築地には魚市場があるし、昔からの高級料亭もある。最近は事務所ビルが増えたので、かつてに比べると酒場の数はずいぶん多くなった。しかしこれまでの体験では2000-3000円で飲める店にはほとんど遭遇しない。土地代が高いわりに客が少なく、一軒め酒場や魚民のようなチェーン店があまりないからかもしれない。平均客単価5000円くらいの地域ではないかと推測される。そんな価格では、いくら料理がうまくてもわたくしにはかなり厳しい。
そういう環境で、築地はしご酒は500円のメニューが何品か用意されているので、料理はつまみ程度、酒はほんの一杯だけではあるが、1000円から1500円程度で店に入ることができる。店に入ればすこしは雰囲気がわかるので、店探しという点で貴重なチャンスである。
11月18日に開催された築地はしご酒は今年が第4回だが、わたくしが参加するのは3回目。今回は天候が悪く小雨のはしご酒だった。また合唱の練習日だったので、開始時間から1時間遅れの5時前に受付へ到着した。
1 築地 多け乃
現地に向かうと細い路地に10人以上の列ができていた。1人客はあまりおらず2-5人グループが多い。近くの人気店、天ぷらの黒川と間違えて並ぶ人もいた。
思ったほどの時間はかからず店内へ。この店にはたまたま3週間ほど前に初めて訪れた。料理の価格表示がない(時価)ことで有名な店でおそるおそる行ってみたが、たしかに普通に飲み食いすれば5000円近くになりそう(わたくしは3000円以内で収まった)だが、内容は良心的だった。3-4人の家族でやっている店だが、この日は客が多いため、元気のよい大将がややいらだっているようだった。前回より、女性スタッフの人数が増えていた。
1階はカウンターのほかテーブルが3つほどだが、2階があり食べログによると46席なので結構大きい。1階のコーナーにはお酉さまの大きな飾りがあり、景気がよさそう。毎年11月に買い替えているようだ。
前回はすずきの刺身を食べたが、この日は500円の天ぷらを注文。アジとアナゴかと思ったが、聞いてみると姫小鯛と銀宝。岩塩で食す。見栄えはもうひとつだが、素材がいいのでやはりうまかった。プロの店だ。燗酒の銘柄は聞き損ねたが前回の徳利に「富翁」とあったので、そうかもしれない。
2 魚河岸三代目 千秋
まず店の場所がわからなかった。地図にはKYビル1階と書いてあるがビル内1階を1周しても見当たらず入口の店の人に聞くと地下1階だという。しかし地下にも見当たらない。もう一度聞くと、いったん外に出てビルの側面にあるという。なんとかたどりついたが先客がやはり10人くらい並んでいた。15分ほど待って入店できた。もっともはしご酒の場合、少し酔いがさめるのでかえってよいともいえる。
店内はL字のカウンターのみ。食べログでは11席、この日は椅子がなく立飲みだったので、もう少し多かったかもしれないが小さい店だった。食べたのは自家製さつま揚げと芋焼酎のお湯割り。銘柄は鹿児島の銀滴、なかなかうまい焼酎だった。しかしグループ客が多くて落ち着かない。隣は、山登りから帰って来たばかりとかで、男女4-5人の元気いっぱいのグループだった。
3 鳥藤
ちょっとおなかに何か入れたいと、築地魚河岸3階のフードコートにやってきた。大学の生協食堂のような感じなので、店の情緒はまったくない。
とりそば希望で訪れたが、すでに売り切れでとり鍋になった。鍋というよりはスープだった。それでも鶏肉が2切れと生姜の効いたつくねが3-4個入っていた。親子丼やとりめしで有名な店だが、鶏の専門店だけあってスープがうまく体が暖まった。
4 スタンドBar 上松
つぎに初参加の魚沼を目指した。ここは並ばず入れたが、「すでに料理は終了、飲み物だけ」というのでやめた。そしてスタンドBar 上松へ。
この店は昨年1ドリンクサービス(翌日以降1か月以内にはしご酒イベント参加店を訪れれば1ドリンクのみ無料というサービス)で訪問した店だ。比較的若い方がやっていてまだ開店1年あまり。そのときはアジの干物がおいしかった。この日は珍味2品、一見きゅうりのようにみえたが千葉のつぶ貝と緑のもずくの類、もう一品はトマトかと思ったらサーモンといくらの粕漬けだった。たしかに珍味だった。酒は秋田の春霞(赤ラベル)の常温だった。この店は品ぞろえがよく、味がよいことを今回も実感した。
