できるだけ歩く鳥

サラリーマンエンジニアによる日常メモ。たまにMac偏り気味。

報道と「数字」の魔力

2006-11-15 02:09:03 | diary
いじめに関するこんな記事がありました。

いじめ加害者・被害者、容易に変化 京大助教授が調査(朝日)
いじめ、テレビやゲーム漬けが影響か 京大など調査(朝日(関西))
いじめ経験「加害も被害も」4割超…京大の高校生調査(読売)

全部だいたい同じ内容です。
こういう調査結果とかって、簡単にまとめだけ言ってもらうのは手っ取り早くてラクですが、その結論に至った元となる細かい数字もわからないと、信用していいかどうかわからないときもあります。
※調査結果に難癖付けてるわけではなく、それを報道する側の姿勢を自分はどう見るかっつー話です

上記記事(朝日)の場合は最後の方にある「テレビ視聴時間、ゲーム時間、携帯メール交換頻度、といじめ経験の有無の傾向」のところがとくに、データがないとどう判断していいかわかりません。

例えば高校男子のテレビ視聴時間といじめをした経験の有無の部分についてで考えてみます。
・1日のテレビ視聴1時間以内でいじめをした経験あり
・1日のテレビ視聴4時間以上でいじめをした経験あり
だと、4時間以上の場合が1時間以内に比べ、いじめをした経験ありが1.2倍とあります。

アンケート調査対象が男子は3501人とありますが、そのうちの何人が上記に当てはまっているのか、記事だけでは不明です。
誰でも気付くと思いますが、1日のテレビ視聴時間が1~4時間の子は記事にはありませんし、また、各視聴時間のいじめをした経験「なし」の数もわかりません。

よって、こういうことも考えられるわけです。
・1日のテレビ視聴1時間以内でいじめをした経験あり=5人
・1日のテレビ視聴4時間以上でいじめをした経験あり=6人
・上記以外=3490人
確かに1.2倍。でももしこんな結果から1.2倍ってのを導き出してたとしたら誰でもそりゃ言い過ぎだろうと思うでしょうけど、逆に具体的元データがないと、なんとなく信用してしまいそうです。

次に、テレビ視聴時間といじめをした経験の差が、上に書いたような極端な誇張ではなく、それなりに信用できる数字だったとします。その事実から、たぶんテレビの見過ぎは子供に悪影響とかいう話になりそうですが、そこは実はこの結果だけでは何もわかりません。単に1.2倍という数字があるだけです。
どんな番組を見ているのかがわからないとどうとも言えません。本当にテレビを見ているのか、実は単にテレビ付けっぱなしかもしれません。家族や友人とのコミュニケーション不足が結果的にテレビ視聴時間増大に繋がっているかもしれません。逆にテレビに夢中になりすぎて、人とのコミュニケーション不足に陥っているかもしれません。かといってコミュニケーション不足といじめとの関連は、今回の調査結果だけではきっとわかりません。


こういう調査結果は、さらに具体的な調査の次の一手をどう進めるかの目安、きっかけにすぎないわけですが、それをなんらかの真実であるかのように錯覚してしまうのは危険です。そしてもっと危ないのが「錯覚させる」やつがいるかもしれないことです。例えば今回のいじめ経験傾向の調査結果記事に「ゲームやテレビが悪影響」なんて断定的な副題付いてたりすると、先入観もって記事読むわけで「テレビを見過ぎる子はいじめをする子になりやすい!」なんて思ってしまう人も出てくるかもしれません。


でも、それはまあ待て、と。
僕は別にテレビが悪くないとも、逆に良いとも、そういう主張したいわけではありませんよ。さらに深い調査をすれば「(どんな番組だろうと)テレビを見過ぎる子はいじめをする子になりやすい!」という傾向が出るかもしれませんし、「ある種のテレビ番組を見過ぎる子は~」という話になるかもしれませんし、「コミュニケーション不足が~」という話に至るかもしれません。


メディアを疑えというのではなく、まずは自分自身の頭をちょっと疑ってみる、ってことです。
繰り返しますが要するに、(自分自身に対して)まあ待て、と。
一種の脳トレだと思って、数字が出てくる報道内容についてはちょっと考えてみませんか、っつーまとめで終わりにしてみる。