切って質問してみたどうして子供を作らなかったのかという質問への吉永小百合の回答が単行本化にあたりNGとなったんじゃないかと想像しました。

 もう一つがこの「東京シティコンフィデンシャル」です(出版にあたっての書名はちょっと・・・)。パイの美味しい店紹介の号で新宿伊勢丹2階に入っていた「バビントン・ティー・ルーム」を知りました。本店はローマのスペイン階段の脇にある喫茶店。現地では有名な1893年創業の老舗だそうです。
 紅茶の美味しさもさることながら、アメリカ人の著者が世界一と絶賛したレモンパイがありました。私も早速新宿伊勢丹に出向いて購入し、そのシンプルで甘ずっぱい味を体験しました。確かに美味しかったです。一人だったので店でゆっくりしたことはありませんでしたがレモンパイとアールグレイの紅茶をアパートの部屋で何度かいただいたものです。

 私の東京生活は中学2年から京王線の芦花公園で始まったのですが、京王線居住者には晴れの舞台としての新宿伊勢丹は絶対の存在でした。母親も男物の服は絶対に伊勢丹だと言っていたのを覚えています。最近こそほとんど行っていませんし、バブルの頃に5万円でスーツを求めようものならそんな安物は別のところで探してくださいというお高い店員ばかりの三越と合併して今はどうなっているのか分かりません。

 脱線しましたが、どうしてあの記事がカットされたのか。一つは著者がバビントンティールームにシャンパンか何かをこっそり持ち込んで友人とワイワイやったという記述。もう一店は、アンナミラーズの紹介でした。胸が強調されている特徴ある制服がセクシーである一方で、禁欲的なアーミッシュの伝統があるペンシルベニア・ダッチ・スタイルの非常に美味しいパイを提供しているというギャップ。この制服を異常に気に入った著者の友人がこっそり盗もうとしたという記述。どちらか、あるいはどちらにもクレームがついたのか、カットされてしまいました。

 今回、この本をアマゾンで注文したのは、バビントン・ティー・ルームの記事を再読したかったからですが、カットされていることを思い出しました。

 それでも、同じ伊勢丹の地下に入っていたイタリア惣菜の「イルサルマイヨ」(この店も大好きで通いましたがその後閉店)や「パークカフェ」など新宿の店が多く紹介されていて懐かしいです。最後に新宿に行ったのがいつか思い出せないくらいですが、昔の新宿にはときめいたなあと懐かしくなりました。



 ローマにあるバビントン・ティー・ルームのホームページを見ていたら、懐かしいレモンパイの写真がありました。あぁこれこれ、また食べたい。

          




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