今回も4軒回れた。スタートが出遅れるといろいろな不利益があることを実体験し、よくわかった。
さて、築地の居酒屋について紹介したいが、それほどよく知っているわけではない。いままで行った20軒弱(それも1回しか行っていない店が大半)のなかから、もっともよかった店を2店紹介する。
●魚竹
かつて、築地のサラリーマンだった知人に教えられた店。築地から汐留に引っ越した電通社員が「どーしても連れて行きたかった」という噂のある店で、予約客でいっぱいだが1人なら入れるかも、といわれた。1回目は金曜夕方行ったが、やはり満席だった。2度目は木曜にいくとなんとかカウンター奥の席に座れた。トイレにいちばん近い席で、見上げるとたまたまマスターの調理師免状が掲示されていた。美濃部亮吉都知事のその免状の発行年月は1976年9月、40年選手ということだ。席はカウンターのみで11席。
その日食べたのは、「冬の味覚 魚竹特製鮪ねぎま鍋」「自家製するめイカ肝みそ」「ぬか漬盛り合わせ」など。酒の燗のつけ具合もよかった。レンジで温めているのが見えたので、チロリに移し替えているのがよいのか、保存状態がよいのか、あるいはほかの理由なのかはわからない。勘定は4500円ほどで、満足感と釣り合っていた。
鮪ねぎま鍋
●はなふさ
ここは太田和彦さんが味酒覧第三版で推薦していた店だ。行ったのは2年ほど前だが、残念ながら記録をつけていない。ネット検索すると、ヤフー・ブログ「日本の酒場をゆく」にこんな紹介があった。
店主は、生まれも育ちも築地という生粋の地元っ子だ。
「魚河岸は、小さい頃から自分にとっては遊び場。学生の時はアルバイトもしていましたし、言ってみれば庭のようなものですね」。
毎朝築地へ仕入れに繰り出すのは店主の日課となっている。
そこで発揮されるのは、小さい頃から培われた類い希な目利きだ。
厳選された魚は、刺身は当然、煮付け、焼き、揚げなどと豊富な調理法で味わえる。
「手を加えすぎて、素材の味が崩れるのは嫌い」と、シンプルなものが多いが、それは裏を返せば、素材自体がしっかりしている証拠でもある。()
こういうウワサに違わぬいい店だったことはよく覚えている。
調理は2人でやっていて、ほかにお運びの女性がいたかどうか。客席はL字のカウンターに10人程度座れる。奥に小上がりがあり6人入れるらしい。店が小さいこともあり、やはりこの店も予約しないとなかなか入れない。
勘定はここも5000円程度だった。
左隣は玉子焼き屋さん
そういう環境で、築地はしご酒は500円のメニューが何品か用意されているので、料理はつまみ程度、酒はほんの一杯だけではあるが、1000円から1500円程度で店に入ることができる。店に入ればすこしは雰囲気がわかるので、店探しという点で貴重なチャンスである。
11月18日に開催された築地はしご酒は今年が第4回だが、わたくしが参加するのは3回目。今回は天候が悪く小雨のはしご酒だった。また合唱の練習日だったので、開始時間から1時間遅れの5時前に受付へ到着した。
1 築地 多け乃
現地に向かうと細い路地に10人以上の列ができていた。1人客はあまりおらず2-5人グループが多い。近くの人気店、天ぷらの黒川と間違えて並ぶ人もいた。
思ったほどの時間はかからず店内へ。この店にはたまたま3週間ほど前に初めて訪れた。料理の価格表示がない(時価)ことで有名な店でおそるおそる行ってみたが、たしかに普通に飲み食いすれば5000円近くになりそう(わたくしは3000円以内で収まった)だが、内容は良心的だった。3-4人の家族でやっている店だが、この日は客が多いため、元気のよい大将がややいらだっているようだった。前回より、女性スタッフの人数が増えていた。
1階はカウンターのほかテーブルが3つほどだが、2階があり食べログによると46席なので結構大きい。1階のコーナーにはお酉さまの大きな飾りがあり、景気がよさそう。毎年11月に買い替えているようだ。
前回はすずきの刺身を食べたが、この日は500円の天ぷらを注文。アジとアナゴかと思ったが、聞いてみると姫小鯛と銀宝。岩塩で食す。見栄えはもうひとつだが、素材がいいのでやはりうまかった。プロの店だ。燗酒の銘柄は聞き損ねたが前回の徳利に「富翁」とあったので、そうかもしれない。
2 魚河岸三代目 千秋
まず店の場所がわからなかった。地図にはKYビル1階と書いてあるがビル内1階を1周しても見当たらず入口の店の人に聞くと地下1階だという。しかし地下にも見当たらない。もう一度聞くと、いったん外に出てビルの側面にあるという。なんとかたどりついたが先客がやはり10人くらい並んでいた。15分ほど待って入店できた。もっともはしご酒の場合、少し酔いがさめるのでかえってよいともいえる。
店内はL字のカウンターのみ。食べログでは11席、この日は椅子がなく立飲みだったので、もう少し多かったかもしれないが小さい店だった。食べたのは自家製さつま揚げと芋焼酎のお湯割り。銘柄は鹿児島の銀滴、なかなかうまい焼酎だった。しかしグループ客が多くて落ち着かない。隣は、山登りから帰って来たばかりとかで、男女4-5人の元気いっぱいのグループだった。
3 鳥藤
ちょっとおなかに何か入れたいと、築地魚河岸3階のフードコートにやってきた。大学の生協食堂のような感じなので、店の情緒はまったくない。
とりそば希望で訪れたが、すでに売り切れでとり鍋になった。鍋というよりはスープだった。それでも鶏肉が2切れと生姜の効いたつくねが3-4個入っていた。親子丼やとりめしで有名な店だが、鶏の専門店だけあってスープがうまく体が暖まった。
4 スタンドBar 上松
つぎに初参加の魚沼を目指した。ここは並ばず入れたが、「すでに料理は終了、飲み物だけ」というのでやめた。そしてスタンドBar 上松へ。
この店は昨年1ドリンクサービス(翌日以降1か月以内にはしご酒イベント参加店を訪れれば1ドリンクのみ無料というサービス)で訪問した店だ。比較的若い方がやっていてまだ開店1年あまり。そのときはアジの干物がおいしかった。この日は珍味2品、一見きゅうりのようにみえたが千葉のつぶ貝と緑のもずくの類、もう一品はトマトかと思ったらサーモンといくらの粕漬けだった。たしかに珍味だった。酒は秋田の春霞(赤ラベル)の常温だった。この店は品ぞろえがよく、味がよいことを今回も実感した。
今回も4軒回れた。スタートが出遅れるといろいろな不利益があることを実体験し、よくわかった。
さて、築地の居酒屋について紹介したいが、それほどよく知っているわけではない。いままで行った20軒弱(それも1回しか行っていない店が大半)のなかから、もっともよかった店を2店紹介する。
●魚竹
かつて、築地のサラリーマンだった知人に教えられた店。築地から汐留に引っ越した電通社員が「どーしても連れて行きたかった」という噂のある店で、予約客でいっぱいだが1人なら入れるかも、といわれた。1回目は金曜夕方行ったが、やはり満席だった。2度目は木曜にいくとなんとかカウンター奥の席に座れた。トイレにいちばん近い席で、見上げるとたまたまマスターの調理師免状が掲示されていた。美濃部亮吉都知事のその免状の発行年月は1976年9月、40年選手ということだ。席はカウンターのみで11席。
その日食べたのは、「冬の味覚 魚竹特製鮪ねぎま鍋」「自家製するめイカ肝みそ」「ぬか漬盛り合わせ」など。酒の燗のつけ具合もよかった。レンジで温めているのが見えたので、チロリに移し替えているのがよいのか、保存状態がよいのか、あるいはほかの理由なのかはわからない。勘定は4500円ほどで、満足感と釣り合っていた。
鮪ねぎま鍋
●はなふさ
ここは太田和彦さんが味酒覧第三版で推薦していた店だ。行ったのは2年ほど前だが、残念ながら記録をつけていない。ネット検索すると、ヤフー・ブログ「日本の酒場をゆく」にこんな紹介があった。
店主は、生まれも育ちも築地という生粋の地元っ子だ。
「魚河岸は、小さい頃から自分にとっては遊び場。学生の時はアルバイトもしていましたし、言ってみれば庭のようなものですね」。
毎朝築地へ仕入れに繰り出すのは店主の日課となっている。
そこで発揮されるのは、小さい頃から培われた類い希な目利きだ。
厳選された魚は、刺身は当然、煮付け、焼き、揚げなどと豊富な調理法で味わえる。
「手を加えすぎて、素材の味が崩れるのは嫌い」と、シンプルなものが多いが、それは裏を返せば、素材自体がしっかりしている証拠でもある。()
こういうウワサに違わぬいい店だったことはよく覚えている。
調理は2人でやっていて、ほかにお運びの女性がいたかどうか。客席はL字のカウンターに10人程度座れる。奥に小上がりがあり6人入れるらしい。店が小さいこともあり、やはりこの店も予約しないとなかなか入れない。
勘定はここも5000円程度だった。
左隣は玉子焼き屋さん